695 星暦556年 緑の月 24日 久しぶりに船探し(7)
パディン夫妻とメイドに小型船の使い方を教え、ちゃんと係留費を払う代わりに盗まれない様管理してくれる港の区画に停めるよう言ってから、俺たちは手漕ぎボートの方に乗り込んで沈没船の探索に出かけた。
小型船は魔石で動く魔具なんでそれなりに管理がしっかりしたところじゃないと盗まれかねない。
まあ、水上で使う船だしシャルロと俺の血を一滴ずつたらしてあるから盗まれても蒼流か清早がその気になればすぐに見つかるけどね。
手漕ぎボート(と言っても俺たちの場合は漕がずに清早に動かしてもらっているけど)で暫く海上を進んで景色を楽しんだ後、そろそろ未発見な沈没船があってもおかしくないと想定した海域に着いたので水中に潜る。
「うわ、何これ?!
水の中なのに濡れないって不思議すぎる~!!!」
ケレナが興奮したように叫ぶ。
あれ?
沈没船探しはケレナと一緒にやっていないにしても、海底遊覧ぐらいはシャルロがケレナとのデートや新婚旅行の際にやっているかと思ったんだけど。
やってなかったんだ?
ダメじゃんシャルロ、海中の景色を散々楽しんだ癖に奥さんに見せるのを忘れるなんて。
「水精霊の加護持ちだけが出来る《《ずる》》ってやつだな。
最初は海底歩いてみたんだけど、滑って歩きにくい上に時間が掛かりすぎるんでボートですい~っと動きながら何か固まりを見かけたら魔術をぶつけて砂を払っていくんだ」
ケレナに説明しながら丁度左側に見えた塊に水打をぶつける。
アレクが放っておいた光の術に舞い上がった砂が反射して一気に下で真っ白に乱反射していたが、海底に着くころには良い感じに落ち着いていた。
「取り敢えず、ここから僕たちが調べたところが分かるよう、氷で設定しておいてくれる?」
シャルロが蒼流に頼む。
『勿論だ』
珍しく蒼流が俺たちにも聞こえるように答える。
シャルロが水の中に居るからご機嫌なのかな?
まあ、蒼流の機嫌はイマイチ分からんが。
「ふむ。
あれは岩だったようだね」
砂が落ち着いた後の固まりを見ていたアレクが紙に書き込みながら呟く。
まあ、最初から沈没船が見つかったらちょっと異常に運が良すぎるだろう。
まだまだファーグの港に近いんだし。
「そう言えば、ファーグの港っていつ頃に出来たんだ?」
ボートが動き始めたので俺の担当になった右側をしっかり見ながら他の3人に尋ねる。
「元々漁村はあったらしいけど、200年ぐらい前にグラハム侯爵の息子が子爵領を分け与えられた際にあそこを領都に定めたことでだんだん大きくなっていったはずよ」
ケレナが答えた。
流石友人の領地。
良く知ってるね。
「あれ、あそこってグラハム侯爵の系譜だったっけ?」
シャルロがちょっと意外そうに尋ねる。
「いえ、グラハム侯爵と子爵が公金横領で領地を削られた際に子爵領は王家に没収されて、代わりに告発したファルガム子爵が侯爵領から没収された部分とファーグの子爵領とを合わせて伯爵領として受け取ったの」
おっと。
友達の先祖と直接関係は無かったか。
あまり港の開発が凄かったですね~とか言わない方が無難かな?
多分伯爵領の領都として発展した際にケレナの友達の旦那の先祖もそれなりに投資したんだろうが、誉めた部分が最初の子爵の成果だったりしたら気不味い。
まあ、俺がケレナの友達に会う事は無いと期待したい。
アレクはシェフィート商会の伝手として南西の大きな港を持つ伯爵なり伯爵夫人なりと仲良くしておいて損は無いかもだが、俺は・・・タイミング次第だがその令嬢と会う時はシェイラの所にでも行こう。
「お、もう一個発見」
シャルロが声を上げ、水打を放つ。
「うわぁ、なんでこんなに明るくなるの??」
ケレナが砂が舞い上がって乱反射して明るくなった海を見ながら尋ねる。
さっきよりも海底近くに居るので、乱反射した光も大きく明るく見えるんだよね。
「海底には細かい砂が溜まるんだ。
だから沈没船も岩も砂に覆われていて正体不明な固まりになるから、遠めの位置から水の固まりをぶつけて砂を舞い上がらせて、近づいた際に何かを確認するんだけど・・・砂って白っぽいから舞い上がると光が反射するんだよね。
細かい砂がぶわっと舞い上がると乱反射してかなり明るくなって綺麗でしょ?」
シャルロが楽しげに説明する。
あの乱反射って考えてみたらシャルロが魔術学院で最初に作ったランプの光り方に似ているな。
あのランプは各自持って帰ったが、どうなったんだろ?
俺のランプは・・・どっかに仕舞ったまま、行方不明だが。
シャルロはそこら辺、意外とちゃんと使っているかも?
考えてみたら、王都近くの海底に沈んでいる大きな船を蒼流に持ってきて貰ったら一気に大儲けですね。
まあ、そんな事しても楽しくないからやらないんでしょうけどw