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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院2年目
54/1266

054 星暦550年 青の月 28日 学院祭2日 本番

皆で何かをやり遂げるって言うのは楽しい。

団体行動ってあまり好きではなかったのだが、悪くないかも・・・と今回の学院祭で思えた。


◆◆◆



舞台の中央のベッドに横たわる老人と、見守る人影。

そんな風景がカーテンを上げた瞬間に観客の目に入る。


「ご臨終です」

ベッドの横で老人の手を取っていた男が宣言した。


と、ベッドに寝ていた老人(実はダレンが幻影で老けている姿だったり)が自分の幻影を下に残し、上に浮き上がっていった。

「死んだのか・・・」

ダレンの声が響く。

本物の『絹の踊り』ではこの老人役、デブなジジイなのだが、『ダレン様が太るなんて、許せない!』という女性群の強力な反発により、スリムでダンディな老人姿になっている。


「そうよ、もうよぼよぼの体で苦労することは無いの。さあ、天国へいらっしゃい」

うふふ~と笑いかけながら神の使いの恰好(と勝手に想定したピラピラな白いドレス姿)のタニーシャがダレンの周りの宙を舞って誘う。


おお~。

主に男性系の感嘆の声が観客席から聞こえてくる。

考えてみたら、別に神の使いが女である必要も、ピラピラとした色っぽい服を着ている必要もないんだけどね。ま、原作に忠実ということで。(笑)


「こんな老いぼれになったが、これでも昔は超一流のアクロバットと言われていたんだよ」

ダレンのセリフに合わせて、ベッドが舞台から退場、代わりに空中ぶらんこが現れる。

舞台の左から出てきた俺が勢いをつけてブランコへとジャンプし、一回転をしてブランコを揺らし始める。

反対側のブランコにはザビアが飛びつき、揺れている。

タイミングがあったところでザビアが手を離し、それを俺が掴んで後ろのブランコへと放り投げる。投げ終わったらその反動を利用してザビアが捕まっていたブランコへとジャンプ。


おおお~!

今度は男女比率半々ぐらいの歓声が聞こえてきた。


「見ててごらん!」

ダレンが声を上げ、年寄りの幻影を捨てて若い姿になって真ん中のブランコへ飛び移る。

きゃ~!と女性の甘い悲鳴が聞こえてきた。


はっきりいって、ダレンは卒業後、魔法剣士になるよりも役者にでもなる方が成功するんじゃないか?このファン層の厚さと熱意は凄いぞ。


そこからは俺、ザビアとダレンで空中曲芸。宙回転を入れたりひねったりバック転したり。

見た目は派手に、色々と。

ただ、ここだけで終わってしまうと魔術の披露という点ではあまりポイントを稼げないので適当なところで切り上げ、トランポリンへ。


前もって準備しておいて体感速度を上げておいた6人がトランポリンの上を先に自由自在に飛び回っている。舞台の上で飛んでいるだけだから魔術を使っていないと思われているかもしれないが、これが一番苦労したこと、分かってくれよ~。

ま、学院側には前もって使用している魔術は全部提出してあるから、教師陣にはわかってもらえているだろう。最初は一般観客にも分かって貰おうとパンフレットにも解説を載せようかと言う話になったのだが、『単純に楽しんでもらおう』という結論に纏まったので載せていない。


途中からブランコの後に術を掛けた俺とダレンも加わり、トランポリンの上で飛びながら肩車したりナイフ投げをしたりとちょっと危ないことをして、これも終わり。

観客の歓声を聞く限り・・・術の難しさうんぬんはさておき、楽しんでもらえたみたいだ。


次は女性陣。

ある意味、一番受けは良いかもしれないが一番不評かもしれない出し物だよなぁ、これ。

はっきり言ってあんなに色気満タンなものになるとは思っていなかったんだけど、女子生徒の親が見たら怒らないかね、あれ?


そんな心配をよそに、舞台の上では真ん中に大きな円柱の塔が現れ、それがぐるぐる回り始めた。

イリスターナがそれに飛びつき、足でぶら下がってみせる。そこへ今度はタニーシャがイリスターナの手を取って一緒に回り始める。

さらに3人ほどが塔に取りつき、舞台の前でそんな女性陣を見ているダレンに手を振ったり思わせぶりな身ぶりで誘惑しようとする。

ダレンは優柔不断に各女性に心を動かされ、誰の手を取るか選べず迷っている間に・・・。

「いい加減にしないか。もうそろそろ逝く時間だ」

今度は男性の神の使いが現れ、時間終了を宣言した。


が、それで諦めては男がすたる。

ダレンはどこからか(実際には舞台脇から投げたんだけど)剣を取り出し、神の使いを追い払おうとした。

剣技は素晴らしいものの、魔術(と言うのかね、神の使いの場合?)が圧倒的な相手に押され始めたダレンの元に、俺様が現れて後ろから神の使いに襲いかかる。


「この!」

俺の方を振り返った神の使いが術を行使している間に、後ろからダレンが近づいて頭を剣で殴りつけ、神の使いを倒してしまう。


ぱぁぁぁ!

と目晦ましの光が舞台に溢れ、視野が戻ったときには舞台には女性たちも神の使いの姿も無く、ベッドの上に年老いたダレンが寝ていた。

「・・・夢か・・・」

「あなた!」横にいた年老いた妻役のアリーシャがダレンに抱きついてキスをしたら、今までで一番大きな物凄い悲鳴が観客席から聞こえてきた。


おいおい。

そこに反応するか??


思わず皆一瞬あっけにとられたが、予定通り幕を下ろして終了。



楽しかった。

終わってしまったのが残念だ。

去年は舞台に立たなかったからそこまで感じなかったが、舞台の一体感と言うのは本当に楽しい。いつまでも続けばいいのにと思ってしまったよ。

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