表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
452/1281

452 星暦554年 萌葱の月 29日 新しいことだらけの開拓事業(24)

「船乗りには水精霊の脅しがとんでもなく効くの~。

お陰であの船長も、洗いざらい全て吐いたぞい。

今回の襲撃の依頼主から私掠船の使う隠れ島、逃げるのに都合の良い浅瀬や海流のある地域、海賊同士の暗号や符牒まで何でもかんでも話すもんで、軍部の人間も同情して縛り首は無しにしようと言う話になったぐらいじゃ」

ご機嫌に笑いながらウォレン・ガズラートが教えてくれた。


結局、俺たちは他にも襲撃があったら困るからということであの後1月程パストン島に残ることになった。

ガルカ王国とザルガ共和国の戦いそのものは私掠船が来た3日後ぐらいにガルカ国王が敗戦宣言をしたことで終結していたんだけどね。

どうやらガルカ王国の将軍がブチ切れて、敗戦宣言しないなら首だけザルガ共和国に送り付けて終戦の交渉をしても良いと脅したらしい。


だが、『終戦したことを聞いていなかった』という名目で他にもザルガ共和国がガルカ王国の戦艦なり私掠船をどさくさ紛れにこちらに送りつける可能性があるということで、明らかに時期的に『終戦を知らなかった』とは言えないようになるまで警戒態勢を取ることになったのだ。


今回の私掠船に関しては、流石にいつまでもパストン島で無駄飯を食わせておく訳にもいかないし、強制労働をさせるにしても見張る人員が足りなかったので、『俺の偉大さを分からせてやろ~』という清早の提案に従って、マストから帆をはぎ取って4日分の食糧と水を入れて船に押し込み、送り出した。

帆が無いのに高速で海を滑っていく船の姿はかなり・・・微妙だった。


『どうせなら帆をはぎ取るんじゃなくってボロボロに切り裂いておけば幽霊船みたいだったのに』と後で笑いながらジャレットが言っていたが・・・まあ、他の船乗りの心臓に悪いだろうから、それはやらないでおいて良かったのだろう。


ちなみに、ちゃんと清早の言葉通り私掠船は4日で俺たちが沈没船を見つけた時に運び込んだ倉庫へたどり着いたとのことだった。

王都のどこに寄港させるかというのは清早に説明するのが難しかったので、既に知っている倉庫へ行かせたのだ。


「尋問する為に倉庫で待ち受けていた情報部の人間に、泣いて抱き着く勢いだったそうじゃぞ?

船長は王都に近づいた時点で船から飛び降りて逃げようとしたらしいが。

海の中を半刻ほど船の後をぷかぷか浮かびながら引きずられて、すっかり心が折れたようじゃったが」

俺にお茶と焼き菓子を出しながらウォレン氏が付け加えた。


ちなみに、今回呼ばれたのは俺だけ。

シャルロが留守だった時に襲撃があったから、直接関与した俺だけで良いと言われて呼び出されたが・・・絶対にそれってシャルロを荒事に近づけないための言い訳だろう?

確かにシャルロは荒事に向いていないとは思うが、俺だって向いてないんだ。

勧誘しようとしないで欲しいね。


「尋問がスムーズに進んで良かったですね」

焼き菓子に手を伸ばしながら短く答えておく。


「うむ。

今後、私掠船退治に是非手を貸してほしいと海軍が言っておったぞ。

あと、4日でパストン島から王都へ来れるなら普通に帆を使うよりも早いので、是非交易に参加しないかと商業省から伝言を受け取っておるが・・・どうだね?」


まあ、これには俺も驚いたんだよね。

人間が船を動かす場合は衝突や座礁の危険があるので余程急いでいるか、安全な何もないと分かっている海域を進んでいるのでない限り夜は錨を落として停泊する。

清早が動かした船は何かにぶつかる危険なんぞなかったから、1日中ずっと高速で進んでいたらしい。

どうりで4日分の食糧で十分だった訳だ。

俺が居る島を襲ったから少し飢えさせるつもりなのかと密かに思っていたんだけど、違ったようだ。


「交易にも私掠船退治にもあまり興味がないんで。

もうそろそろ本業の魔具の開発に戻る必要があるし」

肩を竦めて断りを入れる。

今回のように、俺が乗っていなくたって清早が船を動かすことは可能だ。

だが、俺が船に乗っていない場合は結局『どこに』船を停泊させるかという点が問題になる。

第一、それが問題でないとしても精霊に自分が乗ってもいない船を動かして金儲けに協力してくれなんて頼んだらバチが当たる。


軍も商業省も、今まで通りに人力で頑張ってくれ。


「ほおう?

今回の帰国は遊びの為の一時帰国ではないのかね?」

自分の焼き菓子に手をつけながらウォレン氏が聞いてきた。


「俺たちが手伝うことで効率が上がるような大掛かりな土木工事や治水作業はあちらで待機している間に終わりましたよ」

流石に宿屋や商店の運営に俺たちが口を出す必要はないだろう。

もう少しパストン島が補給島として軌道に乗ったら、アレクなんかは実家の商会が何を出来るかを見極めるために行くのも有りかもだが。


思った以上に今回の開拓事業には時間を取られたが・・・将来が楽しみだな。

時折遊びに行って発展の様子を見ることにしよう。


宿屋がちゃんと機能するようになったら一度シェイラと遊びに行っても良いし。

もっとも、パストン島に遺跡は無かったから一通り島を見終わったら東の大陸の骨董市に行くことになるだろうが。


かなり開拓から話が脱線しまくって長くなりましたが、やっと一区切りつきました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ