712 星暦556年 黄の月 7日 久しぶりに船探し(24)
プロは凄かった。
セビウス氏が手配したのは梱包係3人と運搬係3人。
今まで俺たちが3人でやっていた作業を倍の人数(それとも俺たちを含めて3倍というべきか?)でやるようになったのだが、俺たち3人があっけにとられて見ている間に6人はテキパキと作業を進め、結局翌日の昼前には神殿長の隠し(多分)地下室にあった宝物の残りは全て撤去されていた。
「すげ~。
残っていた分って俺たちが5日かけて運び出した量とほぼ同じだったよな??」
思わず思っていたよりも量が少なかったのかと他の2人に尋ねてしまった。
「ああ。
梱包したせいで箱の量は3倍ぐらいになったが、実際の個数はほぼ同じだった筈だ」
アレクが頷く。
「なんかあっけに取られて見ている間に終わっちゃった・・・。
この後どうしようか?
王都まで運んだ後、もう一度こっちまで戻って来てもう数日沈没船探しする?」
シャルロが空っぽになった地下室を見回しながら聞いてきた。
ちなみに、ツァレスとシェイラは地下室の宝物がものすごい勢いで梱包されていくのに負けを認め、神殿や神殿長の館を調べに姿を消している。
「う~ん、まだ20日経っていないけど、流石にあと3日で大きな発見があるとは思い難いし・・・ある意味、見つかったら処理が大変だからもう良いんじゃないか?」
神殿の宝を調べて売り払うので暫くセビウス氏は忙しいだろう。
オークションに出すのだって、あまり色々と遺物が一気に出てきたら却って売却できる価格が下がる。
沈没船や昔の神殿から出てきた貴金属や陶器に金を出す金持ちな暇人はそれなりに限られた集団なのだ。
一定の期間内に買える個数も払える金額も限られているだろうから、また別の沈没船を見つけるにしても今回出回る遺物に飽きた頃に売りに出す方が良いだろう。
・・・考えてみたら、オークションで買った物って飽きたらどうするんだろ?
また売りに出すんかね?
それとも自分の家で普段使いしてそのうち壊れたら捨てるのだろうか?
勿体ない気もしないでもないが、神殿の神具はまだしも、沈没船から出てきた品は元々販売用の物なんだから使い潰すのが正しいと言えなくもないが。
「そんじゃあ、シェイラとツァレスをファーグの街に送ったら王都に戻ろうか。
ちょっと早いけど、パディン夫妻は大丈夫かな?」
シャルロがちょっと首を傾げて言った。
「あ~。
もうそろそろ娘さんも対応が邪険になって来たらしいから、良いんじゃないか?
どうもパディン氏が孫を甘やかしすぎるって怒られているらしいぜ」
先日ちらっと笑い話としてパディン夫人が言っていたとシェイラに教わった事を思い出して報告する。
女の笑い話っていうのは実は深い本音も入っていて、聞き流していると後が怖いってシェイラに言われたし、多分もうそろそろお別れするのが正解なんだと思う。
嫁と姑の関係程は酷くないだろうが、実の親との関係だって一人立ちして一家の主婦として慣れてきた後に現れて色々と口出しするとイラつくらしいし。
・・・アレクの母さんなんかも嫁と軋轢が密かに溜まりそうなタイプな気がするが、シャルロの方はどうなんだろ?
おっとりシャルロと似てるなら大丈夫そうだが。
シャルロの両親はあいつの婚約と結婚の時にちょろっと挨拶した程度で殆ど知らないからなぁ。
まあ、王都近辺だからそれなりに会おうと思ったら会えるけど、会おうと思わなかったら会わないでいられる距離なんでそれなりに平和にやっているかな?
既に長男のところで孫がいるから(次男もいるのかな?何人かいる甥と姪が誰の子かイマイチ不明だ)、シャルロの子を産めという圧力も無いだろうし。
俺もシェイラとどうするか、そのうち考えなきゃなんだろうか。
まあ、本人もそれ程考えていないみたいだし、まだ良いかな?
・・・そのうち確認しておいた方が良いんだろうけど。
まあ、シェイラなら『察してよね!』という禁じ手はしてこないと思うから、大丈夫だろう。