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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院2年目
53/1290

053 星暦550年 青の月 28日 学院祭2日 『世界創造』

人間の考えることって本当に人数分だけある。

集団で暮らすことの利点って、防衛とか規模の経済とかよりも、何といってもアイディアの数が増えることにあると思う。


◆◆◆



去年の最優秀賞獲得寮ということで、グリフォン寮の出番は最後になる。

なので午前中は他の寮の出し物の見物だ。

最初にスフィンクス寮、次にドラグーン寮、その後昼食を挟んで俺ら。


それが終わったら最優秀賞の発表、そして打ち上げの大騒ぎだ。



朝一番のスフィンクス寮の出し物はありがちなコメディといったところ。

去年の俺たちのパロディのパクリに近いかも。

本人たちはそんなつもりは無いのかもしれないが、今人気の活劇を男女ひっくり返したコメディなんて・・・パクリだと以外考えにくい。

しかも出来は単に並といったところ。『二番煎じ』とか『パクリ』とか『真似っこ』といった言葉を吹き飛ばす出来だったらまだ救われたのにね。

観客の多くにもその思いがあったのか、拍手も微妙だった。


去年の今年じゃあ、真似は駄目でしょう。

スフィンクス寮の寮長はバカ確定。


本当ならば寮長になるというのは重要な責任であり、能力の証明であるのだが・・・今年のスフィンクス寮長は不幸にも観客の大多数に『バカだ』という印象をその名前に付与させてしまい、かえって寮長にならない方が本人の将来のためには良かったかも。

魔術学院の学院祭に来る観客なんて、殆どが魔術業界の関係者ばかりだ。

そこで『バカ認定』されてしまったのは痛いだろう。


ま、俺の知ったこっちゃ無いけど。


これから始まるのがドラグーン寮の出し物。

案内には『世界創造』と書いてある。


時間がきて、カーテンが開いた。

舞台の中は魔術で完全に何も無い闇が目に映るようになっている。

舞台の左前に解説係が姿を現す。

『始めはヴォイドがありき。

そこへ意思ビーイングが生まれる。

意思ビーイングはものを見るために光を生み出した」


舞台の上に光が発生する。

どうやったのか知らないが、光が球状にゆっくりと煌きながら動いている。『綺麗・・・』という感嘆の声が観客席のあちこちから聞こえた。


意思ビーイングは命の神ハレフと死の神マガフ、光の神ヨレトールと闇の神ルシャーナに分かれた」

ぼんやりと、人影のようなものが舞台に現れる。

どうやってあの映像効果を作っているんだろう?人間の存在感を打ち消し、その神の象徴を思わせる姿を作るなんて大したもんだ。

ただし、命と死に関してはちょっと難しかったらしくって神殿の象徴を拝借しちゃっているが。

光と闇はまだ具体的でやりやすいよな。

闇に関しては、わざと隣の光の神を使って周りをぼんやりと光らせることで闇を浮き上がらせている。良く考えてるねぇ。ほぉぉっと言う感じの感心した呟きが周りから聞こえる。


「4神は『世界あれ』と願った。これにより、大地と海、空が生まれた」

4柱の神の真ん中に巨大な地球儀のような映像が浮かびあがり、混沌とした表面から火山が噴出し、大地を作り海と別れ、やがて火山灰(なんだろうね、多分)が落ち着いて消えたら空が出来ていた。


「命の神が子を生み出し、死の神が均衡を保つ」

命のシンボルをつけていた人影がぶわっと動物の姿に変化して姿を消す。

ウサギや犬、猫、馬、牛、ありとあらゆる動物の影が現れ、舞台の上を歩きまわる。

子犬がトコトコと舞台を歩いて観客を和ませている間に、死の神が姿を消し、狼が鹿を殺すシーンが舞台に現れた。

「あのワンちゃん欲し~!」どこかの子供の声が聞こえて、一瞬観客席で笑いが響く。


良く出来てるねぇ、これ。


「光と闇の神が精霊を生み出し、世界に力を与えた」

炎が舞台を舞い、水が真ん中から噴き出し、舞台から木が生えて風にあおられる。その周りを火精、水精、土精、風精らしき姿がぼんやりと姿を見せ、宙を舞って消えていく。

おお~。観客席からは感嘆の声があちこちで上がっていた。


「こうして世界は創造された」

いつの間にか、舞台の上にはどこかの田園風景が出来あがっていた。

かなり精密な幻影だ。良く見ると、畑を耕している牛や野鼠を狙っているらしき鳥の姿まで見える。


「我らの役目はこの世界に精一杯生き、均衡を崩さぬこと」


解説役が舞台の中央に出てきてお辞儀をした。


一瞬、何の反応も無かった。

微妙に、想定外な出しモノだったよなぁ。

だが、あの幻影は凄かった。なので本当は悔しいのだが、拍手をしてやった。

周りからもやがて拍手が一杯に広まった。


ちょっと世界創造の神話の解説みたいでお固かったが、中々見ごたえのある出しモノだった。

魔術の披露と言う意味では、正しい姿だったかもしれない。どうせならボランティアで街の子供にでも見せて回るべきだな、あれ。




これから昼食で良かった。

ちょっと観客が気分転換してくれないと、これの後でサーカスのショーじゃあ軽く見られちまう。

ま、どちらにせよ俺たちのは軽いエンターテイメントなんだけどさ。


ついこの間、書き始めたような気がしているのですが意外と溜まってきました。

過去に書いたものを読み直して誤字を修正しようとしているのですが、3話ぐらいやるごとに眠くなってしまって中々進まない・・・。


誤字に気が付きましたら、是非ご一報ください。

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