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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
462/1294

462 星暦554年 緑の月 17日 俺達専用の屋形船(10)

「何ですか、これ??!!」

パディン夫人が庭に出て来て目を丸くした。

屋敷の裏の庭は普段は適当に運動をしたり試作品を試したりに使っていたのだが・・・今朝になって、大きな池を造ったので驚いたようだ。


まあ、そうだよね~。

アスカに頼んで2メタぐらいの深さで幅5メタに長さ30メタぐらいの穴を造って貰い、そこに蒼流が水を溜めて試運転用の小さな池を作ったのだ。

突然自分の家の庭に池を作る人ってあまり居ないだろう。

普通だったらそれが半刻で出来上がったりしないし。


「ちょっと小型船を動かす魔道具を造ってるんだけど、ちゃんと動くかテストするのに必要になったんだ。

後で元に戻しておくから、それまでは落ちないように気をつけてね」

シャルロがにこやかに答える。


まあ、テストと言ってもまだ小型船を受け取ったばかりで、魔道具も組み立て終わっていないし、外輪船に関しては実在する船を見せて貰うにもまだ船の持ち主を探してもらっている段階なのだが。


取り敢えず、昨晩受け取った小型船がちゃんと浮かぶことを先に確認しようということで朝食の後に池を造ってみたのだ。


浮遊レヴィア

シャルロが庭に置かれた小型船に術を掛けて浮かび上がらせ、水の上にそっとそれを落ろした。


「・・・取り敢えず、水漏れはないようだね」

暫し覗き込んでいたアレクが、誰にともなく言った。


「ついでに、1度手で漕いでみるか?」

魔道具開発が上手くいかなかった場合、手で漕ぐというのが現実的な選択肢なのかをまず調べておくのは悪くないだろう。


「そうだな。

このサイズだと二人が並んで漕ぐ形になるな。

言い出しっぺと言うことでウィルも手伝ってくれるよね?」

アレクがにこやかに櫂を手渡してきた。


まあ、シャルロよりは俺の方が握力も体力もあるだろうしね。

・・・アレクはどうなんだ?

あまり肉体派ではないと思うが。


取り敢えず、櫂を手に、船に乗り込み左側のベンチに座り込んで櫂を漕ぐ場所らしきところに設置する。

「櫂を使うとなると、小型の船でも意外と幅を取るね。

もう少し池の幅を大きくした方が良かったかな?」

シャルロが脇から俺達を見ながら首を軽く傾げた。


「櫂で漕ぐのは今回だけだろうから、別に構わないだろう。

まあ、どうしても魔道具と人力とを合わせないと行けないなんて事になったら考えてみようぜ」

現実的に考えて、小型船を自分の手で漕がなきゃならないとなったら、アレクはパストン島に来ないんじゃ無いか?

少なくとも、島には来ても周りの見物やなんかは俺かシャルロが居るときだけにする気がする。


まあ、それはともかく。

「じゃあ、やってみようぜ」

櫂を水の中に突っ込み、ぐいっと引いてみた。

一瞬、水が抵抗するような感覚があったが、次の瞬間船が回る感じに動き出した。


「あ、ちょっと待ってくれ」

アレクが慌てて櫂を引いたら今度は船が反対方向に回り始めた。


「おっと」

慌ててこちらも漕ぐ・・・のだが、中々タイミングが合わない。


「ちょっと一旦止めてくれ。

タイミングを合わせて漕ごう」

ぐいぐいと右や左へと回られると目が回って気持ち悪くなる。


船酔いって今まで経験したこと無かったのだが・・・それは単に清早や蒼流が船をスムーズに動かしてくれていたからだったんだな。


「じゃあ、僕が声を掛けるから3、2、1のゼロで漕いでね~」

シャルロがまったりと声を掛けてきた。


「・・・おう」

「ああ」


ちょっと船の方向を正してから、櫂を握ってシャルロの号令を待つ。


「じゃあ、3、2、1、ゼロ!」

シャルロの声に合わせてぐいっと櫂を引く。

船が動き始めたが・・・やはり真っ直ぐには進んでいない。

ちょっと俺の方で力を入れすぎているのかな?

少し力を抜いたら、アレクの方は俺に合わせようと力を強めていたのか、今度は船が反対側に進み始めた。


「ちょっと俺の方で力を強めるから、そちらはそのままやってくれ」

アレクに声を掛け、櫂を引く力を強めたら、やっと船が真っ直ぐに進み始めた。


が。

「意外と、進まない、もんだね」

櫂を漕ぐせいでアレクの声が途切れている。


「本当に、な。

これで、島の周り、を、漕いで、回るなんて、言うのは、厳しく、ね?」

俺の声も劣らず途切れっぱなしだ。


まあ、それでも小さな池なので何とか10ミルもしない間に向こう側に着いた。

その間に4回ほど側壁にぶつかりそうになったが。


櫂で池の側面を押して真ん中に戻ろうとした時なんて、一緒に横を歩いてきたシャルロをぶん殴りそうになってしまったものの、辛うじてシャルロが避けてくれた。


「う~ん、大分練習が必要そうだねぇ」

シャルロがコメントした。


「いや、練習するよりもさっさと魔道具を作ろうぜ」

漕ぐのに2人必要なのだったら俺かシャルロがいる可能性が高く、だったら清早なり蒼流に頼めば良いのだ。


もしもアレクが客としてきた誰かと小型船を動かすことになった場合、幾ら俺達がここで練習したってその客が上手く漕げなかったら小型船をあちこちにごちんごちんとぶつけることになるんだし。


パストン島を見つけた時には船員達が小型船で島の周りをすいすいと動き回っていたから比較的簡単なのかと思ったが・・・とんでもない。


魔道具は必須だな。



1メタ=約1メートルです。

5年契約で借りている家なので勝手に池を作るのは本当は駄目なんですが、ばれる前に埋めちゃう予定w

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