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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
431/1295

431 星暦554年 紺の月 18日 新しいことだらけの開拓事業(3)

「そう言えば、この島の発見者権利はどうなったの?」

島にたどり着いた小舟から素材を降ろした船員達が二手に分かれ、片方はこちらに戻り、もう片方は崖の上へ登り始めるのを見ながらシャルロが聞いてきた。


どういう理論に基づくのかイマイチ分からないが、パストン島は俺達3人が発見者として権利を貰ったのに対し、この海鳥の島は俺一人が発見者と言うことになった。

どうも、発見後に船が寄らなかったことで扱いが変わるらしい。


「権利放棄に金を出すとナヴァールから言われたんだけど、この島に価値がないなら雀の涙になるし、価値があるんだったら利益に対する分け前を持っている方が良いだろ?

だからパストン島と同じで開発したら金をくれって答えた」

島の発見者の権利の付与って細かいことで変わるんだな~と偶々話したアレクも、もしもナヴァールが権利放棄の話をしてきたら応じるなと言っていたし。


「なるほどね~。

だったら、利害関係者として浜から上にあがる道でも作ってあげたら?

あの調子じゃあかなり時間が掛りそうじゃない?」

崖に取り付くような感じでよじ登っている船員達を指しながらシャルロが提案した。


・・・確かに、上に滑車か何か設置して素材を引揚げるにしても、まずはその滑車の資材を持って行かなければならないし、現実的な話として人が歩いて上がれるようにしないと普通の人間にとってあまりにも不便すぎるな。


この海鳥の島は基本的に切り立った崖の上に小さな平地があるような地形だ。

今回小舟で船員達が降りた辺には小さな砂浜があるが、そこも直ぐ後ろはそこそこ切り立った崖のようになっている。

島を使おうと思ったら船で来るよりも空滑機グライダーで来る方が楽そうだが、重い物を動かすのには空滑機グライダーは向いていない。


人力で船から運び込んだ資材を上まで動かすとなると、時間がもの凄く掛りそうだ。

その間、俺達もここで足止めとなるんだったら時間がかなり無駄になるな。


「浜から上がる道を作るのも可能なのですか?

それは助かりますな!

ただし、人が一人歩く程度の幅にして下さい。

あまり便利にし過ぎると少人数での防衛が難しくなりますので」

ジャレットを探して砂浜から上へ登る道を作ることを提案したら、そう言われた。


なるほどね。

登ってくる人間に崖の上から石を投げるなり弓を射るなりして撃退するのは楽だが、大人数で簡単に駆け上がれるようだったら海賊とかに襲われた際に数で圧倒されてしまうか。


取り敢えず、戻ってきた小舟に乗ってジャレットと一緒に島に渡ることになった。


「あ~、もう少し右上の方が良いでしょう。

そう、その辺り。

そこから左上へ折り返して下さい」


崖を一直線に垂直に登るルートを作ったところで却って滑りやすくて使い勝手が悪いだけなので、ジグザグにして勾配を緩めた道を作る必要がある。

階段にしても良かったのだが、アスカにとって『階段』というコンセプトが新しい物なので創って貰うのに時間が掛りそうだし、そのうち段が摩耗してきたら危険だ。

そしてジグザグの道にしても、出来るだけ現存する地形を利用して歩きやすい場所に作った方が良いとジャレットが主張したので、浮遊レヴィアで崖面を移動しながらジャレットの指示で道のルートに沿って縄で印を付けている。


召喚したアスカは、直ぐに作業に取りかからないと聞いて何やら探索に出かけてしまった。

こういう島の地下って何か面白い物があるのかね?

土竜ジャイアント・モールにとって何が興味深いのかは不明だが。


まあ、普段は自力で態々こんな海の中の孤島に来たりしないらしいので、珍しいっちゃあ珍しいんだろう。


「はい、そこで右に折り返したらそのまま崖の上まで行って下さ~い」

段々遠くなってきたジャレットの声が微かに響く。

やっと上に付いたか。


『アスカ!』

魔力を込めてアスカを喚ぶ。


『おう。準備が出来たか?』

暫し待ったら、足元からアスカが現れた。

牛ほどの大きさのアスカがそこから現れたというのに、地面に変わった様子は全くない。相変わらず不思議だよなぁ。


『そこの縄沿いに、人が一人が通るのに良い程度の幅で道を作って欲しい』


アスカが少し首をかしげた。

『人が通るのに良い幅とはどの程度だ?

お主の肩幅くらいか?』


いやいやいや。

俺は自分の肩幅程度の細道で崖を登れるが、普通の人にはそれは厳しいだろう。

第一、いつの日かお偉いさんが視察に来ることがあった場合、そのお偉いさんが横に伸びた体型だったら目も当てられないことになる。


流石にお偉いさんを貨物と同じようにロープでぐるぐる巻きにして滑車で引揚げるわけには行かないだろう。

まあ、その方が本人にも周囲の人間にとっても楽だろうが。


『少し余裕があった方が良いから、アスカが歩くのに必要な幅ぐらいにしてくれ』

アスカのサイズよりも大きい人間が来たら、諦めて滑車で引揚げて貰おう。

そこまで太っていれば多分崖を登ること自体無理だろうし。


・・・つうか、そこまで太っていたら船の廊下や扉でつっかかって来ること自体が不可能か。


『分かった』

俺の指示に納得したのか、アスカがのっそりと崖に向かって歩き始めた。

アスカが縄沿いに歩くと、その地面が均されていく。場所によっては崖がえぐれたり、足元に土が盛り上がってきたりしている。


う~ん。

魔術と違う効果だよなぁ。

魔術でも土に力を掛けて平らにしたり地形を変えることは可能ではあるが、こういう滑らかで自然な均し方というのは難しい。


流石は土の幻獣。

後でたっぷり魔力をあげないと。

まあ、アスカ曰く珍しい場所に来れたので特に報酬は無くても良いとの事だったが。


取り敢えず、俺はアスカが均した通路に固定化の術でも掛けておくか。


崖を登るんだったら手すりとか安全用のロープも張らないと怖いでしょうねぇ・・・。

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