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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後5年目
713/1297

713 星暦556年 黄の月 9日 もうそろそろ涼しい

海底神殿(『沈没船』ならぬ『沈没神殿』よりも『海底神殿』の方が響きがいいとセビウス氏がオークション組織の人間と決めたらしい)の遺物はセビウス氏や歴史学会からの学者およびオークション組織の人間に任せて、俺たちは久しぶりに家でゆっくりしていた。


「なんかこう、ノンビリ気分転換する筈だったのに想定以上に肉体労働が多かった気がするね」

ふうっと大きな息を吐きだしてお茶を手に取ったシャルロが言った。


「確かに。

今までは沈没船だったから座って船を動かしたり、ちょっと船の中を歩き回って中を探検したり程度だったからなぁ。

今回みたいに荷物運びで大変な思いをするのは想定外だった」

沈没船だったら船ごと動かせば良いし、セビウス氏が王都についてからの人夫も手配してくれるから、それ程重労働にならないんだよな。


「まあ、その代わり今までになく状態が良い遺物が出て来たから、普通の沈没船よりも高く売れそうだという話だよ」

セビウス氏からの差し入れだとかいう果物を剥いて切った物をお皿に載せて持ってきたアレクが報告する。


ほう。

やはりそれなりに流行った(?)神殿の神具や宝物だったから元の価格も高かったし、状態も良いから(真珠以外だが)オークションでも良い値がつきそうなのかな?


何と言っても貴金属は年月が経ってもそれ程劣化しないし、神殿長が神殿の資金をガンガン使って造らせたと思わせる精巧な細工物も多かったからな。


あれで逃げた神殿長が選りすぐりのを持ちだした後だと考えると、500年前は凄く豪華な神殿だったんだろう。


まあ、そんな贅沢が出来るぐらい金を信者から毟り取っていたから神に見放されたんだろうけど。


「へぇぇ。

ある意味、僕たちって魔具の開発よりも海底探索をしている方が儲かりそうだね。

あんまりやってると飽きそうだし、いつも海底を彷徨っているのって健康的そうじゃないけど」

シャルロがくすりと笑いながら言った。


「人生、それなりにやりがいが無いとな」

金さえあれば良いんだったらシャルロは蒼流に頼めば幾らでも沈没船を見つけられるだろうし、俺だってそれなりに足のつかない場所から盗みまくるのは可能だ。


アレクだってもっとえげつなくシェフィート商会と協力して儲ける方法はあるだろう。


だけど、やっぱりそれだけじゃあねぇ。

金だけを目的に生きても面白くない。


「それより次の開発なんだけど、こう・・・余剰魔力を吸わせて暖かくなる寝具なんてどうかな?」

王都はファーグより北寄りなので、そろそろ夜になるとちょっと涼しいのだ。

昨日はまだ疲れが残っていたので魔術学院の温泉にも行かず、さらっとシャワーで終わらせたせいでベッドに入った時に寒い感じがしたんだよなぁ。


「余剰魔力で温める寝具?

毛布で良くない?」

シャルロが軽く首を傾げて聞き返した。


「魔石の充填に余剰魔力を使うのも良いんだけどさ、それ程魔石のやりくりに苦労しないんだったら魔力の一部をベッドを温めるのに使っても良いと思わないか?

最初にぐっと魔力を込めればベッドが一気に温まるから、折角風呂で温めた体が冷たいシーツで冷えることもないし、寒くなってきてがっつり多めに魔力を使っても寝ている間に回復するし」

羽毛布団を使えばそれなりに暖かくなるが、あれは流石にまだ早いし、相当寒くなるまではベッドに入って直ぐは冷たいのに暫くしたら汗ばんでくる。

毛布は・・・微妙に重いんだよなぁ。

かと言ってタオルケットだけでは寒い。

タオルケットとシーツの間にもう一枚発熱の魔術回路を編み込んだ布を挟んで、それを余剰魔力で動かしたら良い感じに気持ちよく眠れるんじゃないだろうか。


想定以上に魔力が必要だったら魔石を使っても良いし。


「ふむ。

ひざ掛けサイズにして余剰魔力で温める様にするのも良いかも知れないな。

母が時折机で仕事をする際に足が冷えると言っていたが、暖房用魔具を使うよりも余剰魔力で勝手に温まるひざ掛けっぽい物があった方が手軽で良いかも知れない」

アレクが俺の提案に頷いた。


「発熱の魔術回路だったらかなり魔力効率がいいから、それなりに手軽に体を温められるかもね。

熱くなり過ぎないようにどうやって制御するかが問題だけど」

果物を一切れ手に取りながらシャルロが付け足す。


「確かに、温度感知の魔術回路まで組み込んだら必要な魔力量がぐっと上がるし、何よりも製作が面倒になるよな。

汗をかいてきたら発熱を止めるとか?」

汗をどうやって感知するかが問題な気もするが。


流石に濡れたら止まるなんていう仕組みは大雑把すぎるだろう。


「東大陸で買った湿度管理の魔具が使えるかもだけど・・・雨の日だって寒いことはあるから、湿度で管理っていうのはダメな気がするなぁ」

シャルロが果物の皿へ更に手を伸ばしながら言った。


「取り敢えず、どの程度暖かくなるかをまずは試してみるか」

アレクが言いながら立ち上がった。

どうやら、余剰魔力で暖かくなる寝具というアイディアそのものは合意されたようだ。


ショールにして、シェイラにも試作品を提供しようかな。

あのフォレスタ文明の遺跡はかなり冬は寒いらしいし。


転生とかでなく、純粋に異世界の話なので出来るだけ英語のカタカナバージョンは使わないように心掛けているので『オークションハウス』ではなく『オークション組織』としたんですが、考えてみたら『せり組織』とすべきだったかもw

流石にちょっと雰囲気が合わなすぎなのでボツにしましたが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 競売ではダメなのか…
[気になる点] セリでも良い値がつきそうなのかな? →オークションでは? セリはちょっと違う気がしますね。 [一言] 人生、それなりにやりがいが無いとな →そのセリフを言うには若い気がしますがwww
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