662 星暦556年 翠の月 20日 空滑機改(7)
「ふうん、改造版を造ってるんだ?」
「そう。だけど試行錯誤しながら試作品を造りまくるのに疲れたから、ちょっと休みを取ろうという事で2日ほど休みにして三連休にしたんだ。
だから久しぶりに空滑機で来て、シェイラと遊覧なんかどうかと思ってね」
椅子の試行錯誤でもそれなりに辛かったのに、更に機体も・・・となってなんかもう、頭の中が煮詰まって来た感じがしたので一旦休もうと皆で合意したのだ。
シャルロはケレナと一緒に兄の所に行って甥姪と遊ぶとのこと。
アレクは・・・実家の方で純粋に金の話でもして楽しむのかな?
それとも久しぶりにラフェーンと遠乗りにでも行くかも知れない。
清早の話だと、ユニコーンなだけあってラフェーンを乗るだけで多少の癒し効果があるらしい。
俺も久しぶりにアスカと遊ぶかね?
とは言っても俺は山の中とかを出歩きたい訳ではないからなぁ。
「ついでに改造版で改善するアイディアも欲しいんでしょ?」
シェイラが鋭く指摘した。
「まあね~。
ちょっと歴史学会の面々が使うには稼働費用が高すぎると思うけど、考えてみたら転移門を使うよりは安いから。
人数を減らせば荷物とかも運べるし、急ぎで持ち込みたい荷物がある時だったら使うかな?」
街の外へ向かいながらシェイラと話す。
考えてみたら、転移門って魔術師以外が使う場合はバカ高い。
だから理由があって急ぐ場合以外は魔術師でない人間なら移動に馬車を使うことが多いのだが、荷物も運べて座れるとなったら空滑機改を使うという選択肢も有りだろう。
値段的には馬車より高く、転移門より安く、時間も二つの間位だ。
商業ギルドか・・・それこそ乗合馬車を経営している商会が幾つか機体を買ってサービスを始めるかもだな。
どの位居心地よく移動できるかにもよるだろうが。
椅子の固定とかに時間が掛かるので、トイレ休憩を入れると大幅に時間が無駄になることを考えると、中途半端な距離では使わないだろう。
トイレ休憩なしで進める程度の近さか、もしくは馬車では時間が掛かりすぎるぐらいの遠距離になるか。
贅沢を言わずに、客がおしめでもして席でそのまま排泄してくれれば楽なんだが・・・流石に富裕層相手にそれは無理だろう。
しかもデブってトイレが頻繁な奴が多いからなぁ。
肥満病《糖尿病》だったりするとやたらと飲んでしょっちゅうトイレに行っているし。
ああなったら転移門を使わないと、馬車でも時間が掛かりすぎるだろう。
非常時の避難用として1刻程度の飛行と考えていたからトイレ休憩なんぞ想定していなかったが、普通に移動用にも使うかもとなったらトイレ休憩用に椅子の設定が簡単にできるようにした方が良さそうだ。
「遺跡発掘隊は貴族のスポンサーが払ってくれるって言わない限り転移門なんてほぼ使わないし、スポンサーがお金を出してくれるんだったら一緒に移動するとでも言うんじゃない限りそれを発掘費用に横流しするわよ。
ただまあ、年初の歴史学会の発表会とかに急ぎで行きたい時なんかに使う可能性はあるかな?
でも、年初なんて皆が使いたがりそうだから予約が取れ無さそう」
街の門番に片手をあげながら、シェイラが言った。
・・・スポンサーから貰った金も横流しするのかぁ。
まあ、ある意味当然かも。
何百年か何千年前の遺跡を調べるのだ。
急ぐよりもより長く研究できるよう、金を使いたいだろう。
隠蔽結界に置いてあった空滑機を出してシェイラと中に入り込み、離陸。
「何かこの、ヴンって持ち上がるのはいつまでたっても慣れないわね。
それこそ適当な屋根とか丘の上から離陸できないの?」
シェイラが小さく息を吐きながら尋ねる。
「そんな高い塔や丘の上に上るの、大変だぜ?
まあ、それなりのサイズな町だったら大きな建物の屋上を借りるのも可能かもしれないが、遊び行った先で離陸する際は地表からになるし」
まだ滑空の方ですら満足に出来ていないが、空滑機改の離陸に関しては問題が山積みになりそうな気はするので、マジで建物の上からというのは選択肢として考えておいても良いのだが・・・町から王都へ飛ぶとか言うのならまだしも、土砂崩れなどの非常事態の際の使用では都合の良い高い建物があるとは思えないんだよなぁ。
「あの台車みたいに、持ち上げる魔具を別に作って街に帰る時だけ使うとか?
まあ、どちらにせよこの最初の離陸をもう少しゆっくりして貰いたいわね」
シェイラがもぞもぞと動きながら言った。
ふむ。
最初の離陸に関しては適当に重量軽減やレヴィアの魔術回路を使って滑空できる高さまで上がっているだけで、上昇するスピードに関しては特に何も意図していなかった。
ゆっくりの方が良いなら、それで特に魔石消費の効率が下がらない限り希望を取り入れても良いかも知れない。
休みが明けたら要実験だな。
滑空の部分が終わったらだが。
色々問題になっている超肥満な人だったら塔の上まで登るのも難しそう・・・。