692 星暦556年 緑の月 21日 久しぶりに船探し(4)
「アファル王国って暗殺部隊とか持っているんですかね?
俺ってウォレン爺とか学院長が身を引いた後に暗殺されたりしないかちょっと心配なんですけど」
ケレナの意向を確認しに行くのに3人で押しかけるよりもシャルロ一人で話す方がケレナも突然の思い付きに文句があったら言いやすいだろうという事で、シャルロが一人で確認に行くことになった。
アレクはその間に船に乗せる食糧とか寝具などの確認と手配の準備のために王都へ向かい、俺は・・・学院長に留守の予定を知らせておくのと何かお土産の要望があるかを聞きに来た。
が、最初に聞いたのはちょっと別の話。
ついつい、気になっていたことが先に口に出て来たんだよね。
「はぁ?
他国の人間ならまだしも、自国の精霊の加護持ちを王宮や軍が暗殺する訳ないだろうが。
・・・誰かに軍部に入らないと命に危険があるかもと脅されたのか?」
呆れたように答えた学院長だったが、最後の方はちょっと声が低くなっていた。
おっと。
別に脅されている訳ではないから誰かが学院長に叱られたら悪いな。
「いや、別に脅されてないけど、こないだの騒動で王宮中の隠し通路の場所を全部知ってしまった上に、増えすぎていた隠し通路とか隠し部屋を潰す作業も頼まれて使い魔にやってもらったんです。
なんかこう・・・ここまで色々知っちゃうとヤバくね??と心配になって」
基本的に軍部のお偉いさんは会うたびに軍に入らないかと誘ってくる。
軽い感じなんで、『合意してくれたら嬉しいな〜』程度な感じなんだが、便利な能力をもっているから誘うのと、他に流れたらヤバいから誘うのでは断った際の対応が違うだろう。
とは言え。
最初に清早から加護を貰った際にも、加護持ちに無理強いはしないって言われたっけ?
「あぁ。
隠し通路ね。
儂がウォルダ殿下の教育係をしていた際にもあやつがしょっちゅう抜け出して困った記憶があるな。
幾つかは炎華に結界を張って貰って通れぬようにしたが、殿下が成人した時点で結界を解除したから・・・今はガバガバか?」
ウォルダ殿下って・・・ああ、王太子か。
そう言えば、学院長ってあの王太子の教育係だったんだっけ?その縁であの間抜けで問題ありまくりな手紙の際に王太子に頼られたって言っていたよな。
王宮の中では国王が許可した術以外は魔術が機能しにくいって話だったが、精霊に頼めば大丈夫なのか。
ちょっとした抜け穴だな。
まあ、通信用魔具とかいった魔道具も大雑把な機能の括りで承認しちゃうとその類似系の魔具も全部大丈夫になるみたいだから、案外と穴が多いみたいだが。
「ガバガバですね~。
王族が住んでいる離宮なんて、ある意味ちゃんと王家の血が引き継がれてきたことが驚きなレベルで隠し通路が大量にありましたよ。
まあ、今回大分と潰しましたが」
そう言えば、国王になるには魔術の神関連のなんか儀式があるんだっけ?
それともあれって神殿長が王家の人間なだけ?
まあ、王家の血が取って代わられたら困るだろうから、民には知られていない魔術の神関連の国王に関する承認儀式っぽいのがあっても不思議は無いか。
時折王太子になると見做されていた王子が若死にすることが歴史でもあるからなぁ。
王位継承権争いでの暗殺かと思っていたが、場合によっては王太子になる前に確認したら国王の血をひいていないことがバレて殺されたこともあるんかもなぁ・・・。
「まあ、ちょっとの浮気程度はまだしも、王子が抜け出して死んでしまったり不味い相手と逢引きしたりしても困るからな。
隠し通路が減ったのは良い事だろう。
精霊の加護持ちだったら隠し通路の場所なんて風の精霊に聞けばいつでも分かるのだ。
それは儂も国王やウォルダ殿下に知らせておる。
別に精霊の加護持ちのウィルが王宮の隠し通路の一覧表を作ったからと言って、暗殺しようとは思わんだろう。
精霊の怒りを買ったら不味いしな。
場合によっては高位精霊が味方に付いていれば何とかなると考えるバカもいるかも知れんが、お主はシャルロとも仲が良いし、大丈夫だ」
学院長があっさり言い切った。
本当に大丈夫なのかね?
まあ、確かにシャルロだったら俺が暗殺されたら地味に痛い嫌がらせを蒼流に頼みそうだし、その前に清早が助けてくれるか。
ちょっと安心だな。
まあ、もしもの時の備えはしておくが。
「それは良かったです。
そう言えば、今度南西の海の方で沈没船でも探そうかって話しているんですが、ファーグの街とかからのお土産って何か希望あります?」
暗殺部隊が無いとは言っていないw