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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
500/1294

500 星暦554年 桃の月 25日 どうしようか?(7)

ウィルの視点に戻りました。

シャルロが隠し金庫探し用の魔力探知機の試作品を渡したウォレン・ガズラート氏と、学院長が何故か一緒に現れた。


どちらも、試作品を渡した後に更にもっとよこせと言われて試作品を10個程度作って渡してからは音沙汰無しだったのだが・・・。


何で態々一緒に来たんだ??

しかも何やら俺達の試作品に手を加えたらしき物を手に部屋を調べているし。


だけど、ここは俺達の作った魔道具や面白いと思って買った魔道具が大量にあるから探知機を使っても引っかかりまくるよ?


「お主ら、魔道具を持ちすぎじゃ!

これでは何が何だか分からんでは無いか!」

案の定、あちこちで魔力を探知しちゃっている魔道具に、イラッとしたらしきガズラート氏に八つ当たりされた。


彼が手に持っている魔道具は俺達が作った試作品と違って筒がついていない。

良く見たら、俺達の試作品が魔力を吸収したら光るようにしていた部分に、細い針のような物が付けられていて、それが魔力に反応して動いているようだ。


なるほどね。

発光する魔術回路では無く、物を動かす魔術回路に繋げて、抵抗を最低限に抑えた細い針を動かす形にしたのか。

確かにこの方が筒の中を覗き込むよりも見やすいだろう。


「この部屋にある魔道具は、全部俺達が自分で買ってきたり、製造して使っている物ですよ?」

何を探そうとしているのか知らないが。

俺がいるのだ。

見覚えが無い魔道具があったら直ぐに分かる。


ため息をつきながらガズラート氏が座り込んだ。

「まあ、そうじゃな。

お主らの家に盗聴する魔道具を付けるほど、情報が漏れていない可能性が高いだろう」


盗聴する魔道具??


「先日、シャルロに渡された試作品をついでがあった第3騎士団の副団長の部屋で金庫探しに使ってみたら、そこに仕掛けられていた盗聴用の魔道具を発見したのじゃ。

シャルロから更に試作品を貰って情報部や商業省、魔術院、王宮など機密とされる情報が扱われる可能性がある場所を探しまくった所・・・そこそこの数の盗聴用の魔道具が見つかった」

ガズラート氏が小さな箱型の魔道具を机の上に出しながら説明を始めた。


盗聴用の魔道具ねぇ。

視てみたら、それなりに強力な魔石が入っている。これなら金庫よりも探知しやすいだろう。

中の魔術回路はシャルロが作った相対用の長距離通信機に近い感じかな?


「魔術院の研究室長に極秘で調べさせた所、一方通行で音を拾うだけの機能にしたかわり、魔力の消費量が抑えられ、使用出来る距離が伸ばされた通信用魔道具の一種だと言っていた。

この国で開発した物を改良したのか、それとも独自に開発したのか知らないが・・・どうやらどこかの国が、アファル王国の情報を集めることに非常に力を注いでいることが分かった。

この盗聴機は常時音を拾っているので、それなりの頻度で入れ替えねば魔力が尽きるとの話だ。数ヶ月のうちに、どこのだれがこれを仕掛けたのかも判明するだろう」


へぇぇぇ。

盗聴ね。

携帯用通信機を作った際にもそれを密かに置いておけば盗み聞きが出来ると心配したことはあったが、回路を開きっぱなしにしたらあっという間に魔石を使い切ってしまうので現実的には心配する必要は無いだろうという話に落ち着いたのだが、どうやらそこら辺の問題点をどこかの誰かが実用的なレベルまで解消したのか。


しっかし。

それなりの数が見つかったようだが、それの魔石交換に現れる人間を待ってこれからずっと見張るのかね?

魔石が切れそうなのを選んで見張るんだろうが・・・頑張ってくれってところだな。


「先日の転移箱の盗難から考えて、ザルガ共和国が裏にいるのではないかと情報部では考えているが、それに関しては対策はこちらでやっていく。

問題は、この魔力探知機が盗聴機の発見に非常に役に立つこと、そしてこの探知機の存在をザルガ共和国に知られては効果が半減するという所にある」

シャルロが注いだお茶を受け取りながら、ガズラート氏が続けた。


なるほどね。

盗聴機が見つかったと知られないようにして偽の情報でも掴ませるつもりなのかな?


・・・と言うことは、この魔道具は国が買い上げて魔術回路も公開するなというところか。

学院長が一緒に来たのは人材発掘の方の魔力探知機に関する話絡みかね?


目で尋ねてきたアレクに俺とシャルロが頷いたら、アレクが俺達を代表して答えた。

「我々としては、出来れば魔術回路を登録して特許料を受け取りたい所ですが、先日の転移箱の騒動でも明らかになったように魔術院の防犯対策は完璧ではありませんですからね。

軍部なり王宮の方でこの魔術回路を秘匿したいと言うのでしたら、それなりの代償を払っていただけるのでしたら魔術回路の権利をそちらへお譲りします」


ガズラート氏が頷いた。

「うむ。そう言って貰えると助かる。

アファル王国としては入手した盗聴機を複製してこちらも活用しようと思っているのでな。

その為にはこの魔力探知の魔術回路が他国の手に渡っては困るのだ」


「・・・人間でも魔道具でも、魔力を発しているのを探知するのは同じなので、学院長に先日お預けした試作品の魔術回路も殆ど違いはありません。

あちらでの使用は諦めるのですか?」

学院長の口ぶりでは、全国の市町村に配布する予定のよう感じだったから、例え特許料を最小限に抑えてもそれなりの売上になる見込みだったんだけどなぁ・・・。


学院長がため息をつきながら飲んでいた紅茶のカップを降ろした。

「本当のところは今年中にがっつり量産させて来年から配付したかったのだが・・・ウィルが言うように、魔術回路はほぼ同じだからな。

誰かが魔力探知という能力に目を付けたら盗聴機の探知への流用は直ぐさま出来るだろう。

しかも、魔術院の方の使用方法では使用者を制限することが難しい。

全国にばらまいた物を他国の諜報員が欲しがったら入手を防ぐのは不可能だ」


「残念ですね。

機会損失として、魔術院にこの魔術回路を売れないことによる損失分も補償していただけるのですよね?」

アレクが穏やかにガズラート氏に尋ねた。


「いくら情報部や重要機関の警備責任者だけに使用を制限して機密を保つよう頑張ったところで、数年経てばこの探知機の情報は漏れるだろう。

そうなったら地方での魔術師の卵を探すのにこの魔術回路を使っても構わん。

情報が漏れるまでは毎年、使用料に相当する費用を王宮が払うと言うことで良いかな?」

ガズラート氏がにっこりと笑いながら答えた。

・・・イマイチ笑顔が似合ってないぜ、おっさん。

シャルロの親戚にしては、微妙に悪人面なんだよなぁ。


それはさておき。

半永久的に魔術院の使用を禁止するんではどれだけ機会損失分の補填に金を払わなきゃならないか分かったもんじゃないが、どうせ暫くしたら情報っていうのはどれだけ頑張っても漏れるもんだと諦めて、情報が漏れるまでの間の口止め料モドキに特許料相当の金額を払ってくれる訳か。


まあ、良いんじゃないか?

しっかし。

あまり使い勝手が良くないとという結論に至ったこの魔力吸収の魔術回路だが、魔力探知という使い方では想像以上に需要があったようだな。


うむうむ。

俺達が頑張ったのが報われて良かったぜ。

試行錯誤に掛けた時間は魔力吸収としての使い方の方が圧倒的に多かったが。


・・・ちなみに、魔石補填用の魔道具としての使用はもう最初から除外してるのかな?

まあ、どうせ大した効用はないからねぇ・・・。

魔術回路の漏洩リスクを考えたら態々使うほどの事も無いんだろうなぁ。


あれだけ頑張ったのに、ちょっと切ない。



盗聴機の探知機として凄く需要があることが発覚。


でもまあ、盗聴機と探知機の両方が行き渡ったらどちらもあまり使わなくなって昔通りの諜報活動に戻るんでしょうねぇ・・・。

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