表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
384/1295

384 星暦554年 藤の月 12日 旅立ち?(25)

「もしもこの船が沈んじゃったら、残った奴らって島流し?」

発見した島が水平線の彼方に消えるのを眺めながら、思わず言葉が溢れた。


「・・・船と一緒に沈むよりは、島にいる方がいつか通りかかった船に発見される可能性もゼロでは無い訳だし、まだマシじゃなんじゃないか?」

アレクが肩を竦めながら答える。


まあ、シャルロが一緒にいるんだからこの航海では絶対に船が沈むことは無いけどさ。


昨日島を発見した後、船長とナヴァール達は島を見て回ってちゃちゃっと簡単な地図を作成した後(空からさらっと見て回っただけでかなり正確に見える地図をかき上げた副長の技能は中々凄かった)、猛烈な勢いで船員総出でシャルロが手伝って掘った井戸の傍に簡単な小屋を建てた。


別に今すぐに小屋なんぞ作らんでも良いだろうに・・・と思っていたら、何と4人ほど船員が残ったのだ。


交易用だと思っていた倉庫の物資の一部には、こういう新規中継地を見つけた際の小屋や井戸を作る為の物も含まれていたらしい。


流石に通常の交易船だったら余分な船員や小屋を建てるような木材は持ち運ばないが(とは言っても、修理用の木材はある程度は積んでいるらしい)、今回の様に新規航路開拓の場合は話が違う。なんと言っても、新規航路だったら中継地というのは是非とも見つけたいのだ。


そして見つけたら何としても所有権を主張したい。

と言うことで、見つけられた時に後悔しないで済むように、残しておく余分な人員と『開拓を既に始めた』と主張する為の小屋づくり用の物資も積んでおくのだそうだ。


名目だけでなく、さっさと本格的に開拓できるように残された4人は船が帰路に寄るまでに島の近海の海流や水深、陸上の資源などを調べる作業を進めておくらしい。


「まだ東大陸に着くまでにあと2箇所ぐらい島があるらしいけど、それに全部人を置くほど余剰人数があるのかなぁ?」

シャルロが首をかしげながら振り返った。


・・・2つもあるんだ?

考えてみたら、毎日清早に近くの島の場所は聞いていたが、東大陸に着くまでにどれ程島があるかは聞いていなかったな。


シャルロは船の針路に関してちょくちょく航海士と話をする都合上、蒼流にどこを進めば良いかを聞いているので、島の有無に関しても確認していたのだろう。


「2つかぁ。

あと何日ぐらいで東大陸に着きそうなんだっけ?」

考えてみたら、1月で上手くいけば帰ってこれると言われたんだよな。

そう考えると、向こうで転移門を設置したりする日数を考えると10日ぐらいで着くのではないだろうか?


としたら・・・あと3日?

それとも、島を見つけてそこで1日潰しているからあと4日かな?


「あと5日ぐらいかなぁ。ちなみに、東大陸に近い方の島は人が住んでいるよ?」

清早が現れて答えてくれた。


5日か。

そう考えると、東大陸寄りの方が島が多いんだな。

そんでもって、一番向こうの島には人が住んでいるからアファル王国には所有権を主張出来ないと。


まあ、別大陸のすぐ傍にある島の所有権なんぞ主張しても、開発が終わって利益が出るようになったらあっさり奪われそうだしな。


「あ、そうなんだ?

3つ水がある島の傍を通る航路にするとしか聞いてなかったんだよね~。

じゃあ、後4人を降ろすぐらいなら大丈夫なのかな?」

シャルロがあっさりと納得した。


どうなんだろ?

船を動かすのに必要な人員なんぞ、俺には分からんからなぁ。


そんなことを話していたら、すいっと清早が姿を消した。

うん?


「ああ、ここにいたのか」

副長が姿を現した。


精霊って別に恥ずかしがり屋という訳では無いのだが、関係ない人間に見られるのをあまり好まないよなぁ。


お陰でちまたでは神秘的なイメージがついていて、時々話していて笑いたくなって困る。


それはともかく。

副長が探していたとは、何かあったのか?


「何か問題でも?」

アレクが尋ねた。


「いや、問題はない。

せいぜい、中継地としては理想的な島が見つかって、今回の航海は成功したも同然だと皆が浮き足だっている程度だよ」

副長が苦笑しながら首を横に振った。


あ~。

確かに、皆もの凄くハイになってるよな。

ごく薄いエールしか出てないのに、皆酒に酔っ払ったような雰囲気だ。


「それはともかく。

この航海で分かったのだが、空滑機グライダーは素晴らしいな。

新しい島の発見に関してもだが、発見した後に島の全体像があっという間に見て取れたのも素晴らしい。

あれは幾らぐらいで買えるのか、教えて貰いたいと思ってな」


ほおう。

空滑機グライダーのお買い上げですか。


空滑機グライダーはそれなりに高く付くので、軍以外では少数の金持ちにしか売れていない。

まあ、俺たちにとって便利だし、レンタルではそれなりに収益が入っているんで良いんだけどさ。


新規航路開拓船に買って貰えるとなると、需要が増えるかな?


・・・とは言っても、新規航路を開拓する船がどのくらいあるのか知らないが。

新規航路開拓があまりしょっちゅう無いんだったら、空滑機グライダーをウチから長期レンタルでもした方が良いんじゃ無いかなぁ。


もしくは、買い取った空滑機グライダーを使わない時期はウチでレンタルするのに提供して幾らか収入を得るとか。


ま、そこら辺はアレクと副長で話し合ってくれ。


今回の島は動物もある程度住んでいるので、残された方も気が楽なので立候補者には困らなかった様子。


これが最低限の水しか無いような島だと船が遅れると切実に飢える可能性が出てくるので、ちょっと悲愴的なくじ引きになったりw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ