表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
441/1294

441 星暦554年 紺の月 29日 新しいことだらけの開拓事業(13)

軍部の人間に言われていた建物は直ぐに見つかった。

海賊モドキの島なのだ。見張りが立っている建物など殆ど無い。

目当ての建物は煉瓦造りの3階建ての屋敷っぽかった。

昔の領主か大手の商家の屋敷かね?

海賊モドキの身代金ビジネスにスポンサーがいるのだったら今でも何処かの大手の商家の持ち物かも知れないが。

中々立派な、一見商家かどこかのギルドの建物のように見えるが、よく見たら全ての窓に鉄格子が付いている。


さて。

どうするかな。

残念なことに見張りの立っている場所がそれなりに人通りのある道から見える場所なので、こいつを術で眠らしてしまう訳にはいかないようだ。

偶に通る通行人は見張りに明るく声を掛けているし。

軽い食べ物を提供している人も居る。

身代金目当ての人質というのは島にとって重要な収入源だから、住民も協力していると言うところかね?


見張り用の椅子すらないが、この調子だったら例え椅子があっても見張りの頭が垂れていたら直ぐに通りがかりの住民に揺り起こされそうだな。


しょうが無い。

どこか目立たない窓から鉄格子を外そう。幸い、全ての窓が道に面している訳では無いので何とかなりそうだ。


ざっと建物の周辺を見て回り、見えにくい場所にある窓を見つけて浮遊レヴィアでそこまで上がって鉄格子を固定しているネジに油を差す。


人質を拘束する目的では無くても、貴重な美術品や宝石、貴金属を置いている建物の中には鉄格子をしてあるような建物もある。だが、大抵の場合は鉄格子を外すよりは使用人の振りをして紛れ込む方が楽だ。それでも時間的制約や使用人の数が少なすぎて紛れ込めない場合もあったが。以前の職業の時にも鉄格子を外したことはあったが、今回は浮遊レヴィアが使える上に成人男性の握力で取りかかれるので、大分楽だった。

やはり握力というのは重要だね~。


・・・とは言え、考えてみたら一々ネジを外すよりも、分解ブレクアの術を使った方が楽だったかな?

まあ、鉄格子そのものが分解されてしまっては困るから、今回はこのままネジをはずそう。


幸いにも、見張りが見回りに来る前に鉄格子を外せた。

静かに中に入り込み、ネジを2つほど軽く締めて鉄格子を見た目には元に戻しておく。

これだったらもしもの際には蹴り破って外に出れる。

まあ、出来れば情報だけを得て、誰にも来たことを知られずに静かに出て行きたいところだが。


家の中にはかなりの人数が寝ていた。

一部屋につき平均6人というところか?

もっと雑魚寝で大量に押し込まれている部屋や、一人部屋もあるが。

それなりに捕まえた人間の財力を鑑みて扱いも変わるんだろうな。

それとも身代金の支払に合意したか否かが関係するのか?

しっかし、思っていたよりも沢山の人間が身代金目当てに拘束されている。

今まで海賊も私掠船も縁が無かったから深く考えたことは無かったが、もしかしてあいつらにとって身代金というのは重要な経済活動の一環なのかね?


まあ、それはともかく。

家の中を視て回った所、馬鹿兄貴は3階の6人部屋に居るようだ。

幸いにも建物の中は1階に見張りらしき2人組が居るだけだった。

音を立てずに階段を上がり、馬鹿兄貴がいる部屋の前にたどり着く。

「眠れ《スレプト》」

静かに、だがそれなりに魔力を込めて部屋の中の人間を眠らせた。

海賊モドキどもに見つかった場合はシェイラの馬鹿兄貴を助けに来たということにする予定だが、上手くいった場合は軍の諜報員以外には知られることも無く入って出ていく予定なのだ。

余計な潜在的目撃者には寝ていて貰った方が良い。

変に騒がれても面倒だし。


中の人間の眠りが術で深くなったのを確認して、静かに扉の鍵を解除して中に入る。

諜報員の顔は見なければ分からないので、窓から光が漏れないように体で遮りながら小さな灯りを灯して6人の顔を確認していった。

・・・ちっ。

この部屋にはいないようだ。

さて、同じ船の人間の部屋は近くに全部纏まっていてくれるのだろうか?

頼むから、適当に開いている部屋に突っ込んだなんて言わないでくれよ~。


馬鹿兄貴の部屋の鍵を閉め、右隣の部屋の扉の前に行って同じ事を繰り返す。

この部屋にも居なかった。

左隣の扉でも同じ事をする。

ここにも居ない。

だ~~~!!


イライラしながら左右の部屋を交互に調べていったら、目当ての諜報員は馬鹿兄貴の部屋から3つ左に行った部屋にいた。

ふう。

手間を掛けさせる野郎だ。


確かにこれだと軍部が魔術師を使いたくなるのも分かるな。

中の人間が起きて騒ぎ出したら面倒だからと眠り香を一々焚いていたのでは、とても一晩では終わらないだろう。


取り敢えず、諜報員の口を塞ぎ、手足を縛って抵抗できないようにしてから術を解除して起こした。

「軍部から、情報を受け取るために派遣された人間だ。

暴れず、音も立てないでくれるか?」



とっても用心深いウィル君でした~。

人質になっていたとは言え、突然夜中に目が覚めたら口を塞がれ手足を縛られていた諜報員の人がちょっと可哀想かもw


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ