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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院2年目
66/1290

066 星暦550年 緑の月 12日 手始めに

意外とアレクって物知りだった。


◆◆◆



だだっ広い更地の前に俺たちは来ていた。

「建物を建てる前の更地の整備というのは、土地を完全に水平にして建物が傾くのを防ぐためが第一の目的だが、それなりに長期的に使う予定の建築物の場合は固定化と防水の術をかけることも多い。

ここの更地には昨日、一つ術が掛けられた。どちらだと思う?」

生徒の前に立ったサシャーナが尋ねる。


「固定化ですね」

タニーシャが答えた。


正解。

かなり入念にかけられているね、これ。一様に全体にかけた後に、端と柱が通るであろう要点に強化した術が重ねがけされている。更に地面に対しても垂直に固定させることで建物が傾かないようにしてあるようだ。


「そう。一番大事な基盤だからね。柱が一本曲がっていたり、屋根が漏っていたりしても建物はまだまだ使えるし修理できるが、基礎が傾いていたら修理はほぼ不可能に近い。

基本的に、建物とは設計の段階で不必要に圧力が一点にかからないように計画されるが、それでも所有者の意向とか周辺の環境のせいでバランスが偏ることがある。

建てた当初はきちんとバランスを取っていたのにリフォームしたり増築するうちにバランスが崩れるというのも良くあるケースだな。

そんなことになっても建物が傾いたり倒壊したりしないように、土台の更地を固定化し、更に地面に対しても術をかけることで地盤そのものが傾いたりすることを防ぐ。

術そのものをどうやってかけるか誰か知っているか?」


構造に対する術っていかに盗みに入るのに関係するかしか見て来なかったから、どうやって地盤との固定化をしているのかは知らなかったな。

どうやっているんだ?


「術を彫り込んだ鉄棒を地面に埋め込み、その鉄棒の間で更に固定化の術をかけますよね?」

アレクが発言した。


良く知っているじゃん。


「その通りだ」

サシャーナが頷いた。


「良く知っていたね」

アレクに小声でシャルロが囁いていた。


「新店を建てる時に見に行ったことが何回かあるんだ」

アレクが肩をすくめながら答える。

授業を抜け出して行ったな?

それともシェフィート家の将来を担う息子の一人として社会見学の一環で見せられたのか。


「今日かけるのが、防水の術だ。何故これをかけるのか、分かるか?」

さあ。

防水って川が氾濫しても大丈夫なぐらい強固なのか?

それとも単に濡れにくいっていう程度なのか。

知らんよ・・・。


「地面からの湿気を通さない為」

誰も答えようとしなかったので、アレクがまたもや答える。

貴族や金持ちの子息たちじゃあ家を建てるのを見に行ったりはしないのか、どうもこの範囲には皆さん弱いようだ。

領民の家を建てたりするのを助けてあげたりしないんかね?貴族だったらタダでこういう構造魔術をかけてあげられるだろうに。


「そう、湿気は柱や床板を腐らせたり、健康を害したりで様々な問題を起こす。だからそれなりのレベルの建築物には防水の術をかけることが多い訳だ」

教師が答えた。


そっか。

気温があまり動かないから地下室や半地下の保管室に食料品とかを置く家庭が多いが、確かに湿気ていたらカビが生える可能性も高いから碌なことないよな。


「私が防水の術をここにかけるから、各自担当のグリッドに同じように術をかけること。

うまくいかなかった場合は私が補強するが、出来るだけ自分の力で出来るようになっておきなさい」

昨日見せられた防水の術を、サシャーナが自分の足もとにあるグリッドにかけた。

うん、憶えている通りだ。


記憶に間違いが無いことを確認してから、今朝指示された自分のグリッドへ向かう。

「アシャル・ウィシュ・ダン・アヴィード・ヘレ

アボ・ビロ・ナ・スル

ウォプラ」


建物に建てる魔術と言うのは戦闘用とかと違い、急がない。

だから発現させる為だけの一言ですむ簡易呪文と違い、こちらは長い。

その分効きがいいんだろうけどね。


術をかける際に範囲指定したグリッドの中に薄っすらと魔力の陣が浮かび上がり、消えた。

『これってどのくらい防水機能が続くのかな?』

心話で清早に尋ねる。


『なに、防水にしたいの?俺に任せてくれれば絶対に水を通さないように出来るよ?』

水精霊が提案してきた。

いやいや、ありがたいけど、それはずるだからね。

『清早が力を割くほどのことは無いさ。それよりも、俺のかけた魔術がどのくらいちゃんと出来たか分かる?』


『ま、いいんじゃない?俺が命じる程ではないけど、俺の加護しているウィルが命じたんだし』

との返事が来た。


あっそ。

どちらにせよ、ずるなことに変わりは無いのね。

・・・ま、いいや。


サシャーナが更地をゆっくり回って全員の魔術の出来を確認する。

所々で止まって術を補強しているようだ。

考えてみたら、強度もまちまちな継ぎ接ぎな防水の術で、良いのかね?


それとも学院が責任を持ってアフターケアしますとでも言ってあるのか。


そんなことを考えていたらサシャーナがこちらにきた。

アレクのを確認して頷き、シャルロのを見て小さく口笛を吹き、俺のを見てなにやら頷いている。


何だって言うんだ?

一人で満足していないで、教えてくれよ。


まあ、補強されていないと言うことは一応合格レベルだったんだろうけど。


「よし、良いとしよう。今補強された生徒はまた後で別の建物で防水の術をかけてもらう」

全員のを見終わった教師が声を上げた。

「では、次の建物へ行くぞ!」


ぞろぞろと生徒が歩き始めた時、サシャーナがシャルロと俺のところにさりげなく近づいてきた。

「水精霊の加護があると大分防水の術のかかり具合も違うようだな。今回はプラスに作用しているが、場合によっては反対向きに作用する時があるかもしれないから気をつけろよ?」


なるほど。

水精霊の加護があるから水関係の術は効きがいいんだ。


水精霊だから・・・防熱とかには効きが悪いのかな?

考えてみたら炉の周りの魔術にも悪影響があるかもしれないから、今度一度しっかり清早と確認した方がいいのかもなぁ・・・。

11時半ぐらいに書き始めたのに、眠くてちょっとぼ~としていたら書き終わるのに2時間もかかってしまった・・・。

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