387 星暦554年 藤の月 16日 旅立ち?(28)
「僕としては、こないだの島で普通の開拓村を作っていく感じの方が楽しめそうな気がするな」
甲板から離れつつある島を眺めながら、シャルロが呟いた。
昨日は本船が島に着いてから島の探索と簡単な小屋の建設が行われ、その間に俺たちは順番に空滑機で島や周辺地域を見て回っていた。
シャルロは頼まれてまた井戸掘りに協力していたが。
相変わらず手際の良い船員たちは、あっという間に建てた小屋に食料やら樽やらを運び込んだ。残った4人が何やら小屋の傍で作業をしているのが、東大陸へ向けて出発した船からも見える。
昨日暇に任せて周りも探索したので、今日は空滑機を飛ばす必要は無い。
こっちの島は殆どが木に覆われている感じなので、俺的には足を踏み入れたくなかったから、島の周りから東大陸に向けての方向を適当に探索して回ったんだよね。
実家の領地で自然に馴染みのあるシャルロや、意外と冒険心のあるアレクは副長と一緒に色々開拓の下準備の作業を見ていたり手伝ったりしていたようだが。
「そうだな。軍の基地としての役割が大きいとなると普通の人が商売をするような開拓もあまり出来ないだろうし。
儲ける方法も限られてくるから私達の関与には向かないだろう」
アレクが頷く。
そうだよなぁ。
東大陸から比較的近く、軍が主な顧客層となると食糧で儲けるのは難しい。
こんな山っぽい土地で森を全部切り開いて農業をするのは大変だろうし、下手に木を切りまくったら水源が無くなっちまうかもしれないし。
となると、金儲けしようと思ったら賭場や花売り関係になるだろう。
俺たちが手伝えるような商売じゃあ無いよな。
「じゃあ、帰ったらこないだの島の開拓を手伝えないか、聞いてみるか。
と言っても、誰に聞くのか見当も付かないが」
腕を上に伸ばして伸びをしながら、次のステップに関して話をふる。
「開拓中に水に関して苦労しなくて済むとなるとかなり楽だからな。ナヴァールに話を振れば喜んで何をして欲しいか希望を言ってくるだろう。
シャルロは実家の方にも声を掛けるか?
良さげな中継地点が見つかったらシェフィート商会はダルム商会と共に是非参加したいとの意向だと私は言われているが」
アレクがシャルロに尋ねる。
そっかぁ。
侯爵家でも儲かるような投資先はいつでも探していると言うところなのかな?
折角シャルロが関与しているから参加しやすい案件な上に、シャルロ本人が利益を永続的に受け取れるからなぁ。オレファーニ侯爵家としては悪くない投資先か。
俺も美味しい投資先として・・・長とか学院長とかに紹介すべきか?
・・・いやいや。どちらも老後の資産を増やすために投資先を探しているとは思えん。
変に巻き込まない方が良いだろう。
「シャルロ、ウィル、アレク!夕食だ!」
俺たちが甲板で夕風を楽しみながら開発のことを色々と夢想していたら、副長が声を掛けてきた。
一瞬、副長が俺たちを探しに来るなんて何事かと思ったが、階段を降りている最中に俺たちの呼び出し係の若いのに会ったので、単に副長も夕食だと呼ばれて動いていたら俺たちを見かけて声を掛けただけのようだ。
◆◆◆◆
「いやぁ、今回は久しぶりの大規模探索だからどうなるかと思っていたが、これ程理想的に物事が進むとは、想像もしていなかったよ!!!」
日に焼けた顔が酒で更に赤らんでいる船長が陽気に杯を上げながら笑った。
他の連中もご機嫌な顔だ。
島にいる間は色々忙しかったので酒も殆ど飲む暇が無かったのだが、どうやら今晩・明日あたりは大した用事も無いだろうということで祝いがてらにがっつり飲むことにしたようだ。
出された酒も、いつものよりもグレードが高い気がする。
まあ、向こうに見えている次のボトルはいつものボトルみたいだから、最初の乾杯用にだけ良いのを出したのかも。
「いやぁ、本当に新規航路開拓には毎回君たちに参加して欲しいぐらいだ!!!
水にも魚にも困らない上に、あの空滑機は素晴らしい!」
ちょっと酔っ払ったのか、副長もいつもよりも陽気な雰囲気だ。
いつもは船長が酔っ払ったら自分が責任者だと思っているのか、船長が飲んでいる時は殆ど飲まないのに、良いのかね?
うっかり船が座礁しちゃたのに、船長も副長も酔っ払ってた何てことになったら不味くないか?
まあ、シャルロがいるからそっちは問題無いか。
例え船に大穴が開いても絶対に沈ませないから、ある意味不都合は無いよな。
海賊とかに襲われても・・・蒼流がいれば無敵だし。
そう考えると、別に船長と副長がベロベロに酔っ払っても構わないのか。
う~ん、俺たちって本当に便利だよな。
開拓のこととか聞いていたかったんだが、また明日にでもするか。
今晩は折角の新鮮な肉料理を楽しもう。
航海も終わりに近づいてきましたね~。
後はお土産ハントさえちゃんとこなせば無事終了?