381 星暦554年 藤の月 11日 旅立ち?(22)
「もうちょっと右~」
清早の指示に従って空滑機を動かす。
昨日と一昨日は、役に立つ規模の島が無いことが清早からの情報で分かっていたのでアレクと俺は空を飛ぶのを楽しんで、適当な時間になったら帰った。
一応、『あることはある』ということで場所を教えて貰った島も2つほどあったのでアレクはそのうちの一つに行ってみて探険を楽しんだようだが。
分かりやすいようで分かりにくい清早の指示で船からたどり着けるかも挑戦の一部だったらしい。
空滑機用に小型化した位置追跡装置も持って行っていたので帰ってくるのは問題が無かったから、色々試行錯誤出来たと言っていた。
一体何を試行錯誤したのかは知らないが。
その間、俺はシャルロと魚釣りに熱中していた。
なんと、過保護の蒼流が船の周りに水の結界で生け簀を作ってくれたのだ。
なので俺たちは適当に釣り糸を垂らして釣を楽しんだ訳。
どうも普段と魚の様子が違うことは船員にも分かったのか、あいつらも暇があると釣り糸を垂らしていたが、まあ構わん。
俺たちがあいつらの分まで釣り上げなくて済むのはそれはそれでいいことだし。
まあ、『東大陸への航路は魚がずっと釣れる』なんて誤った情報が伝わらないように、後で副長にでもさりげなく釘を刺しておいた方が良いだろうが。
今日近づく島は、それなりの大きさで動植物も生きている上に真水が出る泉があると清早が言っていた。
人間は住んでいないと言っていたから、中継所として利用するのに悪くないだろう。
こういう中継所の権利って一応発見した国の物らしいので、アファル王国が中継所を運営してそれなりに儲けを得られる可能性は高い。
発見者個人に対する権利というのは実はもうちょっと微妙だ。
通常の場合は船の見張り役が見つけるので、『島に対する権利』なんて物は当然見張り役個人には与えられない。
これが商会の交易船だったりした場合は、その商会はある程度の税金を国に払うことでその発見した補給地点を運営する自治権が認められる。
なので船長は商会からボーナスを貰い、見張り役もその中からボーナスを貰うらしい。
が、今回は国が派遣する船だ。
とは言っても島を見つけられるのは俺たちの能力が大きい。見張りが見つけられる範囲では無い場所にある島を見つけるんだから。
そこら辺はどうなるのかと色々ダルム商会に聞いたアレクが、後から突っ込みを入れて明文化させたポイントだ。
まあ、俺たちも中継地点の運営権なんて欲しくないからね。
アレクの実家にしても、運営権を主張するために流石にこの時点で航海に同行するほどの熱意も伝手も無かったらしい。
と言うことで、中継所として使える島を船の見張り役から見えない範囲で見つけた場合は、俺たち3人は税収の100分の1をずっと貰えると言うことで話が付いた。
ちなみに、これって3人合わせて100分の1ね。
100分の1ずつじゃないのかぁとちょっと思ったのだが、南航路の有名な中継地の税収を教えて貰った段階で突っ込みを入れる気が失せた。
確かにちゃんと稼ぐだけの中継地になるまでには何十年も掛るかも知れないが、本格的に稼働したら100分の1の3分の1でも下手したら今の年収を超える可能性があるって・・・。
人生が歪みそうだ。
もしも子供が出来ても、相続させない方が良いかもしれないなんて思ったぐらいだった。
まあ、腕の良い代官の元での開発と運営を何十年も続けて、という話だから実際にそこまで上手く利益をたたき出すような場所になるかは不明だけど。
それはともかく。
さあ、島を発見しようか。
おくれてすいません。
もしもシェイラとの子供が生まれてその子も歴史バカだったら全ての収入を遺跡発掘に注ぎ込みそうw




