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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
390/1294

390 星暦554年 藤の月 19日 旅立ち?(31)

「藤の月だというのに、暑いな」

街を歩きながら、汗を拭う。

船上では『船だから』と思っていてあまり気にしていなかったのだが、王都を出て以来、考えてみたら段々暑くなってきてジルダスに着いたときは真夏・・・とは言わなくっても春の暑い日ぐらいの気温のようだ。


つい、『藤の月』だと思って冬服を着てきた俺としては、暑すぎる。

幸いあまり湿度は高くないので上着を脱いだら風が汗を乾かしてくれて何とかなったが、明日はもう少し薄手のシャツを着る必要がある。


・・・というか、薄手のシャツなんて持ってきてないんだけど。

お土産とは別に、シャツも見かけたら適当に何枚か買うか。

ふむ。

自分の服を買うんだったらついでにシェイラにもお土産に買うべきか?

それなりに雰囲気の違う華やか(派手?)な生地の服が目に付くので、面白いかもしれない。


とは言え、服のセンスはよく分からないからなぁ・・・。


「そりゃあ、香辛料が取れる地域の中心地なんだよ、ここ。暑いに決まってるじゃん」

服について悩んでいたら、シャルロがあっさり答えた。


「香辛料って暑いところで採れる物なのか?」

別にそんなことは学校で教わった記憶は無い。

もっとも、魔術以外の授業は落第しない程度にしか聞いていなかったから憶えていないだけかもしれないが。


「暑いところの方が虫や動物も多く、食べられるのを防ぐ為に植物も独特な味や効果がある成分を身につけたのではないかと言われている。

まあ、暑い地域の方が食欲を刺激するためとか、食糧の保存の為に香辛料の研究が進められたという歴史的背景があるからな。

実際の所、本当に香辛料が暑い地域に多く寒い地域に少ないのか、単に研究されていないから知られていないだけなのかは分からないが、現時点で売買されている香辛料の多くは暑い地域で産出されているぞ」

アレクが俺の質問に答えてくれた。


へぇ~。

香辛料って食糧の保存にも役に立つのかぁ。

知らなかった。


それはともかく。

「こんなに暑いとは思ってなかったから薄手の服を持ってきていないんだ。

適当に服を売っている店を見かけたら何着か涼しい服を買わせてくれ」

まずは暑いのを何とかしないと。

このままじゃあ脱水症状になりそうだ。


「良いよ~。

王都では見ないような柄の服が多いから、服・・・かスカーフあたりだったらお土産に良いかもね」

というシャルロの言葉に手を打つ。


「それ、良いな!

下手に服を買うよりも、ショールかスカーフの方がシェイラへのお土産に良いよな?」


アレクが頷いた。

「パディン夫人にもお土産に何枚か、お手頃な値段のを買って帰っても良いかもしれないね。

何枚かあったら夫人も家族や知り合いにお裾分けしやすいだろうし」


お裾分け?

お土産の?

貰った土産って人に分ける物なのか・・・。


まあ、そこらへんの『一般常識』はアレクに任せる。


俺達が泊まった宿は港の傍だったので、市場へ歩く途中にも服やら見たことも無い置物などを売っている店が幾つかあったかが、それらはアレクが幾つかの商品の値段を聞いたらあっさり首を振ったので出た。

どうやら宿のあった地域は船員目当てのぼったくり商店が多いみたいだ。

しっかし。まだこちらに来たばかりだと言うのに、既に街の相場が分かっているのだろうか??

アレク、凄すぎるぜ。


やっとアレクが納得した店に入った時には、市場の店舗(テントみたいなの?)が道の向こうに見えてきていた。

服なんぞ買うよりも先に市場を見てみたい気もしたが、流石に暑い。

まずは着替えが先だな。


店に入って辺りを見回す。

いつもは灰色や紺、グレーといった地味で周りに溶け込む色を着るのだが・・・そういう色が無い。


考えてみたら、街中を歩いている間にそれなりにじろじろと見られていたのって、今着ている灰色の服が周りに溶け込んでいなかったからか。


「俺、青とか緑とか黄色や赤の服ってあまり着る習慣が無いんだけど・・・。

つうか、どれが男用でどれが女用なのかも分からん」

思わず、シャルロとアレクに助けを求めた。


ぶふっ。

シャルロが吹き出した。

「東大陸でも、赤や黄色は女性が着ることが多いよ。

青か緑で良いんじゃないかな?

あと、生地の薄いのは女性用だと思って良いよ。

こちらは薄い生地のを重ねて着るのが女性のお洒落らしいからね」


そうなんだ・・・。

よく知っているな、シャルロ。

侯爵家ともなれば、東大陸からの客人とかも来るんかね?


改めて街中を歩く人の服装をよく見る。

どこに武器を隠していそうかとか、財布をどこに隠していそうかとかは無意識に考えていたが、服装そのものはあまり意識に入っていなかったな。

確かに、言われてみたら女性は薄い生地を何枚も重ねている。

若い女性の場合、チラチラと生地が重なっていない部分の下が体の動きに合わせて時々見えそうなのが中々色っぽい。


『カモ』として以外、あまりじっくり女性を眺める習慣が無かったので気が付いてなかった。


それはともかく。

「・・・ちょっと、こちらの服をそのままお土産に買って帰るのは、無しだな」


ちょっと南国っぽい雰囲気?

南国に行ったことが無いのでインドとかのイメージを漠然と修正した物ですが。

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