494 星暦554年 桃の月 5日 どうしようか?
前回から続く流れですがメインの内容が変わるのでタイトルも変えてます。
金貨10枚の出費は痛いが、魔石へ魔力を集める機能の吸収源として精霊を排除できないのだったらこの魔道具の改造は諦めて破棄するつもりだった。
魔道具の魔術回路を俺が心眼を使って読み取り紙に書き起こした後、魔術回路の一部を削ったり変更してみた試作品を作りまくったところ、幸いにも精霊から魔力を吸収しない魔術回路の形成に成功した。
成功したのだが・・・。
「第一段階が成功したのは良いんだけど・・・この後、どうしようか?
どんな魔道具だったら売れると思う?」
出来上がった試作品を前に、俺達は悩んでいた。
「う~ん、空気中とか魔術師の体から漏れている余剰魔力だけを吸収するように出来たらちょっとした小遣い稼ぎやお手軽な魔石の再充填に良い道具だと思うけど・・・小遣い稼ぎ程度の物に魔道具を買うだけの価値があるかは微妙だよねぇ」
シャルロがちょっと体を傾けながらため息をついた。
魔石だってそれなりの値段で売れる。
だからそれなりに悪くない小遣いにはなるが・・・なんと言っても魔道具って製作するのにそれなりに金が掛るからなぁ。
魔術回路はどうしても精密かつ正確でなければならない為、製作にはそれなりの熟練の腕を必要とするし魔術師による試運転がどうしても必要になる。
なので機能が何であれ、魔道具ってそれなりの値段になってしまう。
そうなると・・・態々そんな魔道具を買うよりは直接空の魔石に魔力を充填させれば良いだけだと思う魔術師が多くなるだろう。
第一、それなりに成功している魔術師だったらみみっちく小遣い稼ぎをしようと考えない可能性が高いし。
「魔術学園に売りつけたら、寮に設置して生徒の魔力を使って学園で消費する魔石を補充する手段として悪くないかも?」
アレクが提案した。
確かに、魔術学院ではそれなりの量の魔石を使う。
その経費を削れるのは、悪くはないだろう。
魔術学院の生徒達だったら垂れ流す魔力の量は少な目かもしれないが、少なくとも自力で魔石を補填するのは最終学年ぐらいにならないと難しいので魔道具が無駄という訳では無いし。
「魔術学院が寮で使うとしたら、生徒の両親や魔術院から承認を先に得ておかないと大変な騒ぎになるかも知れないけどね」
小さく笑いながらシャルロが付け加えた。
「確かにね~。
小さな照明の魔道具とでも組み合わせれば魔力探知機みたいな魔道具を作ることも可能だろうが・・・下手に使いすぎると探知している対象の魔力を吸収しきってしまうかもしれないからちょっと微妙な気もするんだよなぁ」
散々今までにも隠し場所探しに協力を求められたのだ。
隠し金庫などの固定化の術を目当てに探すと手っ取り早いことを考えたら、魔力探知機を作ったら税務調査員や軍の情報部とかが欲しがるかも知れない。
ただそんな特殊な職業相手だけに売るのでは数がさばけないからなぁ。
もっと普通の使い方として、建物の固定化の術の強度をテストするのとかに使っていたらこの魔道具で魔力を確認させるたびに魔力を吸い取られて術が弱体化するという本末転倒な事になりかねないのが心配だ。
「勝手に魔力を再充填してくれる街路灯とかも良いかな~と思ったんだけど、街路灯本体の固定化の術も弱めちゃいそうで心配だよね」
シャルロが頷きながら付け加えた。
下町にある実際に火を灯すような街路灯ならまだしも、町の中心地や貴族街にあるような魔道具の街路灯は嵐が来る度に倒れたら困るので、どれもそれなりに強固に固定化の術が掛けてある。
その固定化の術を弱めてしまうのでは魔石を節約しても総合的な出費は却って増えてしまうだろう。
「下手に魔力吸収の効率をあげたら、問答無用で魔力を提供したくない人間からも魔力を奪い取りかねないのも怖いしね」
ため息をつきながらアレクが呟く。
そうなんだよな~。
色々と使い道はありそうな気はするが、弊害も多そうでちょっと怖い。
「・・・どうしようか?」
どういう使い道にするか、悩んでます。