710 星暦556年 黄の月 6日 久しぶりに船探し(22)
「箱詰めしていない物の持ち出しがこれだけ大変だったなんて・・・」
屋敷船に詰め込んだ最後の荷物を降ろして、思わずため息を吐いた。
「考えてみたら、今までは基本的に沈没船を王都の港に持って行ったらセビウス兄さんが残りは手配しておいてくれたから、多少の手伝いはしたものの楽だったんだな」
アレクが傍に来て金のボウル(なのかな?)を入れた箱の上にお尻を休ませながら言った。
「今までも船からの持ち出しも協力したけど、元々箱に入っていた貨物を運び出すだけだったから比較的楽だったんだね」
シャルロがクッキー缶を手に、寄ってきた。
「最初の沈没船の大きな倉庫っぽい場所にあったバラの個人的な荷物系は俺たちは殆ど動かさなかったし、あれにしてもそれなりに梱包されていたからな。
今回みたいに大元の保管場所からの持ち出しっていうのがこれほど手間が掛かるとは想定外だった」
泥棒に入ったって、貴族や豪商の宝物庫っぽい部屋に忍び込んでも中身を全部盗むわけではない。
依頼があった特定の物か、適当に持ち運びがしやすくて注目を集めずに換金しやすい物を頂戴するだけだったので、部屋に大量に積んである宝物を持ちだすという経験は無かったのだ。
最初はどんな風に保管されていたのかの記録も取りたいとツァレスが主張したので一つ一つ砂を払い、棚の上の姿を映像用魔具で記録してから箱に詰めて船に持ち込んでいたのだが、あまりにも時間が掛かりすぎるのでいくつか映像を記録した段階でやり方を変えることにした。
全部の砂を適当に払い、部屋の中の映像を記録しながら歩き回って後は手当たり次第に運び込むことにしたのだ。
この方法でやっても、中身がかなり抜かれた神殿の方の地下室ですら2日かかった。
更にブツが充実していた神殿長の地下室の方は・・・同じことをやっていたらいつになったら終わるか分からない。
ツァレスからは『僕たちは幾らでも時間があるだけ調べているから!』と嬉し気に言われたが、シェイラが微妙な顔をしていたし、俺たちだってそのうち王都に戻って仕事に復帰する必要がある。
なので割れる心配のない貴金属系の宝物をそこそこ適当に箱に詰め込み、陶器系のしっかり梱包する必要がある物に関しては王都から助っ人を頼むことにした。
陶器系の物はかさばるので、ポケットや袖に忍び込ませて盗み出すのは難しいだろうし、俺たちでは動かした際に割らないよう梱包するのに時間が掛かりすぎる。
という事で、必死になって貴金属の神具や装飾品や武具っぽい諸々を箱に突っ込んで船に運びこむこと更に3日。
やっと貴金属系の諸々を船に運び終わったところだった。
これからシャルロとアレクが屋敷船で王都に向かい、荷物《宝物》を降ろして梱包のプロを5人ほど連れて戻ってくることになっている。
やっぱりこういう時に大きな商会に伝手があると便利だよな。
信頼できる梱包のプロなんて一般市民がそう直ぐに手配できるものではないが、我々の場合はセビウス氏があっさり商会のベテラン数人をボーナスで釣って集めてくれた。
セビウス氏だけでなくアレクの母親にもどれか一つ、見つかった宝を献上するという事で話はついている。
どうもシェフィート商会では対外的な交渉とかは父親と長男がやっているらしいが、内部的な権力者は母親らしい。
親父さんにも賄賂として何か渡さなくて良いのかと聞いたら、『どうせ何を渡すにしても母親が喜ぶ物をという話になるだけなので、要らない』とあっさりアレクに言われた。
まあ、賄賂のブツが少なくて済むのは俺たちの実入りが増えるから良いんだけどさ。
パディン夫妻やメイドに手伝ってもらうことも考えたのだが、3人が何かを盗まないように毎回身体検査をするのは信頼していないようで角が立つが、かといって調べなければ何かを盗まれる可能性が高いし、何かが無くなった時に話が面倒になる。なので結局3人には当初の予定通りファーグの街で遊んでもらっている。
パディン夫人はまだしも、メイドとパディン氏は特に梱包が得意という訳でもないしね。
取り敢えず。
これから半日ちょっとは俺はシェイラの遺跡調査をノンビリ手伝うだけの予定なので、やっと休める。
ずっと地下室と屋敷船を行き来してばかりだったので、今日は島の他の部分とかもちょっと見て回っても良いかも知れないな。
ツァレスは空気w