表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院2年目
74/1290

074 星暦550年 桃の月 6日 横道へ・・・

人生は長い。たまには予定とは違う横道へちょっと逸れて趣味に走るのも悪くは無い。


◆◆◆



最初の頃は人によってはあまり実用性のない魔具を作り上げてきた俺達だが、授業を1年近く受けてきた今となっては基本的にそこそこのレベルのモノが出来あがるようになった。


だが、出来の良さにはやはり違いが出る。

ある意味、魔力とは関係ないセンスだ。


構造魔術のように魔術師が魔力を注ぐ術は魔術師の魔力の大きさがモノを言うが、魔石を動力源にする魔具は魔力ではなく工夫する才能が重要だ。


保存庫フリッジ作りではケーキに対する執着の強いシャルロと、幼いころからの憧れが強かった俺の作品が特に良かったと思う。

保存能力の完璧さではシャルロのが群を抜き、効率性では俺のが良かった。

ま、俺の目で見た評価だけどね。

ニルキーニ教師は各作品のいいところと悪いところを指摘していたが特にどれがいいとは言わなかった。


で。

今日は凍結庫フリザー火器コンロだ。


凍結庫フリザーは中に入れたモノから熱を取り出す魔具だ。その場合、取り出した熱をどうするかが問題になる。

さむい地域ではそれをそのまま家の暖房に使うところもあるが、大抵の場合、凍結庫フリザーがもっとも必要とされるのは暖房なんて欲しくない暑い季節だ。

そこで考え出されたのが、凍結庫フリザーの熱を火器コンロに使うことだ」


効率的かもしれないが・・・凍結庫フリザーもしくは火器コンロの使用頻度が想定よりも少なかったら問題が起きそうだな。


「2つの魔具をリンクさせて使うことの問題としてどんなことが考える?」

ニルキーニがクラスに尋ねた。


「片方の魔具の使用量が著しく大きいか小さい時にエネルギーの均衡が崩れる」

「リンクさせて熱を移す部分が壊れたら両方が故障するなり下手をすれば爆発する可能性がある」

「2つの魔具の距離が限られるので台所のデザインも制限される」


・・・最後のはどうでもいいことじゃないか?

まあ、いいんだけどさ。


「ま、キッチンのレイアウトはどうしようもないが、最初に上げられた2点に関しては問題が起きないように幾つかの安全策を講じる必要がある。ある意味、それが今回の授業で学ぶ一番重要なことだな」


なるほど。今までではいかに欲しい機能を得る為に魔具を作るかを教えられてきたが、現実的には『欲しい機能』とは別に、『問題が起きないように加える制御』も考慮して魔具を作る必要がある。

考えてみたら、もっと早い段階でこれは教えるべきだったんじゃ無いのかね?

基本を教えてあとは自分で研究して技術を磨けと言うスタンスは、研究で機能を伸ばした際の危険性を教えておかなければ危険だろうに。


・・・ま、誰も大きなアクシデントを起こしていないからそれなりに学院側も目を光らせていたんだろうけど。


「これが凍結庫フリザーの術回路だ。この部分で熱を抜き取り、ここで別の魔石・・・この場合は火器コンロのだな、に熱を集めるようになっている。

そしてここに魔石に熱を蓄積できる限界に達したら熱を抜き取るのを止める機能がついている。

凍結庫フリザーの術回路を改善する際は必ずこの最後の機能を含ませること。

魔術師が術回路の不備で火事を起こした場合は損害賠償の責任を負うことになるからな!」


おっと。

それは怖いな。

よくよく注意しなくては。


「では、今回は2つの魔具を作らなければならんから、グループで作業してくれ。明日までだ!」


うう~む。

火器コンロに対する思い入れは余りないからなぁ。

あんまり見たことも無いから工夫もしにくい。


凍結庫フリザーで抜き取った熱を熱以外の形のエネルギーとして使うのって難しいのかね?

どうせなら火器コンロに使うよりも、保存庫フリッジの魔石のエネルギー補充に使えたら良いのに」

思わずぼやきが零れる。


「現時点で開発されている術回路では熱から発生したエネルギーは熱を発するための魔石に蓄積させるのは比較的効率的に出来るが、停止魔術を使うための魔石に蓄積させようとするとかなり効率が下がって熱が漏れるらしい。台所でそれでは色々不便だから火器コンロとリンクさせる方法が主流になった訳だ」

質問をしたつもりではなかったのだが、アレクが答える。


「そっかぁ。

じゃあさぁ、僕たちで停止魔術用の魔石に効率的に蓄積させる術回路を開発してみない?」

シャルロが提案した。

俺の提案だったら商業化かねへの目的が一番大きいが、こいつの場合はいかにお菓子を美味しく保存するかを重視しているんだろうな。冷やしておくと美味しいお菓子も多いから、保存庫フリッジ凍結庫フリザーをリンクさせ、凍結庫フリザーの冷気を少しほど保存庫フリッジに流し込むようにすれば万々歳だ。


「熱変換の効率性を上げることが出来れば、かなり有用なものが出来るだろうな。少し研究してみる価値はある」

意外なことにアレクも合意した。


そんじゃあ、これが終わったら頑張ってみるか。俺もどうせなら保存しておく飲み物を少し冷やしておく方が美味しく飲めるし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ