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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後3年目
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428 星暦554年 紺の月 10日 慶事の前だからって張り切るな(5)

「へぇぇ、もう船も手配できたの?

あっという間ね。

シェフィート商会にそこまで軍に圧力掛ける力があるとは思わなかったわ」

久しぶりに会いに来て、シェイラに近況を話したら目を丸くされた。


シェイラには言ってないが、実際の所はほぼ確実にシェフィート商会の圧力が効いたと言うよりは、『ウォレンおじさん』の力だろうが。


シャルロの大叔父さんが軍部だけでなく商業省でもがっつり根回しをしていてくれたらしく、セビウス氏がパストン島の開拓に俺達が直ぐに取りかかれるようにしてくれたら真水抽出魔道具を軍に優先的に売ると匂わせたら、あっという間に開拓の話は進んだ。


名目上は決まっていない開拓の船やその他諸々を手配するわけにはいかなかっただろうに、『幸いにも』船が空いていたり、『偶然』丁度良い人材が王都に帰ってきていたりとかで、トントン拍子に話が進んだ。

一体どれだけ前から準備していたんだよ??


新規航路を探す航海に出ると言うことでほぼ全てが決まってた最初の時ですら、俺達に話が来た段階から実際の出発まで1月掛ったというのに、今回は行き先は決まっているものの一つの島の開拓を始めるというのに10日足らずでほぼ全ての手配が終わったのだ。


怪しすぎる。

そこまでシャルロを王都から出す必要があるのか???

思わず、学院長に『開戦のリスクがそこまで高いなら、俺だけでも王都に残ろうか?』と相談しに行ったぐらいだ。


が。

学院長の話では『7割方、単なるジジ馬鹿だ』との事だった。


開戦のリスクはあるにしてもそこまでは高くはないし、両国の国力・兵力レベルを考えたらシャルロや俺達が自己犠牲精神を発揮する必要は無いと言われた。

『第一、誰か一人の魔術師の力に頼った戦争なんざ、危険すぎる』そうだ。

まあそうだよな。

一人の人間に頼った戦争なんざに味をしめられて、節約しちまおうと普通の兵力を減らし、挙げ句の果てにその人間(シャルロだな、この場合)がうつ病になって倒れてしまったり暗殺者に殺されたら、目も当てられない。

精霊の加護持ちの戦略的価値なんざ、世に知らしめる必要は無い。


なので俺達は心置き無く開拓に取りかかれそうだ。


だが。

もしも俺達がパストン島に行っている間に大規模な侵攻が始まったりした場合、シェイラが居るヴァルージャはガルカ王国よりだ。


もしもアファル王国が何らかの理由で不意を突かれたりして一気にガルカ王国の兵が国内へ侵攻してきたりしたら、危ないかも知れない。


どの位真剣にシェイラの身を守る手配をしておく必要があるのか、学院長にさりげなく聞いてみたら、『開戦するとしても、軍部が神経質になって細心の注意を払っているからヴァルージャまで一気に攻められる様なことはまず無い』と言われた。


どうやらシャルロの大叔父さんはシャルロが戦場に駆り出されることを何としても避けたかったらしい。

俺が最初に清早の加護を貰った時に、精霊の加護持ちに無理強いはしないという話を学院長がしていたが、戦争になると『国を守るため、ひいては自分達の家族を守るため』ということで色々無理強いに近い状況に追い込まれる可能性があるらしい。


まあねぇ。

アファル王国が戦争に負けて、狂った宗教国の配下になってしまったりするぐらいなら、大量殺戮でも何でもせざるを得ないわな。


お偉い人達はシャルロみたいな人間を動かす方法をよく知っているだろうし。


まあ、俺達としてはパストン島へ早く行きたいんだから、シャルロの大叔父さんには感謝というところだな。

「ちなみに、王太子の結婚式の時もここで働く予定?

もしも発掘現場も休みになるんだったらパストン島へ遊びに来ないか?」


やはりもしもの事を考えると、結婚式の日前後が一番危険だろう。

幾ら軍が細心の注意を払っているとは言っても、王都と王太子の警護が最優先される。

だから出来ればシェイラにはその時期だけでも、南部から離れていて欲しい。


シェイラが肩を竦めた。

「そんな先のことはまだ決めてないわよ。

歴史学会の人間は、『今』の重要人物に関わる行事にはあまり興味は無いのよね~」


まあ、そうだろうなぁ。

下手したらツァレスあたりは結婚式のことも気が付かない可能性だってありそうだ。


「東の大陸の領事館まで転移したら、領事館からパストン島まで船を雇うなり、季節風の向きによっては空滑機グライダーで移動するのも可能かも知れないぜ。

もう少し間際になってからでも気軽に手配できるから、考えておいてくれよ。

ついでに東の大陸の遺跡の発掘物が出ているあっちの巨大な蚤市を見て回ったら面白いと思うし」


パストン島そのものには大して興味がなさげなシェイラだったが、蚤市には心が動いたようだった。

「その蚤市には興味があるのよねぇ。

パストン島は宿屋とかがちゃんと整備されてから遊びに行っても遅くないと思うけど、蚤市の方はいつ行ったって新しい発見がありそうよね」


「おう。

遺跡の掘り出し物と、骨董物と、偽物とがごっちゃになって大量に置いてあるから、あれは纏まった時間を取って見に行く価値があると思うぜ。

パストン島は後回しにして、東の大陸に遊びに行くのでも良いな。

あっちだったらアファル王国の王太子の結婚式なんて全く関係ないから宿屋だって店だって特に混んでないだろうし」

領事館に泊めて貰うことも可能かも知れないが、普通の宿屋に泊まった方が気軽で良いだろう。

通信機を持っていれば何かがあった時には領事館から連絡はいつでも取れるし。


「そうねぇ。

どうせ、警備の人とか手伝い人員なんかは王都に戻りたがるか、領都のお祭り騒ぎに参加したがるでしょうね。

前もって休みを入れてここの人数は最低限にしておくのも良いかも。

ちょっと考えておくわ」

よっしゃ~!



あっという間にパストン島へ出発ですw

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