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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
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262 星暦553年 翠の月 2日 祭りの後(8)

「サリエル商会に潰されそうになっていた中小商会を助けたことが何回かあったせいか、私が魔術学院に入ることが決まった際にシェフィート商会はかなりの嫌がらせを受けたんだ」

ケーキをお皿に取り分けながらアレクが説明を始めた。


「魔術師というのは一般の人間には分からない技術がある。

ただ、普通の魔術師というのは商会とはまた違った世界で生きている。だからその技術を悪用するというのはどこかの商会に雇われてということになるから、それはまあある意味ごろつきを雇って嫌がらせをするのと同じで、気を付けておいて魔術院にもコネを作っておけば対処も難しくない。

だが、魔術師が商売をする、もしくは魔術師の家族が商会を運営するとなると内部の話になるからね。

どんな嫌がらせや違法な術をその魔術師が行っているか、発見しにくいし周りの商会にとって不利なことが起きやすいという考え方が以前からあったんだ」


ほおう。

まあ、普通の魔術師が商売をするといってもせいぜい魔道具を売る程度になるだろうから一般の商会との競合は少なそうだが、確かにアレクが自分の家族の商会に合法・違法どちらの術でもやってあげ始めたら周りの商会にとってはたまったものではないだろうな。


「だから魔術師は家族であろうと術の行使を無料で行ってはいけないことになっている。一応、魔術院には全ての術の最低料金っていうのが設定されていて、それ以下で術を施行したことが分かると魔術師とその便益を受けた商会の両方にそれなりの罰金が科されることになっているんだ。

流石に魔術師が違法行為をライバル商会に行った場合の発見は普通の違法行為と同じようにしかできないが、少なくとも術の施行に関しては、子供が魔術学院に入ると決まった時点で監査を行って商会の状態を確認し、その後は毎年監査が行われて説明のつかない収支の流れがないか、支払われていない術の施行がないかの確認が行われる」


へぇぇ。

意外と面倒だ話なんだな。


アレクは家族の役に立ちたいと魔術師になったと以前言っていたと思うが、そこまで色々あるとかえって面倒くさそう。


まあ、それでも相談とかだったら無料だし、以前の店舗根こそぎ窃盗事件のような場合の対応は術の施行とはまた違う扱いだし、やはり家族に魔術師がいると便利っちゃあ便利か。


「とは言っても魔術師になってもそれを周りの商会を潰さない程度に抑えるという暗黙の了解も商会の業界ではあるから、監査といってもよほど疑わしい位に羽振りがよくない限り形式的なものなんだけどね。

だが、私が魔術院に入ると決まった際に、強引にサリエル商会はこの監査の担当になって、監査の名目でありとあらゆる事業情報まで盗んでいった上に未だに毎年の監査でも色々情報を取っていこうとしてくれるんだ」


嫌われてるねぇ、シェフィート商会。


「だから、今回はシェフィート商会が監査の担当になるよう、母に提案してくるよ」

楽し気に笑いながらアレクが締めくくった。


ははは。

すげえな。

・・・ついでに、サリエル商会の違法の部分も潰した方が良いんじゃね?

そうしたらあの小娘が魔術師になってもそれほど心配しなくていいから。


魔術師っていうのは悪意があればそれなりに人の意を捻じ曲げる術もあるからな。

サリエル商会と魔術師の組み合わせっていうのは怖すぎる。

雇われ魔術師なら裏切る可能性があるから、あまりにも違法な術は頼む際のリスクが生じる。

だが、家族となれば捕まるまではやり放題。


従業員とか取引先にどんな術を施すか、想像したくないぜ。


「だけど、アレクの家族はまだしも、そんな後ろ暗い商会なのになんで娘さんが魔術師になれるのをそんなに喜んでたんだろ?

監査を受けたら困るんじゃないの?」

シャルロがケーキを食べながら首を傾げた。


「通常の場合の監査というのは形式的な場合が多いからね。

担当官を買収すればいいと思ったんだろう。

ウィルからシェフィート商会へ話が流れると想像もしてないのだろうな」


なるほど。

俺のことを知らないのか。

まあ、そうだよな。


幽霊ゴーストのことは知っているかも知れないが、幽霊ゴーストが魔術師になったという話は長とその周辺の人間以外は知らない。


あの小娘がアルヌへの説明を聞いていたのだったら、孤児出身の使いやすそうな魔術師が娘の魔力を見いだしたということしか知らず、ついでに俺も取り込めたら娘が一人前の魔術師になるのを待たないでも済むと思ったのかもしれない。


「だけどさ、シェフィート商会が監査の担当になると立候補した瞬間に、娘さんの魔力を封印するって言ってくるんじゃない?

何かそれはそれで、その女の子が可哀そうな気がするけど」

シャルロがちょっと眉をひそめながら声をあげた。


「魔力を封じたくないならば、家族から独立して魔術師として働いていくのは可能かもしれないな。

親から勘当されても奨学金を貰えば大丈夫だし。

しかも、笑えることに『勘当』しようと親族の商会が監査を受けなければならない義務は変わらない」

アレクが肩を竦めた。


おいおい。

それってあの小娘が魔力の封印を拒否したら親に殺されかねないということか?


それはそれで後味悪いな。


次は28日に更新します。

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