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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
252/1295

252 星暦553年 青の月 30日 お祭り騒ぎ(5)

一気にお祭り当日までジャンプです(笑)

「うわぁ~~ん、兄ちゃんが取った~~!!!」

シャルロ監修の氷菓子はとても人気なのだが・・・その行列に待ちきれず、他の子供から氷菓子を奪い取る子供が後を絶たず、祭りのメイン会場である『魔法広場』は混沌としてきていた。


通常、祭りでは出店や見世物が町の外に定められた区画で集まる。それでは人の集まりが悪い(プラス魔術師が集まるのが面倒)とのことで、今回はジェスラン氏がその政治的能力を発揮し、何と王都内にある軍の演習所を借りることに成功した。


お陰で、民の集まりは非常に良いのだが・・・。

なんと言っても開催者が祭りなどと今まで縁の無かった魔術師だ。


一応出店を出している商会や見世物の旅芸人等とも事前に打ち合わせをしていたのだが、子供の扱いに関してはあまりにも経験が足りなすぎた為、会場は混沌としていた。


まあ、出店のおっちゃんの話では祭りとはいつでもこんな感じらしいが。


「駄目だろ、妹のお菓子を奪いとっちゃ」

幸い、今回は奪い取る現場を目撃していたので幼女の兄らしき少年から氷菓子を奪い取って幼女に渡して解決したのだが、子供達はお互いに自分に都合の良い主張をするので現場を目撃していない限り、耳を傾けていてもどうしようも無くなる。


『どうしようもない』から奪われたと主張している方に氷菓子を出そうとしたアレクはアンディに間一発で止められたので、幸いにも泣くことで無制限にタダで氷菓子を貰おうとする子供はあまり居ないのだけが救いかも知れない。


「大体、こんなに並ばせるのが悪いんだ!

こんなに人が来るんだからもっと沢山人を準備するべきだ!」

奪還した幼女が慌てて果物とかき氷に甘いシロップがかかった氷菓子を食べているのを横目に見ながら、少年が俺に文句を言ってきた。


「まあねぇ。

ここまで人気が出るとは思ってなかったんだよねぇ」

小さくため息をつきながら周りを見回す。


空にはあちらこちらに子供やペットの雲が散らばっている。

客寄せ用に良いだろうと最初にシャルロが人間の他に犬や馬の雲を作って空に浮かべたら、ペットを連れてくる子供が大量に発生し、状況を更に混乱させることになった。


「あ、駄目よ!

誰か!捕まえて!!!」

そんなことを考えていたら、足元に猫が駆け抜け、そのを追いかける犬が突進してきた。


「うわぁ!」

俺に文句を言っていた少年が避けようとして犬に足を取られ、転んだ。


「おっと」

突然上に倒れ込まれてきて攻撃されたと誤解した犬が反撃する前に、犬の首輪を掴んでこちらに引き寄せる。


「はい、どうぞ。

ちゃんと鎖なり手綱なりをして手元にキープして下さいって入り口で注意されたでしょう?

気をつけて下さいね」

飼主に犬を渡しながら注意をしている間に、少年は姿を消していた。


諦めて氷菓子の行列に並ぶことにしたのかな?

取り敢えず、俺に文句を言ってさえこなければいい。


氷菓子やら雲像を朝から造りまくって、魔力が厳しくなってきたら会場の治安担当(というか泣いている子供対応係)として駆り出されたのだが、泣き叫ぶ子供なんぞと今まで縁が無かった俺にはこれは辛すぎる。


ちょっと暫く姿を消して休んでも、良いよな?


そうっと気配を消して逃げようとした俺の耳に、別の子供の泣き声が響き渡ってきた。

「おかあちゃ~ん!どこ~~~!!??」


はぁぁぁ。

次の祭りでは、こういうの開催や混乱と対応する人員を雇おう。

絶対だ!!


◆◆◆◆


>>>サイド シャルロ・オレファーニ


「シャルロ、もうそろそろ時間だからウィルを呼んで剣舞の会場へ行ってくれないか?」

朝から(時折つまみ食いしながら)氷菓子を作っていたシャルロへ、アンディから声が掛った。


魔法剣士による剣舞には魔術院からも人が参加している方が良いと言うことで、ウィルも参加することになった。


軍にしてみても、威力がありすぎて王都の中でのお祭りの見世物には使えない攻撃魔法の使い手はそれなりに揃っているのだが、肉体的能力と魔術的技能の両方を必要とする魔術剣士はそれ程沢山は居ないので丁度良かった。


見た目が派手な魔術の放出を楽にする魔剣を軍から借りたウィルは、ダレン先輩と色々練習していたので中々見応えのある剣舞を披露してくれるだろう。


願わくは、結界を張る当番のシャルロにあまり負担が掛らないように手加減してくれると良いのだが。


「あ、もう剣舞?

私も行く」

氷菓子のコーナーを離れるシャルロを見てアレクが近づいてきた。


「良いの?

会場治安(笑)当番だったんじゃ無いの?」


言い出しっぺとしてとことんこき使われているウィルは別として、今回協力することになった魔術師達は時間割でどこの当番か割り振られている。


祭りを楽しめるようにと空き時間もあるのだが、それなりにまだ若い魔術師達にも剣舞の時間は人気があり、アレクはくじ引きに負けたと思ったのだが。


「交渉力というのはこういうときに役立てる為にあるのさ」

にやりと笑いながらアレクが答えた。


う~ん、どんな交渉をしたんだろ?


次は28日に更新します。

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