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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後5年目
684/1297

684 星暦556年 緑の月 5日 人(+盗品)探し(8)

逃亡者を追いかけて走りながら頑張って集中し、南棟の地下を心眼サイトで確認する。

うん、こっちは外に出る隠し通路はあるが、他の棟と繋がる隠し通路は地下にはない。


これならなんとかここで捕まえられるかな?

外へ出る隠し通路に入り込んでくれれば出口がシャルロ(と蒼流)の結界で塞がれているので行き止まりに突っ込む事になるので一番良いんだけど。


「2階の東棟への使用人通路に誰かを送ってくれ!」

一緒に走っている兵に声をかける。

役人用の渡り廊下には既に誰かが立っているのが視えるので、こちらは態々言う必要は無いだろう。


「2階の東棟へ繋がっている使用人用通路も忘れるな!」

兵士が通信機に向かって叫ぶ。

そろそろ息が切れて来てるか?

俺一人で不審者を捕縛できる自信はないから、頑張ってくれよ。

『向かっています!』

通信機から答えが聞こえる。


間に合うのか心配だったが、幸いにもどうやら不審者は地下の隠し通路を狙っているのか2階を素通りしてそのまま降りて行った。


外へ繋がる隠し通路なんて王族の避難路だろうに。

一体どこから情報が漏れたんだろうね?


まあ、考えてみたら俺が時間を掛けて王宮の傍をうろつけば隠し廊下の場所なんて全部わかる。

心眼サイトは範囲や精度に個人差はあれど、一応どの魔術師だって使える。しかもたしか南棟は申請や訴えを扱う建物だった筈。

順番待ちをしている顔で居座らせた買収した魔術師に時間を掛けて探させることも可能だったかな?


そう考えると、外部の人間が長時間居座れる建物に王宮と外を繋ぐ隠し通路なんて造るのは馬鹿だよな。

まあ、隠し通路が先にあって後から建物の使用用途が変わったのかも知れないが。


それにしたってそれなりに偉い人間が最終的に承認したんだろうから、気を付けるべきだという気もするが・・・隠し通路ってそれこそ国王と王太子しか知らないとか?

直系の子供全員に教えていたら、秘密と言っていてもその連中が自分の子供に教えていたら時の経過とともに知っている人間の数がどんどん増えていくからなぁ。


とは言え、国王と王太子しか知らなかったら大掛かりな暗殺とか疫病が流行った際に情報が失われる可能性もある気がするけどな。


そんなことを考えているうちに、不審者が地下の隠し通路へ続く部屋に入っていった。

「どこに向かっているんだ??」

一緒に走っている兵が呟く。


「隠し通路があるっぽいぞ。

シャルロの結界で封じてあるから、これで捕まえられる」

隠し通路の入り口に辿り着いた俺は後を追う前に入り口になっているクロゼットに入れるけど出られない進行妨害の結界を展開する。


「よし。

誰もこれで出てこれなくなった。

お前さん一人で捕まえられるか?

俺は直接戦うのはあまり得意じゃないんだが」

戦闘訓練は魔術学院を卒業して以来やっていない。

ナイフで戦う程度なら出来るが、荒事のプロ相手に戦うのは御免だぞ。


「動きを止める術とかないのか?」


「氷漬けにする術ならあるが、死んじまったら困るんじゃないか?」

氷漬けにするとか、水攻めにするとか、ある意味殺す術ならそこそこあるが、殺さずに捕縛するような中途半端な術はあまり無いぞ。


「確かにな。

気絶させたり、眠らせる術はないのか?」

息を整えて剣を確認しながら兵が尋ねる。


眠りの術が効くならそれを掛けても良いが・・・戦闘状態にある人間には効きにくい。

いや、それでも意識が朦朧として動きが鈍くなるか?

『清早、今ここに来れる?』

ちょっと清早に声をかけてみる。


『おう!』

ぽんっと清早が姿を現した。

どうやら追いかけっこを見ていたようだ。


『殺さずに相手を気絶させることって出来るか?』

相手の肺と気管を水で埋めれば呼吸が出来なくて殺すのは簡単だが、気絶したらすぐに水を抜き出して死なないようにするのはそれなりに難しい。


『う~ん。

多分?』

微妙な返事が返って来た。


『じゃあまあ、もしもの時には頼んで良いか?

失敗したらそれはそれでしょうがないってことで』

『おう!』


「眠りの術でちょっと意識を朦朧とさせられるかも知れない。

溺れさせるのも可能かもしれないが・・・これは失敗すると死ぬかもしれない」


「ちなみにこの隠し廊下はどのくらい広いんだ?」

兵に聞かれた。


俺だってここに来たのは初めてなんだけどな。

心眼サイトで下を確認する。

どうやら不審者はシャルロの結界に辿り着いたようだ。


何やら魔具を使っていたが、当然の事ながらシャルロと蒼流の結界は破れていない。


「一人走れる程度だな。

もうそろそろ引き返してくるぞ」

下でそのまま隠れていようとは思っていないようだ。

まあ、隠し廊下への入り口の扉をおざなりにしか閉めていなかったからな。

少なくとも下で隠れるつもりならこの扉をしっかり閉めて擬装を戻す必要があるだろう。


「よし。

まずは眠りの術を掛けてくれ。

意識が朦朧としているなら何とかなるかも知れない」


「分かった」

睡眠スレプの術を準備して待つ。


やがて不審者が戻って来た。

まだ追いつかれると思っていなかったのか、かなり無防備だ。

視界に入って警戒される前に術を掛ける。


距離が遠いと精神系の術というのは掛けにくいのだが、幸いにも隠し通路は入り口のすぐ傍で曲がっているお蔭で視界に入る前にかなり近づくんだよな。


どさ。

あれ??

術があっさりかかった??


最後は実質戦闘無しw

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― 新着の感想 ―
[一言] そこまで入り込めたならフリをしてるだけ…でも問題ないか精霊は反則だわぁ
[一言] 秘匿度の高そうな隠し通路がバレていたり情報が駄々漏れですな。
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