表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
455/1300

455 星暦554年 緑の月 6日 俺達専用の屋形船(3)

学院長に爆笑された。

「屋形船に自分達の個室だけでなく客室を4つに居間を2つ?!

シャルロならまだしも、お前とアレクまで随分と浮世離れした話をしているな」


今日は船を造ることを相談する専門家を紹介して貰うためにアレクがダルム商会に行っており、シャルロは家を造る大工について実家の執事に話しを聞きに行っている。

暇だった俺は最初にアレクが話していた移転の魔道具について聞くために学院長のところに来たのだが・・・。


学院長がお茶を淹れている間に雑談としてこれから造ろうとしている屋形船のことを話したら、こうなったのだ。


「え、屋形船ってことは屋敷とか館を船にしたような物なんですよね?

だとしたら客室4つと居間2つも特に不思議ではないのでは?

サイズだって、別に普通の中型船に納まりますし。

確かに掃除が大変かも知れないので、船その物は清早か蒼流に動かして貰うとしてもメイドか下働きの人間を雇う必要があるので彼らが泊まる部屋も更に必要だろうなぁと思っている所なんですが」


屋形船なんぞ優雅な物は下町には縁が無い。

だからアレクやシャルロがそう言う物についてそれなりに知識があると思っていたし、彼らが特におかしくないと思っているならシャルロが計画した寝室4つに客室4つもそれ程変ではないのだろうと特に深く考えていなかったのだが。


学院長が呆れたように笑った。

「屋形船は基本的に平屋構造だろうに。

しかもあれは個人で持つ場合は、子供が独立した年寄り夫婦が川や運河をゆったり船で移動して楽しむような物で、そんな自分の個々の部屋があるだけでなく客室まで多数揃えて外海に出るような物じゃあないぞ。

でなければ、半日程度水上でパーティをしながら景色を楽しむ為の会場としての船だ。

まあ、お前達の場合は水精霊が船の安定性も安全性も防水性も全部請け負ってくれる上に動かして貰えるから、風や水の抵抗やらも考えなくて済むので不可能ではないのだろうが・・・。

少なくとも、『屋形船』という言葉は語弊があるぞ。

この際、『屋敷船』とでも呼んだらどうだ?」


そうか。

屋形船って船の館というわけでは無かったのか。


まあ、ある意味屋敷を地上で造って、それを船の枠組みに移築するだけでも良い様なもんなんだけどな。

しかも、普通の家だったら雨漏りとかしないようにそれなりに手を打つ必要があるが、どうせ今回は清早か蒼流に水から守って貰うという前提条件の元に使う船だからなぁ。

他の部屋から音が漏れてきたりしなければ、かなり手抜き工事でも良いっちゃあ良いはずなんだ。

嵐が来たり風が強かったら、沈没船を王都に運んだ時のように水の中に潜って進んでも良いんだし。


ただまあ、確かに客室4つは多すぎかな?

シャルロの親戚ならまだしも、俺の知り合いやアレクの家族だったらそんなにノンビリ大人数で船旅に出られるほど暇では無いだろう。


アレクの家族だって家族や商会の人間で出かけたりするだろうが、俺かシャルロが居なければ動かせない船を借りるのはちょっと気まずいだろうし。


この点は後で3人で話し合う必要がありそうだな。

「あ~。

そうですか、ちょっと常識としての屋形船とは違うんですね。

船大工の人とかが目を回さないように、『屋敷船』とでも呼ぶようにしておきますよ。

それはともかく。

今日来たのは、アレクが書類や図面をやり取りできるような超小型の転移門・・・というか転移箱ですかね、を開発したらどうかな?と言い出したのですが、そういう転移関係の情報や魔道具って制限が掛っているんですか?」

魔術学院に来る前に魔術院に寄って魔術回路の記録を調べたが、転移門の魔術回路はざっと見た限り無かったんだよねぇ。


お茶の入ったカップを俺に差し出しながら、学院長がソファに座った。

「ほおう?

転移箱ね。

安全保障の理由から、基本的に転移門は各街の魔術院に設置することになっているから専門の部署が魔術院の本部にあってそこで転移門の魔術回路も保管されているはずだ。

人間が移動できないぐらい小さなサイズの転移門・・・というか転移箱となると安全保障上の問題は大分小さくなるが・・・王宮と軍部の方に確認しておく方が良いだろうな。

今度聞いておいてやろう。

その代わり、お前さん達の『屋敷船』が出来上がったら乗せてくれよ?」


「勿論です」

どちらにせよ学院長は招待しようと思っていたし。


「まだガルカ王国とザルガ共和国の戦争の騒ぎでバタバタしているので、直ぐには返事は貰えないと思うが。

そう言えば、王宮の様な警備対象は転移門が使えないように結界が張られているので転移箱も使えないはずだ。小さくするために魔術回路を弄くっている間に下手にその結界をくぐり抜けてしまうような魔道具を造ったら問題になるから気をつけるのだな」

お茶をゆったりと楽しみながら学院長が付け加えた。


おっと。

そんな結界があったのか。

それってどこでテスト出来るんだ?

一々試作品を王宮に持ち込んで使えないことを確認するのは面倒なんだけど・・・。

まあ、転移門の小型化が可能かすら分からないんだから、学院長から返事が来るまでは屋敷船に集中して、転移門のことは後で考えれば良いか。


ちょっと浮世離れしちゃった3人組w

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ