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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
469/1294

469 星暦554年 黄の月 5日 転移箱(2)

顔を潰されちゃった学院長の視点です。

>>>サイド アイシャルヌ・ハートネット


「今回のことは軍部から話を聞いた外務省の役人が先走りしたらしい。

済まなかった。

アイシャルヌの顔も潰してしまったと知って何人か退職願を出してきたよ。

役人の首が幾つか転がった程度で済む問題では無いと思うが・・・どうしたら手打ちにできる?」


王太子から連絡が来たので王宮に行ったら、謝罪された。

まあ、謝罪というか謝罪したい相手との仲裁?


一体何が起きているんだ?

「殿下。

何の話か分からないのですが。

私の顔が潰されていたのですか?」


取り敢えず尋ねてみたら、王太子が顔をしかめた。

「・・・何も聞いていないのか。

謝罪したのに相手にされなかったと私の所には泣き付いてきたのだが」


どこの誰だが知らぬが、随分と気軽に王太子に泣き付いているな。

謝罪された記憶なんぞないぞ??


「・・・先日、私の教え子が依頼を請けてくれないので説得してくれという話が軍部から来ましたが・・・戦時でもないのに嫌がる教え子にこれ以上協力させる気は無いと答えましたが、その件ですかな?

確かに何やらむにゃむにゃとよく分からないことを言っていましたが、一体彼らは何をやったのです?」

謝罪するんだったら『申し訳ない』とはっきり言うべきだろうが。

いい年した大人が、謝罪かどうかも分からないようなあやふやな言い回しで誤魔化そうとするな!!


王太子がため息をついた。

「アイシャルヌの取っつきが悪すぎるのも問題なのではないか?

王太子に泣き付く方がお主に土下座するよりも楽だと思われているなんぞ、問題だぞ」


王太子が甘すぎるんだろうが。

泣き付けば助けてくれるなんて下に舐められているのでは、将来の王として不安だぞ。

「土下座されれば流石に私とて謝罪されたと分かりますよ。

それをする気も無いのに謝った振りをして頼み事をしようとする方が悪いのでしょう。

王太子もあまり甘い顔を見せてはなりませぬぞ」


大きく息を吐きながら王太子がソファの背に体を投げ出した。

「ザルガ共和国との安全保障と交易に関する協定を新しく結ぶのは私が責任者となっている。

私のために先走りましたと言われたのであまり深く追求しなかったのだが・・・点数稼ぎに走りすぎて特級魔術師の顔を潰した上に、私を騙そうとしたというのは許しがたいな。

後できつく詰問して罰も科しておこう。


取り敢えず。

何が起きたのかというと、お前が軍部と王宮の方に尋ねた転移箱の件だが、『この交渉のために是非とも必要だ』と外務省の人間が騒ぎ立て、軍部の人間に開発を急がせるよう依頼したらしい。

で、軍部の方は魔術院に至急その開発に取りかかるよう依頼した」


転移箱の開発を魔術院に依頼した???

私(というか実際にはアレク達になるが)に一言の断りも無く??

「開発のアイディアを横取りしたのですか。

随分と馬鹿にしてくれますねぇ」

思わず声が低くなった。


びくっと一瞬体を硬くした王太子がため息をついた。

「交渉をより正確に、素早く進めるためには不可欠な道具だと思ったと言っておる。

私が交渉の責任者である為に打てる手は全て打つべきだと思ったとのことだが・・・それでアファル王国に数人しかいない特級魔術師の顔を潰すとは、気が知れぬな。

もしも交渉がこじれて争いになった際にお主にそっぽを向かれたらどうするつもりだったかこちらも聞きたいところだ」


「まあ、彼らの言い訳はこの際どうでも良いですが・・・それとウィルへの依頼がどう関係するのです?」

まだウィルへの依頼の話をせずにぐにゃぐにゃこちらに言い訳に来たら、何しに来たのかとちゃんともっと話を掘り下げて聞いたぞ。


「魔術院の方でそれなりに開発が進んで試作品も出来たらしいのだが、その試作品と最終版の魔術回路が消えたらしい。

盗まれたと大騒ぎしている所にお主の教え子達がちょうど魔術院へ転移門の魔術回路について尋ねに来たせいで、更に騒ぎが大きくなったらしいな。

まあ、そこの誤解は直ぐに解けたらしいが・・・折角だから下町に詳しいウィルとやらに試作品と魔術回路を取り返すのを依頼したいと言ったそうなのだが、けんもほろろに断られたと聞く」

何とも言えない顔をして、王太子が説明した。


おい。

アイディアを横取りしただけで無く、開発に取りかかろうと魔術院に来たウィル達に濡れ衣を着せようとした上で、更に探すのに協力しろと言ったのか???


信じがたいほどの面の皮の厚さだな。

「素晴らしい面の厚さですな。その厚さがあれば、攻撃魔術の直撃でも傷一つ付かないのでは無いですか?

次にどこかと紛争が起きたら、前線にそやつらを送り込んで試してみたらどうです?」


優れた開発者のアイディアを平気で盗ませ、その相手が怒って話を聞いてくれないとなるとちゃんと謝りもせずに王太子に泣き付くような奴らだ。

さっさと弾よけにでも使った方が良いだろう。


アファル王国の先が思いやられるな。


自分の顔が潰されたことよりも、ウィル(というか今回はアレクですね)のアイディアが横取りされた事に怒っている学院長w


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