497 星暦554年 桃の月 16日 どうしようか?(4)
「な~んか、無理矢理魔力を吸わないから危険はないのは良いんだけど、魔石の充填道具とか動力の要らない街路灯としての使い方とかは微妙そうだねぇ」
朝食を取りながら開発の方向性について相談していたら、シャルロがため息をつきながら伸びをした。
そうなんだよなぁ。
使えなくは無いけど態々使いたがる人が居るかちょっと微妙な感じ。
「取り敢えず、まずは学院長に魔石充填機として買わないか、持ちかけてみるか。
こりゃあ購入先をちゃんと手配してからじゃ無いとシェフィート商会だって買い取ってくれないだろ?」
一般人が相手では充填出来る魔力が小さいから稼ぎが小さくなる上に、下手したら家の魔道具が早く消耗するし何か思いがけない問題が起きるかも知れないから、出来れば暫く魔術学院で使って貰って想定外な問題が出てこない事を確認してから他にも売れないかシェフィート商会に頑張って貰いたい所だ。
「ちょっと疲れる感じがするから、牢獄とかにつけても良いかもしれないけど・・・やはり費用効果的に微妙だよねぇ。
しかも牢屋の固定化の術を弱めちゃったりしたら困るし」
シャルロがため息をつきながら付け加えた。
「殆どの牢獄は外壁に直接面していないから固定化の術を使っていないとは思うが・・・費用効果的に初期投資が高くて購入を見送られる可能性は高いだろうね」
アレクがため息をつきながらシャルロのコメントに修正を加えた。
「まあ、考えてみたら囚人が変な魔道具を密かに運び込んでいたり実は魔術が使えるなんて場合に、それを阻害する効果が多少はあるかもだけどな」
明るい面を見ようと言ってみたが・・・まあ、あまりそう言う事例ってないだろうな。
第一、これは魔道具の消耗を多少早くする程度で、脱獄するための魔道具を実際に持ち込まれていたらこの魔石充填機のせいでそれが消耗して壊れるより先に脱獄されてしまうだろう。
「取り敢えず、ウィルが学院長に売り込みに行っている間に、こちらは魔力探知機としてもう少し見やすく出来ないか、試してみよう」
立ち上がりながらアレクが提案した。
そう。
魔力探知機として吸収した魔力を発光する魔術回路に繋げた簡単な探知機自体は昨日の夕方に試作してみたのだが・・・結果は微妙だったのだ。
まず、魔力をかなり放出するタイプの強力な結界でも張っていない限り、瞬間毎に吸収される魔力は微々たる物なので発光する魔術回路に繋げても発せられる光はかなり弱い。
発光では無く移動の魔術回路を使って、魔石をつかった発光回路を起動する形にしたらもっと見やすく光らせることは可能なのだが・・・どちらにせよ、結界なんぞの探知機なんて殆ど必要ないだろう。
固定化の術程度でも光るぐらいに繊細に作ると今度はちょっと魔力が強い人間が横を通とるだけで下手したら光ってしまうのだ。
まあ、税務調査とか軍の情報部の調査には魔力が殆ど無い人間しか参加しないと想定したら大丈夫かも知れないが・・・。
何とも微妙だ。
カーテンを閉めて真っ暗にした部屋でパディン夫人に直接発光回路に繋ぐタイプのを試して貰ったところ、固定化の術が掛っている積み木を一応他のガラクタから選別できたけど・・・真っ暗にしないと使えない探知機というのもねぇ。
「少なくとも魔力がある子供を見つけられる探知機としては使えると思うから、それをちょっと実用的なレベルまでちゃんと調整してから神殿の授業にでも顔を出して実験させて貰おう。
後は・・・こないだの国税局の調査員の人にでも話を聞いて、どんな感じの探知機だったら使い道があるか、聞いてみる?」
シャルロも立ち上がりながら言った。
そうだな。
もしかしたら調査員からどんな探知機が欲しいか聞いたら何か実用的な改造方法が思いつくかもだし。
「頑張ってくれ」
微妙なままですね~。
取り敢えず、次回は学院長の視点の話になる予定。