650 星暦556年 紺の月 20日 渡河用魔具(4)
「この台車良いわね!!!
そっと発掘品を動かすのに最適だし、邪魔な土をどけるのにも使えるし、素晴らしいわ!
・・・これで魔石が必要無かったら更に良かったのに」
久しぶりにヴァルージャの遺跡まで遊びに来たついでにお土産として台車型魔具の試作品を持ってきたら、シェイラに大歓迎された。
なんと言っても遺跡では色々と物を動かすことが多い。
それを台車で腰に負荷をかけることなくスムーズに動かせるとなったら素晴らしいという事だ。
とは言え。
貧乏な考古学者たちだ。
俺が提供した魔石を使い終わったらこの台車は倉庫で埃を被ることになるのだろう。
一応使用者の魔力も使えなくは無いので、半日ぐらいは毎日使うかも?
リタイアした魔術師の爺さんが協力したらもっと使えるか。
あの爺さんもかなり気ままにやっているから、魔石への魔力充填はまだしも台車を実際に動かすのはあまり協力しないだろうなぁ。
「ちなみにここは川を渡らなきゃならない場所なんてないよな?
この台車の仕組みを使って渡河用の魔具も開発中なんだが、試作品を要る?」
ここで手伝った際に川を渡ったり川に道を遮られた記憶はないから、必要ないとは思うが。
「渡河用の魔具?
なるほど、地面から浮けるなら水の上でも浮いていられるって訳ね。
森の中に何か所か小川が流れている場所はあるけど、足がちょっと濡れるのを気にしなければ渡れる程度だから大丈夫かな?」
シェイラが暫し考えてから首を横に振った。
「荷馬車を載せて川を渡れるようにする魔具だから、荷馬車が通れるぐらいの道幅が無いと使えないしな。
最初はもっと動かしやすいこの台車を大型にした橇の様な魔具を考えていたんだが、ちょっと魔力の使用量が多すぎてね。
渡河だけに使用場面を限ることにしてみたんだ。
一応沼地の上を移動するのにも使えるはずだが」
まだ沼地移動用の使用に関してはテストしていないので、うっかりすると沼地のど真ん中で魔石切れになんてことになりかねないけど。
「沼地を突っ切れるというのは便利そうね。
事前に一番効率的なルートを割り出しておく必要があるだろけど」
流石商会の娘。
シェイラはすぐに沼地を突っ切れる魔具の利点に思い至ったようだ。
考えてみたら沼地のサイズがそこそこ大きくても途中で魔石切れにならない様、どの程度のサイズならどのくらい魔石が必要と言ったような使用上の注意をちゃんと調べておかないとだな。
大きな沼地や川が集まっていて、突っ切りたがるような商会が存在するような地域って国内だとどこかな?
単に沼を越えられるというだけでなく、街から街へ移動する際に途中で通過する川と沼を全部渡り切れるだけの魔石の必要量がどの程度なのか、調べないと。
何か面倒くさそうだ。
それこそ、ウォレン爺あたりに情報提供を頼めないかな?
商業ギルドも情報を持っているかもだが、あっちは絶対に情報提供に金を求めるだろう。
軍部は自分達が使うかもと思ったら国内の地形情報だったらそれなりにあっさり提供してくれるかも。
その代わり国外への販売を制限されるか?
まあ、国防の為と言われたら途中で情報提供をされていようが、いまいが断れないのだ。
得られるものを先に得ておくべきだろう。
まあ、ここら辺はアレクの実家で検討して貰おう。
「そう言えば、最近はどんな感じなんだ?
このままずっとここでツァレスのサポートをするの?」
ガルバの様に遺跡発掘責任者を任されるような抜擢はまだまだ先だろうが、それまでずっと同じ遺跡で働くのか?
何種類かの遺跡で働く方が知識の幅が広がりそうな気はするが。
「う~ん、他の発掘グループで手助けして欲しいって話も時折出てくるんだけどね~。
取り敢えずはここでツァレスの手伝いをしている方が、自分でも発掘に携われるから異動の提案は断っているの」
シェイラが肩を竦めながら答えた。
なるほど。
シェイラの実務能力を必要とする発掘隊は幾らでも存在するが、シェイラが程よく腕を発揮しつつも発掘に関われる丁度いい規模の発掘隊はそれ程無いという事か。
まあ、俺としても森の中のフォレスタ文明の遺跡の方が、地面の下にあるオーバスタ神殿の様な遺跡より好きだしな。
やはり地下は最初の巨大ゴキに襲われたショックが微妙に尾を引いている。
地下の方が蚊とか蜂が居なくて安全なんだけどなぁ。
まあ、今となっては携帯用の虫除け魔具が出来たからそちらの心配は必要ないが。
うん。
まあシェイラには好きにやって貰って適度にちょくちょく会えればそれでいいや。
だれも『いいね』押してくれないな〜と密かに思っていたら、小説のデフォルト設定がオフな事を発見。
運営もそこら辺をはっきり説明してくれれば良いのに。