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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
440/1296

440 星暦554年 紺の月 29日 新しいことだらけの開拓事業(12)

「なんでこんなことになったのやら・・・」

先に見える町の光を頼りに空滑機グライダーで暗闇の中を進みながら、思わず愚痴が口からこぼれた。


『嫌なの?帰る??

あいつらがウィルに無理強いしているんだったら船を沈めちゃおうか?』

傍に浮かんでいる清早が尋ねてきた。


いやいやいや。

ここで軍の情報部の船を沈めたりしたら、益々話が複雑になる。

もうこうなったら依頼通りに情報部の人間から情報を受け取って帰ってくるのが一番簡単だろう。


俺だって軍部と対立して、今の生活を捨てて別の国に亡命する羽目になるつもりはない。

元孤児で立場が弱いとは言え、それなりに周囲には権力のある人間がいるのだ。

普通に対等の立場で依頼を請ける分には問題はないだろう。

今回だって、金貨30枚の報酬なのだ。

船に乗っている間の往復4日は寝ているだけで良いのだ。実質働いているのは空滑機グライダーに乗って島に向かい、捕まった人間を見つけて連絡を取って帰ってくるだけなのだから他の依頼よりも楽と言えば楽だし。


「良いんだ、ちょっと頭脳労働者を自認している身としては不本意なだけで、報酬そのものには納得しているから。

暴れるのは、もしも俺が島で見つかりそうになった時に頼む」

清早には、もしも島で見つかりそうになったら小規模の津波を起こして貰って注意を逸らす役目を頼んでいる。

まあ、俺の能力を持ってすればそんな状況には陥らないと思うが。


清早ととりとめないことを話しながら飛んでいたら、島が目下に見えてきた。

流石海賊モドキの本拠地。

海の周りは夜になってもそれなりに明るく灯されて人が行き来している。

まあ、大部分の活動は酒場周辺でのようだが。


海岸から離れると島は真っ暗に寝静まっているようだ。

寝ていても起きてこられては困るからな。

町を通り過ぎて人が居ないところを探して、静かに空滑機グライダーを降ろした。

土地の勾配は心眼サイトで読み取れる訳では無いので、適当に高度を降ろした後は浮遊レヴィアを掛けて宙に浮いた状態で目をこらし、平らな所を探して着地だ。

幸いにも星明かりがそれなりにあったので何とか岩や木に突っ込まないで済む場所を見つけられた。


降りてみた場所は、どうやら町の外にあるちょっとした畑のようだった。

足元に何やら作物があるのを踏んでしまった。ぐしょっとはならなかったのでカボチャか何か、固いタイプの野菜系の作物らしい。


しっかし。

海賊の島にも農家がいるのか。

何かイメージと合わないが・・・もしもの時にある程度の食糧を自給できた方が良いんだろうな。


流石に夜に畑泥棒を探しに来るとは思えないから、ここに空滑機グライダーを置いておいても大丈夫だろう。

元々、暗い灰色の目立たない機種である上に、情報部の人間から貰った網のカバーで更に隠れるはず。


というか、こんな色の空滑機グライダーなんてシェフィート商会は製造していないはずだ。

聞いてみたら、軍部が自分達用の空滑機グライダーを製造していると教えられた。

ちゃんと特許料を払っていると俺にこれを提供した奴は言っていたが。

つうか、シェフィート商会と独占製造契約を結んでなかったっけ??あっちにもちゃんと何らかの支払をしているんかなぁ?


自分達用の空滑機グライダーを作るんだったらそれを乗りこなす人間もいるだろうに。

プロだったら海賊の本拠地でも夜の闇に紛れて忍び込む事ぐらいできるようになっておけよな。準備不足だぞ!


そんなことを考えながらさりげなく町の中に入り込んでいく。

一応大雑把な港町の構造は貰っているし、身代金待ちの人間が拘束される建物の場所も聞いている。

が。それでも初めての町を歩き回るのは神経を使う。

もっと時間に余裕があるなら、昼間に偵察して人の流れを確認してから動くんだけどねぇ。


とは言え、明るくなっても空滑機グライダーが見つからないようにちゃんとした隠し場所を夜の間に探すのは難しいか。

どうしても町から離れたところに隠す羽目になり、移動に時間を取られそうだ。


取り敢えず。

まずはシェイラの馬鹿兄貴を目印にお目当ての軍の人間を探さないと。

軍部の人間の顔も、知っている人間の記憶を術で読み取ったので見れば分かるが、直接会った訳では無いので心眼サイトでは探せない。

なのでまず心眼サイトで探せるシェイラの馬鹿兄貴を目印にして探す必要がある。


・・・今晩中に見つかるんだろうか?


ちなみに、一晩で見つからなかったら夜が明ける前に船に戻って、また翌晩に来る予定。

そうなると休暇が終わる前に帰れなくなるのでウィル君的にはさっさと終わらせて帰りたいところです。

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