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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
490/1301

490 星暦554年 橙の月 21日 相談?(2)

ウィルの視点に戻ってます。

「そう言えば、同じ学年にパラティア・サリエルっているだろ?

そいつのスポンサーも俺なんだけど、どんな感じでやってる?」

幾ら同じ学年とは言っても、何かのクラスで一緒に組んだとでも言うので無い限り親しくしているとは限らないが、確か寮も同じだったはずだから一応それなりに認識はしているはず。


いまだにあのやたらと『女』を前面に押し出したスタイルなのだろうか?


「パラティア?

別に普通だと思いますが?

一般教養は俺よりも成績は良いですが、体を動かすのはちょっと苦手みたいですね」

肩を竦めながらアルヌが答えた。


お?

特に悪い印象は持っていないみたいだな。

「それなりに親しくしているのか?」


「まあ、寮も同じですから学院祭の時には色々と一緒に作業しましたよ?

何故か他の商家出身の生徒とはあまり仲良くしていないようですが、それ以外の生徒とは普通に付き合っているし、授業のグループとかでも問題無く一緒に作業していますね」

アルヌは何で聞かれるのか微妙に分からないと言った顔だ。


へぇ~。

商家出身の生徒からは遠巻きにされているようだが、意外とまともに周りと付き合えているんだな。


まあ、去年も自分のスタイルはまだ背伸びしすぎで似合っていないと自覚したようだったから、もっとまともになったのかな?

「そうか。

まあ、何かもの凄く困っているっぽかったら一声かけてやるか、俺に連絡を入れてくれ。

一応スポンサーとして何か出来るか聞いてみるから。

アルヌも何か困ったことがあったら遠慮せず声を掛けてくれよ。俺ももう少し会いに来る頻度を増やすよう努力するし」

少なくとも、来年の学院祭には来る様にしよう。



◆◆◆◆


「お久しぶりです」

部屋に入ってきたパラティアは、別人かと思うほど印象が違った。


「お・・・おう、久しぶり。

元気にしているか?」

ひえぇ。

ちょっとガキには早いだろ~と思っていた化粧を落として、服装を大人しくするとこんなに女の子って印象が変わるのか。


娼婦が朝と夜でまるで別人なのは知っていたが、ガキでもこんなに変わるとは知らなかった・・・。


魔術学院に居た頃の同級生が着ていたような服を着て、髪も何やら捻ってふわっと丸めて後ろに結んであるだけにしているパラティアは、ごく普通な魔術学院の生徒の1人に見える。


去年のあのどぎつい『女の小型版』という感じではなく、単に『女の子』に変身した感じだ。

確かにこれなら普通に魔術学院でもやって行けそうだな。


「ちょっと今年は年初からバタバタしていて声を掛ける暇が無かったんだが、魔術学院で学び始めてどんな感じだ?

俺に助けられるかどうかは知らないが、何か困っていることがあったらスポンサーとして相談になら乗るぜ?」


お茶を注ぎながらパラティアに席を勧める。

アルヌと話し終わった後に食堂に行ってお茶セットを借りてきたのだ。

アルヌにはお茶を出し損ねたが、まあお土産の焼き菓子を持ってきたのだから良いだろう。


・・・パラティアは別に焼き菓子ぐらい自分の家から入手しているだろうと持ってこなかったが、こういう場合って両方にお土産を持ってこないと本当はいけないのかな?

でもまあ、明らかに2人の経済的環境は違うんだから、同じ扱いは必要ないよな??


「ありがとうございます。

そう言えば商業省の依頼で新規航路の開拓に関与していたという話でしたよね。

その後も色々あったと聞いていますし、アルヌにも会っていないようでしたのでお忙しいのでしょうねぇと思っていましたわ」

あっさりと頷きながらパラティアが答えた。


お~。

情報網は流石だね。


相変わらず言葉使いは丁寧だが、前よりはずっと普通な感じで抵抗を感じないな。

イリスターナ達が学生の頃ってこんな話し方はしていなかったが、それは俺が同級生だったからで、スポンサーとか外部の大人にはこういう話し方をしていたのかなぁ?

確かに学院祭の時には激変して驚いたが。


・・・考えてみたら、学園祭の時に化粧したあいつらも化けてたよな。

そうだ、女っていうのは若くても化けるんだった。忘れていたよ。


「まあ、色々と忙しかったんだが、やっと落ち着いたんでね。

何か困っていることとか聞きたいことがあるか?」

まあ、パラティアの場合はアルヌほど就職が切実ではないからまだ特に悩みなんぞ無い可能性が高いが。


そんなことを考えていたら、パラティアが紅茶に軽く口を付け、小さく咳をしてから背筋を伸ばした。


おや?

何か悩み事があるのか?


「魔術の授業や実技に関しては特に問題はありませんし、授業に関する相談事は必要に応じてその都度先生に聞いています。

ただ、将来的にどうするべきかと言うことが気になっていまして。

商家出身の魔術師がどうするのか、もう少し知りたいと思っても商家出身の生徒はどうも私を避けているようで話がしにくくって・・・。

ウィル様はアレク・シェフィート様と仲が宜しいのですよね?

何かご存じでしたら教えていただけません?」


えぇ~。

こいつも将来の心配かよ。

どいつもこいつも、1年目の生徒だと言うのに先のことを考えすぎじゃね?

もっと気楽に学生時代を楽しめよ・・・。


ちなみに、同じ神殿での魔力テストで見いだされていますが、パラティアは神殿で授業など受けずに家で家庭教師に教わっていたのでアルヌとパラティアは魔術学院に来るまではお互いのことをほぼ知りません。だからアルヌは変に身構えずに普通に友達づきあい出来ています。


ウィルだって自分が魔術学院に入った頃は将来の金稼ぎのこととかにかなり気にしていたくせに、自分で稼ぐようになって余裕ができたらそんなことを忘れ、『学生時代をもっとのびのびと楽しめば良いのに~』とちょっと暢気に考えています。

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