表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院2年目
52/1256

052 星暦550年 青の月 27日 学院祭初日(午後)

盗賊シーフギルドの中でも特に隠密が得意で、誰にも見られたことのない幽霊ゴーストと二つ名を持っていた。そんな俺だから、普通の攻撃よりは相手の裏を突く暗殺チックなことの方が得意だ。

それでもこんなところで魔術師の卵に後れを取るつもりは無かったが・・・ちょっと今回は完全にダレンに良いところを持って行かれたな。


◆◆◆



『野戦』は1チーム10人ずつで行う疑似戦争競技だ。

お互い陣地があり、奥にある旗を取られたら負け。

プレーヤーは頭に付いている『珠』を魔術で割られたら『死んだ』ことになり、退出となる。

自分の陣地を守りつつ、敵の陣地に攻め込み、敵の人数を効率的に削減しながら旗を取る。

個々のプレーヤーの戦闘能力とリーダーの戦術的能力がモノを言う競技だ。


ちなみにこの『珠』は正確に真中に魔術を通すと言う方法以外ではよほどのことが無い限り割れない。

なのでこの競技は何でもござれの異業種格闘技戦みたいな感じになる。とりあえず相手の動きを物理的に蹴ったり体当たりしたりすることで止め、その後に珠を破壊するのだ。

スピード重視なら珠は無視して単に物理的に相手のデフェンダーの動きを止め、その間に旗を取るというのもありだし。


フィールド全体に衝撃緩和の結界が掛けられているので大怪我する人間はあまりいないが、皆、それなりに思い切ってやっている。

考えてみたら、喧嘩慣れしていない魔術師の卵が、このフィールドでの怪我のない戦いが『普通』だと思って、酒場の喧嘩とかで同じ調子で相手を蹴ったり殴ったりしたらヤバいかもしれない。まあ、流石に素手で相手を殺してしまうレベルの腕がある人間なら、衝撃緩和の結界が無いところで思い切り相手を蹴ったり殴ったりしたらどうなるかは分かっているだろうが。


去年はフェンダイがリーダーとして指示を出すなかで、俺とダレンとでほぼすべての敵チームを壊滅させて旗を奪取した。最初から、他のメンバーは撹乱用でばたばた走り回っていただけって言う感じ。

今年は同じことはできないんじゃないかね?他のチームもそれなりに対応策を考えていそうなものだが・・・。


今年のリーダーとなったダンカンは『今年は撹乱は無しだ。どうせお前ら二人はマークされているだろうからな。だから攻めて攻めて攻めまくれ。旗の守備は残りのメンバーでやるから、どれだけ時間がかかってもいいから旗を取ってくれ』と言っていた。どんな戦術を考えているのだろうか?


考えてみたら、無茶だよな。

普通5分5分ぐらいで攻撃と守備を分担するのに、2人に攻め込ませて8人で守るって。

確かに攻撃の能力としては俺とダレンが一番効果的だろうが、他に何人かいることで向こうの守備を分散できるのに。

かなりきつくなりそうなんですけど。



「準備いいか?」

審判役の教師が声をあげた。


「おお~!」とフィールド中から声が上がった。


「開始!」

教師が旗を振り下げ、上空へと回避した。


ダレンが真っ先に飛び込んで行く。

あいつにとっては、この競技も都合のいい乱戦の訓練の一部というところなのだろうか?嬉々としながら木刀で周りの生徒を切り倒している。

おいおい。

珠を割ってくれよ。

去年は初めてのことだったのであまり周りを見る余裕が無かったのだが、基本的にダレンのスタイルって相手を物理的に倒して排除するっていうタイプなのね。珠は割らなくても、動けなければ実質『死んだ』のと同じという考えのようだ。

まあ、それに間違いは無いけどさぁ。


そんじゃあ、俺はダレンが倒した敵チームの連中の珠を割っていくか。

きっとそれが一番効率的な攻め方だろうし。


とりあえず、身近なところに倒れていた生徒の頭をつかんでこちらに向かせる。

珠を視て破壊点を見出し、そこに魔術を差し込む感じで術を発現させる。

「ブレアーク」

俺の指先から細い光が伸び、そいつの珠を貫き、破壊した。

しっかし。去年はダレンと同じで敵側のメンバーの首に手刀を落として気絶させて進んでいたのだが、今回は次から次へと襲ってくる人数が多くて、捌くのが難しそうだ。

俺はダレンほどの攻撃力はないからね。混乱したフィールド上でのどさくさ紛れっていうのが得意なのだが、周り中がこっちを狙っている状況ではちょっと動きにくい。


「おっと」

俺に向かってきたドラグーン寮の生徒の攻撃を避け、膝蹴りを入れて倒したが、珠を破壊できる前に別の守備係たちがずずっと近づいてきた。ダレンよりは楽な相手だと思われたんだろうなぁ。

「甘いぞ~」


からかうようににこやかに笑いながら後ろからタックルしてきた相手の上を飛び越え、ダレンにぶっ飛ばされた奴の元へ行って珠を破壊する。

心眼サイトは物理的な視点じゃないからね。前も後ろも関係なく、360度全部、視えるんだよ。

しっかし。

守備の人間が多い。

全部で10人しかいないはずなのに、ひっきりなしだぞ?・・・なんて思いつつフィールド上の人影を確認したところ・・・やはり人数が多すぎる。

おいおい。

一人も攻撃していないじゃないか!?!?


ダンカンが俺とダレン以外を守備に回したことに対応した攻略策なのか?

思い切ってるねぇ。


まあ、守備が8人のグリフォンのチームは中途半端な人数で攻め込んでも返り討ちにあうだけだろう。

かといって守備の人数を減らしたらあっさりダレンに突破される。

難しいところだね~。


だけど、10人でダレンと俺を止めるのには、無理があるんじゃない?


なんて思っている間に、前方で歓声が上がった。

あ。

もう旗を取ったのかよ?!


もう少し俺も活躍するつもりだったんだが・・・・。

失敗?


眠い・・・。

変なことを書いていたら、是非ご指摘ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ