254 星暦553年 青の月 30日 お祭り騒ぎ(7)
俺たちの後に演舞する、魔術師よりな魔術剣士二人が会場に入ってきた。
そういえば、ダレン先輩にも挨拶をしておかないとな。
「ありがとうございました。
全然歯が立ちませんでしたね。悔しいです」
「そりゃあねぇ。
こちらは毎日ガンガン鍛錬して、馬鹿みたいに体力を付けて技も磨いているプロだぜ?
幾ら動きが速いと言っても頭脳労働者の魔術師に負けてたら、それこそ上司から地獄の訓練を言いつかっちまうよ」
先輩が笑いながら答える。
やはりこの場合、負けて悔しいというのは身の丈に全然合っていない無茶な感想のようだな。
でも。
見栄重視で時間も限られた演舞なんだから、もう少し食らいつけるようにしたい。
「そうは言っても、もう少し長く息が続くよう、これからもそちらへ鍛錬に参加しに行っても良いですか?」
「おう、勿論だ。
軍に入ってくれたって大歓迎だぞ?」
いや、それは無いから。
「誰かに命令される立場というのは好きでは無いので。
気ままな外部者としてこれからもよろしくお願いします」
笑いながら手を振り、ダレン先輩が姿を消した。
◆◆◆◆
魔術剣士達の剣舞が終わったのでまた雲と氷菓子作りに手を貸すために戻ってきたのだが・・・。
「勝負だ!」
先程からあちこちでガキンチョに棒で殴りかかられてきて、困っている。
大人げなく反撃するわけにも行かず、かといって殴られるのも嫌だ。
取り敢えず氷で剣を創り出して襲撃してくる『将来の魔術剣士』達の『剣』をそらし、軽く頭にコツンと反撃するのだが、切りが無い。
「う~む、今回は負けを認めてやる。次には絶対勝つ!」
何かの絵本か劇の台詞なのか、妙にもったいぶった上から目線な台詞を吐いて目の前の少年が軽やかに走り去り、氷菓子の行列へ並びに行った。
「ここで会ったが100年目!
両親の恨みだ、俺の剣を受けてみよ!」
まただよ。
と言うか、後ろで笑っている男女、お前の親なんじゃないか?
恨みなんてこれっぽっちもなさそうな顔をしているぞ。
「は~は~は~!
私の前に立ったお前の両親が悪い!
お前もせめてドラゴンぐらい目をつむってでも倒せるようになってから来るのだな!」
思わず適当な台詞を返し、襲いかかってきた少年の『剣』を弾き飛ばし、落ちてきたそれを手に掴んで腰に差す。
いい加減、3歩ごとに襲われるのも止めて欲しいからな。
取り敢えず『剣』代わりになる棒が無くなったら襲撃も終わる・・・と思いたい。
少なくとも、ひっきりなしに少年達が襲撃してくるので『お兄ちゃんに氷菓子を取られらた~!』系の泣いている女の子の相手をしなくて良くなったのは助かるが。
とは言え、本当は氷菓子を作っているはずなんだけど、俺。
あまりにも邪魔が入る為、シャルロが笑いながら替わってくれたんだよね。
まあ、これだけ夢中になってくれるなら魔術師にも興味を持ってくれるかな?
襲ってきたうちの何人かは魔力があるようだったし。
明日から王都の神殿学校をあちこち回ることになっているのだが、そちらでも襲撃されるのかなぁ。
流石に日常生活で大人の魔術師に襲いかかってくることは無いと思いたいところだが・・・。
遅れてすいません。1日計算を間違えていました。
次は3日に更新します。