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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後4年目
608/1298

608 星暦555年 橙の月 9日 忠誠心?(9)

「この魔具は新規に出店してきた東大陸の商会が開店の挨拶の際に土産として持ってきた物なんだが・・・イマイチ言っていることが信じられなかったからここで働いている東大陸出身の人間数人に聞いたら、あちらではこれを使うのが常識だと言われてね。

どこの商会でも扱っていて、照明の魔具並みに普及している商品なんだそうだ」

ジャレットが携帯用通信機の携帯部分程度の大きさの魔具を見せながら言った。


「・・・それ程一般的なのに、使わないことに関して誰も進言してこなかったの?」

シャルロが首を傾げながら尋ねた。


「アファル王国の行政機関だから慣習が違うのだろうと思っただけらしい。

パストン島に進出しているアファル王国の商会に聞いて回った所、東大陸の人間を抜擢した商会ではこの魔具を使うことを強く勧められたと言われた。

それ程高い魔具でもないし、スパイ行為に対する心理的障害になるなら良いだろうという事でそこでは使っていると聞いて、うちも一応新規雇用の際には使っているんだ」

肩を竦めながらジャレットが答えた。


う~ん。

一応アファル王国の魔術院に渡された規制対象の一覧表に入っていたからこの忠誠心を植え付けるとか言う魔具は禁忌らしいが、滅茶苦茶一般的なのか??


それとも過去に流行りまくったせいで未だに対応策としての解除用魔具が慣習として使われているのか。


そもそも、この解除用の魔具が本当に効くのかも分からないしなぁ。


「よし!

ちょっとこれを貸してくれないか?

どうも東大陸で禁忌扱いされているけどそれなりに手軽に入手できる魔具に、忠誠心っぽいものを植え付ける精神汚染用の物があるらしいんだ。

こことシェフィート商会を視て回って汚染されている人間がいないか探すから、誰か該当者が見つかったらこの解除用魔具が機能するか確認してみるよ」


どこの商会でも売っているという話なら東大陸から進出している商会に行けば売っているんだろうが、取り敢えずジャレットが挨拶に渡されたこれが機能するかを確認しておくのも重要だろうし、試せたら一石二鳥と言うことで借りさせてもらおう。


ボーナス支払い時に使わなかったとなったら、誰か汚染されている人間がいるかも知れないし。


◆◆◆◆


「3人も・・・しかもそのうちの一人がダーファだったなんて」

行政府の出先機関全部を視て回った所、3人ほど精神汚染されているっぽい人間が見つかった。


一人はゴミ集めの下っ端、一人は普通の役人、そして最後の一人はジャレットの直属の部下の一人で中間管理職としてそれなりに責任のある仕事を任されている男だった。


これって誰かが狙ってやってるよな??

ゴミ掃除の人間だってどこの部屋にも入れるから情報収集には向いていそうだし。


取り敢えず、ゴミ掃除の人間にはちょっと廊下の静かなところで解除用魔具を使ってもらい、残りの二人に関しては会議室に呼び出して精神汚染を解除した。


ちなみに、この『挨拶で渡された魔具』。ちゃんと精神汚染の解除用魔具として機能した。


魔術回路を視たところ比較的簡単そうな構造なので、これだったらアファル王国の方でもそれ程時間を掛けずに生産できるだろう。


禁忌として指定しても規制しきれないせいで、割安な対応用の魔具を過去に誰かが開発して普及させたのかね?

この解除用魔具、比較的な単純な構造だけあって本当に精神汚染を解除するだけの効果しかない。


予防効果も忠誠心の上書き効果も無く、忠誠心を植え付ける訳でもないので本人が自発的に金に釣られて情報を売ろうと思ったらそれを止める効果も無い。


まあ、忠誠心を植え付ける効果なんぞあったら元も子もないか。

「どうせならこの解除用魔具に噓をついたら分かる魔術回路も付け足して『裏切り行為は働くつもりはありません』と誓わせるのも良いんじゃない?」


こんな単純な機能だけの魔具って微妙に勿体ないので思わず提案してみたら、アレクに首を振られた。

「嘘発見の魔術回路はそれなりに複雑だから一気に製造費が跳ね上がる。

まあ、併用した魔具も高級店だったら売っているかもしれないから参考までに東大陸で探してみても良いかも知れないが」


「第一、精神に作用する魔具は例え『嘘をつかせない』と言う比較的罪のない内容でも悪用の余地はあるから、アファル王国の法律では規制対象になりかねない。

だからそんなに気楽に職場で使わない方が良いだろう。

採用時だったらギリギリ許容されるかもしれないが、毎年ボーナス時に使うのなんて商業ギルドや王宮に異議の申し立てをされるレベルだ。

個室で魔具を上司が使うんだよ?

悪用して聞くべきではないような質問をする人間が絶対に出てくる」

ジャレットが更に付け加えた。


なるほど。

確かに、個室で上司が『嘘とつけなくする魔具』を使うとなったら色々悪用できそうだな。


悪用するつもりが無くでも、『自分の事をどう思うか』程度の質問で職場の人間関係がズタボロになりかねない。


本人は上司としての自分の仕事ぶりの正直な評価を聞きたいだけだとしても、不倫の希望とか吐き気がするほど嫌いとか、社会人として表に出さずに隠していた本音が出てきたりしたらヤバい。


別に『嘘をつけない』だけなのでバカ正直に本音を晒す必要は無いが、嘘が言えなくて慌てて本音が溢れる可能性だってあるだろう。


それはそれで面白いかもしれないが、職場の為には良く無いだろうし、もっとプライベートな事を聞き出そうとする上司が出てくることも予想できる。


そう言うのを悪用する人間が出てきたら、確かに雇用主側が訴えられそうだな。


しっかし。

アファル王国と比べて魔具が大幅に普及している感じでも無かったのに、東大陸ではなんだってこんな解除用魔具が普通に売られるほど禁忌の魔具が蔓延しているんかね?


聞いちゃいけなくてもちょっと好奇心で聴きたくなる質問ってありますよね。

嘘をつけない個室内だったらついつい聞いちゃうのが人間だと言う気がします。

しかも日常的に使っていたら、絶対に悪用する人間も出てきますよねぇ・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] 色々と悪循環ですなぁ。 …………まあ、この件が東大陸に伝わって「正式に抗議」されたら凄まじい政治スキャンダルになるかもしれませんが、主人公たちと読者にとっては「知らんがな」の一言ですが。 (…
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