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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
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468 星暦554年 黄の月 1日 転移箱

取り敢えず船造りの方は完成までまだまだ時間が掛りますが、ウィル達の関与は一段落付いたので転移箱に話が進んでます。

「君が盗んだのか!!!!」

取り敢えず俺達の屋敷船とそれと一緒に使う小型船の推進用魔道具の製作が大体終わったので(新しい小型船が完成するのにまだあと数日かかるし屋敷船が完成するのには数ヶ月かかるが、どちらも俺達が直接関与する必要は無い)、アレクがやりたがっていた転移箱の開発に取りかかるために、魔術院に来た。


学院長の話では転移門の部署かどこかに関係する魔術回路が保管されているとのことなので、それを求めて係員に話をしたのだが・・・。

突然、乱入者が部屋に飛び込んできたかと思ったら俺を指さして怒鳴りつけた。


「はぁぁ?」

盗賊シーフギルドのことはまだしも、俺が下町出身であることは周知の事実なので、何かが盗まれたら怪しまれる可能性は高いとは思っていたが・・・こんな風に突然見知らぬ男に怒鳴りつけられるとは思わなかったぞ。


「もしかして、転移門の魔術回路が盗まれて無くなってしまったのですか?」

アレクが落ち着いた様子で乱入者の後を慌てて追いかけてきた先程の係員に尋ねた。


「いえ、転移門の魔術回路は大丈夫です。

ですが・・・」


「しらばっくれるな!!!

僕の研究を盗んだくせに!!!!

今頃魔術回路を見せてくれなんてやってきて、後で素知らぬ顔で僕の研究結果を自分達の発見だと主張するつもりだろう!!!」

男ががなり立てる。


おい。

アレクとシャルロも共同開発者なんだぜ?俺はまだしも、ちょっとそれは酷すぎる言いがかりじゃないのか?


「転移門の構造を変えて持ち運べる転移箱の様な物を作成出来たら便利かも知れないとアイディアを出したのはこちらですが・・・いつの間にか、そのアイディアが勝手に他の人に使われていたとは知らなかったので、盗める訳がないと思いますね」

アレクが冷たく答えた。


どうやら俺が学院長に開発できるのかと聞いた転移箱のアイディアが何処かで漏れて、先に取りかかっていた人間がいたらしい。


まあ、魔術院に登録している魔術回路以外は保護されていないのだ。

まだ何も手を付けていないアイディアを使われてしまった所で文句は言えないのだが、流石にその為に基本となる転移門の魔術回路の情報の閲覧に来て泥棒呼ばわりされたらかなり不愉快ではある。


「嘘をつけ!!!

知っているんだぞ、お前は下町の・・・」

何やら失礼なことを叫ぼうとした男の頭を後ろから入ってきたハルツァが叩いて止めた。


「やめんか。

この3人は今までにもそれなりに人気のある魔道具を開発して成功しているんだ。新規航路の発見にも関わっていて人の物を盗む必要なんぞ無い。

明らかにこの3人が盗んだという証拠があるのならまだしも、そうでないのに相手の出自を理由に理不尽に濡れ衣を着せるなんて事は魔術院の職員として許されることでは無いぞ」


ほ~。

流石、俺達の無知につけ込んで手数料をだまし取ろうとした人はよくご存じだ。


「魔術院の方でも転移箱の開発を進めていたとは知りませんでした。

こちらとしては転移箱が入手できれば良いので、もう既に出来上がっているのでしたら無理に開発に携わろうとは思いませんが・・・どのような感じなのですか?」

アレクが穏やかにハルツァに尋ねた。


ため息をつきながらハルツァが席に座った。

若いのは係員が部屋から引きずっていった。

どうやらあいつがここに乱入してきたのは魔術院の意思ではないようだな。


「先月の頭ぐらいに王宮の方から転移門を改良して箱ぐらいのサイズにして持ち運べるようにした場合、何か危険なことは想定されるかと質問が来てね。

転移門を小さくすることで動かせるように使うという考えは今まで無かったので中々興味深いと我々の間でも話題になったのだが、色々話し合ってその機能として悪用される可能性はあるもののそれ以上の危険性は無いと思われると返答したら、出来ればその開発を急いで取り組んでくれとあちらから依頼があったのだよ」


おい。

王宮かよ、アレクのアイディアを勝手に流したの。

しかも先に魔術院に開発しろと依頼するなんて失礼にも程があるぞ。


「まあ、アイディアとしては面白いので先程のアズールやその他数名が取りかかってきていて、それなりに魔術回路を改良できてきたところだったのだが・・・先日、盗まれてしまってね。

まあ、途中段階の資料はそれなりに残っていたのでそれ程こちらにとっては問題では無いのだが、開発の状態を聞きに来た王宮の人間に盗難があったので少し遅れるという話をしたら、何やらあちらで大事になってね。

盗まれた魔術回路を是非とも取り返して欲しいと言われてしまったのだよ。

お陰でこちらも困ってしまっていてね」


おいおい。

それってつまり、王宮は盗んだのが他国の諜報員か何かだと思っているのかよ??

だとしたら魔術院にそれを取り返せと言っても無理じゃねえか???


「だからといって元々のアイディアを出した我々がやっと魔術回路の閲覧に来たら盗んだだろうと言いがかりを付けられても・・・」

アレクがため息をつきながら答える。


ハルツァもため息をついた。

「王宮の方は王宮の方で色々探しているらしいのだがね。

こちらにももっと何かしろと言われていて困っていたところだったのだよ。

まあ、先程のアズールは単に自分のアイディアを盗まれたと頭に血が上っていただけだが。

ところで、ウィルは下町にコネがあると聞いたことがあるのだが、本当かね?

ちょっと今回の件について聞いて貰えたら助かるのだが」


なんかこう、よく分かっていないのに適当に頼む奴って一番手に負えないよな。

分かっていて頼むならばそれなりに相場相当の報酬を払うのに、よく分かっていないから気軽に頼んで来る。

これで成功したところで後から報酬をくれるとは思えないし、かといって失敗したら王宮の奴らには『下町にコネのある人間にも頼んでみましたが駄目でした』って俺のことを言い訳に使うだろう。


冗談じゃない。


「流石に魔術回路を魔術院から盗み出すような知り合いはいませんので・・・。

それに、下町で暮していたのは魔術院に入る前までですからね。子供の遊び相手なんぞ、『コネ』というのも烏滸がましいでしょう」

取り敢えず取り繕って断っておいた。


何か嫌な予感がするなぁ・・・・。


学院長から転移箱のことを聞かれた王宮は、手っ取り早く都合が良い様に入手したいと魔術院の方に開発をそそのかしてました。

お金を払うような正式依頼ではないのですが。

魔術院の方も、『誰かのアイディアじゃないの、これ?』と密かに思いつつも、開発できたら中々実用性が高いと考えて乗ってましたw

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