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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
283/1295

283 星暦553年 萌葱の月 17日 ちょっとした遠出(2)

空滑機グライダーを使えば1日でサラフォード地方へたどり着けると判明したので、あれから2日ほど掛けて王立図書館や魔術院の図書室で下調べをしてみた。


とてもきらきらしい場所だという記載があったと思うと、暗くて霧に覆われ、昼間だというのに自分の手の先も見えぬほどの場所だという言い伝えも有り。


同じ場所の話とは思えないぐらい多彩だった。

登場する幻想の森の住民も、『この世の物とは思えぬほどの美しさ』の娘だったり、ロバの顔の人物や、反対に体が馬で上半身が人間の存在だったり。

手の平サイズの妖精や、家ほどもあるドラゴン。

他にも召喚術で呼び出せる幻獣が色々話に出てきていた。


これらが全部アルフォンスの森に住んでいるとは思えないので、基本的に幻想界に繋がった話が全部サラフォード地方の話として纏められちゃっている場合が多いようだ。

もしかして、あの地方は他の世界に繋がりやすいのかな?


まあ、暗かったというのは、単に幻想界に繋がった際に現実の世界は昼だったものの幻想界は夜だったというだけの話らしいけど。


しっかし、思っていた以上にサラフォード地方の妖精の森に関する研究は多かった。

確かに妖精は光石よりも威力が強い精霊石を与えることが出来ると言われているので、妖精の森と定期的に交易出来れば実入りは大きいだろうが、数年とか数十年に一度しか交わらない妖精の森との交易なんて商売にはならない。


なのに、どうも『妖精の森』の話をしっかりと調べれば、いつでもそこに行けるようになると思っているっぽい学者が多かった。

もしくはそう考えて、学者に研究させている有力者が多いのか。

なんで幻想界に人間の世界で役に立つ宝がごろごろ転がっていて、そちらに行けさえすれば簡単に手に入ると考えるのか、よく分からないが。


シャルロに言わせると、『アルフォンスがこっちに来るのはいつでも出来るし、僕を連れて行くのも一応出来るけど、それなりに魔力を使うから土産を持って帰る程度のことは出来ても工業ベースでの行き来は無理』とのこと。


シャルロの魔力で無理なら、普通の人間じゃあお土産すら持って帰れないんじゃないかねぇ。


「なんか、こんなにも熱心に調べている人がいるんだね。

昔の学者さんはまだしも、今でも生きている人もいるっぽいから、今回のお出かけにも誘ってあげるべきかなぁ?」

それなりに中身が詰まっているっぽかったので図書館から貸出してきた本を机の上に置きながらシャルロが俺たちに聞いてきた。


「そんなもん、学者なんて連れて行ったら遊びで行っている俺たちの休暇が台無しだよ」

「これからも連れて行ってくれと付きまとわれるようになったら面倒だよ?」

俺とアレクの否定的な答えに、シャルロも小さく肩を竦めた。


「まあ、そうだよね。

アルフォンスのことを知らないくせに色々想像で書いているのも失礼だし」

ふふふ。

人のことを想像で書くのなんて筆者の権利という気もするけどね。

が、俺たちがここ2日で見かけた本の中の威風堂々とした王様やベロベロに酔っ払って女性に悪戯ばかりしているだらしない王様など、時々シャルロとお茶を飲んでいるアルフォンスとは同じ存在とは到底思えないようなことが書かれている。


シャルロに言わせると、少なくともこれらの本が書かれた過去数百年はずっとアルフォンスがサラフォード地方に繋がる妖精の森の王だったらしいので、筆者達はかなり自由に脚色しているっぽい。


じゃなきゃあ、色々別な所に繋がっているのに全部アルフォンスの森だと思い間違いをしているか。


下手に学者なんぞを連れていったらこれらの伝説を検証しようと質問攻めにされたり手伝いを乞われたりしかねない。ゴメンだね。


「まあ、お土産にお酒でも持って帰ってこよう。

妖精の森でもお酒を造るんだよね?」

アレクが簡単に話を纏めた。


「酒は重いから、茶葉の方が良くないか?」

その方が持って行ったときにこちらも一杯味わえるし。


「まあ、取り敢えずお土産はあっちで色々見て、素敵だと思った物にしよう。

じゃあ、明日の出発で大丈夫だね?僕はこっちの本を返しに行ってくるついでに、魔術院のアンディにでも遠出のことを一応知らせておくね」

シャルロが図書館で借りてきた本を手に、立ち上がった。


遠出する際に一々人に言っておく必要ってあるのかねぇ?

却って何か言いつかりそうで嫌だが。

今までだってパディン夫人にしか言ってなかったのだが、どうやら前回アンディに会った際に、ちょっと釘を刺されたのかな?


俺も学院長にでも言っておくべきかなぁ?

でも、学院長が切実に俺を必要とするのなんて、年に1度程度だからな。

態々忙しい学院長に知らせに行かなくても良いだろう。

それこそ、一緒に来たいなんて言われても面倒だし。

学院長だったら変な学者を連れて行くよりはマシだろうけど、それでも気軽に馬鹿なことを話しにくくなる。


帰ってきたらお土産のお茶でも持って行きゃあいいということにしよう。

次は1日に更新します。

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