表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後5年目
630/1297

630 星暦556年 赤の月 11日 清掃は重要

「ウィルの手助け業務は完全に終わったのか?」

久しぶりに休息日以外でも自宅でゆっくり朝のお茶を楽しめるようになり、のんびりと朝食後に工房のソファでリラックスしていたらアレクが声をかけてきた。


「おう。

一応終わった筈?

結局追加で何か所か回ることになったけど、先週で終わりだと言っていたから大丈夫じゃないか?

あっちの人間も何人かは呪具に掛かっている人間が分かるようになったらしいし」

重要な街は大体回ったんで、他の場所で呪具を使われている人間がいても国にとってはそれ程大きな被害はないと上が見做したとも言えるのかも。


まあ、呪具の基本的な使い道は商会同士での情報戦に使うことが多いみたいだからな。

国単位の大掛かりな作戦だと軍が出張ってくるので、戦争でも始めようと思っているのでない限りあまりやらないらしい。


・・・最初に裏ギルドで発覚したのは、単に裏ギルドが裏切りに対して常に目を光らせているから発見が早かっただけで、実際には裏ギルドよりも普通の商会で呪具を使われていた人間の方がずっと多かったようだし。


裏ギルドの人間だと知らないで表向きの業務に色気を出して、サソリを踏んだというところなのだろう。


ベルファウォードで捕まった人間はあまり詳しい事は知らず、単に呪具を使った情報収集を専門とする商会から雇われているだけとのことだった。

その商会も、南方にある内陸の小さな国の中堅どころってだけで国の詳細すら知らなかったらしい。

流石情報収集の専門家集団。自分達の情報管理も完璧に近かったとファルナが言っていた。


ザルガ共和国が黒幕では無かったというのはかなり意外な結果だったが、戦争はまっぴらなのでありがたい。

情報部は一応この情報が本当かを調べるために更に大元の商会を探そうと色々と探っているらしいが・・・まあ、頑張ってくれ。

俺の能力が便利になる範囲からは外れているっぽいからもう呼び出しは無いと期待している。


「主要な街は確認が終わったし、通信用魔具探しは緊急の場合以外は俺がやる必要もないし。

そう言えば、探知用魔具の一般販売が近いうちに解禁されそうだから、製造の方の準備を始めた方が良いかもってシェフィート商会に言っておいたらどうだ?」


「そうなのか?」

ソファに座りながらアレクが少し驚いたように目を丸くした。


「ああ。

軍部とか国の上層部だけでなく、地方の領主や商業的な組織にも盗聴用の通信用魔具を埋め込まれるようになったからな。

秘密にしておいてこちらの都合がいい情報を流そうにも弊害の方が大きくなってきたから諦めるっていうようなことをファルナが言っていた。

中規模以上の街の領主に探知用魔具を渡して情報管理をしっかりしろって命じているみたいだから、盗聴の事を知っているってバレるのは時間の問題だろう?」

盗聴のことがバレていると相手も分かっているのに、お互い知らんぷりをして情報戦をしても空しいだけだ。


諦めて盗聴されているかを定期的に確認して、埋め込まれた通信用魔具を取り去る方針に方向転換したらしい。


「ふうん、じゃあ魔力持ちを見つけるための道具としての使用も解禁かな?」

シャルロが尋ねる。


「可能性は高いが・・・まあ、取り敢えず普通の魔力探知用魔具を解禁するから契約を変えようとシェフィート商会に声が掛かってきてから考えれば良いだろう。

それは良いとして・・・次の開発はどんな物にする?」

アレクがクッキーの缶を取り出しながら尋ねた。


流石に年初から遊びに行こうとは言えないからなぁ。

仕事だ。


「ちょっと売り出し時期がずれるかも知れないけど、絨毯やタペストリーを丸洗いできる魔具を作らない?

踏んづけたり色んな物を零したりしているのに、絨毯って普通に洗えないじゃん?

実は兄のところでジャルナルクの弟か妹が生まれそうって聞いたんだけど、赤ちゃんって絨毯の上をハイハイするじゃない?

年末の大掃除で絨毯を叩いて埃を払っているだけなのを見て、あれってちょっと不潔かな~って思ったんだ」

シャルロがクッキーの缶をアレクから受け取りながら提案する。


「ジャルナルクって誰だっけ?」

何か聞き覚えがあるような気がしないでもないが、はっきりしない。


「兄上の長男で、フェリスちゃんの弟だよ~。

フェリスちゃん程可愛くないけど」

どうやらシャルロは姪っ子の方が甥っ子よりも可愛いらしい。


もしかしたらこのジャルナルクっていうのが単にイマイチ可愛くない顔をした幼児なのかも知れないが。


「ふむ。

まあ、絨毯っていうのは家具の下に敷いているからその場で綺麗に清掃出来たらその方が良いかも知れないな。

タペストリーは・・・まあ、あれも古くなるとデリケートだから扱いに気を使うし。

とは言え、うっかり我々が作った魔具で絨毯やタペストリーが色落ちしたり解れたりしたら不味いから要注意だが。

まずは古い絨毯やタペストリーでも入手して、どんな汚れがあってどういう扱いなら問題無いかを調べてみるか」

アレクもシャルロの提案に乗り気なようだ。


「任せた!」

古い絨毯なんぞ、どこで入手するかなんて俺には分からん。


ネットで調べると意外と絨毯を洗濯機で丸洗いできるという記事が多い。

洗っちゃダメと言われていた理由を探さないと;


今年ももう終わりですね。

コロナで塗りつぶされた感じで忙しなく、どことなく不安感が強かった1年だった気がしますが、皆様はお元気にお過ごしでしたか?

来年もまた、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ポーランドの絨毯専門の洗濯屋さんが、昔ながらの絨毯を洗っている動画を観たことがありますが、土足で歩き回るヨーロッパらしい汚さで、恐ろしく大変そうでした。何種類も洗剤や高圧洗浄機などを使って、…
[一言] 今の絨毯は大概が工場製品なので縫製がしっかりしている。昔の絨毯は手縫いなので洗浄すると糸が切れたり、目が縮んだり、緩んだりするからかなぁ?
[気になる点] とばっちりの章が終わったなら、新しい年に入っていますし5年目で区切ってもいいのではないでしょうか。 [一言] 今年一年お疲れ様でした。 来年の更新も楽しみにしています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ