025 星暦549年 黄の月 16日 オマケ
精霊とは自然の気から発したものと言われる。
それが本当かどうかは知らないが、都市にはあまりいないのは事実だ。
だから今までシャルロの過保護精霊以外、関わり・・・どころか見たこともあまり無かったのだが・・・・。
はっきり言って、分かんね~~!!!
すったもんだした夕食の後、皿洗いはクラスメート達に押し付けてテントに戻った。
食事を俺が作ったんだ、お前らは皿ぐらい洗え!
神殿の食器を借りたのでどうせ神官見習い達がちゃんと洗えるか見張っているだろう。
テントは2人で一つずつ。
俺はシャルロと一緒だった。
こいつは今度の遠足を楽しんでいるようだから夜更かししたりするのだろうか?
だとしたら迷惑だなぁ。俺は疲れているんだ。
まあ、どちらにせよ他の人間と一緒だったら熟睡は出来ないけど。
そんなことを思っていたら、疲れに捕らわれてうとうととしてしまったらしい。
シャルロがテントに入ってきた気配で目が覚めた。
・・・。
「何でお前の保護者以外にオマケが付いてきているんだ?」
蒼流の他にもう一体精霊が入って来ていた。
しっかりは見なかったので確信は持てないが、さっきの浴場でいじった精霊かな?
「凄い、やっぱり契約していなくてもしっかり精霊が視えているんだね、ウィル!」
「お前の蒼いのだって見えていただろうが」
シャルロが横に首を振る。
「蒼流は特に力が強いんだ。だからかなぁ・・・なんて思っていたんだけど、そうじゃなくって視えるなんて凄いね~」
「眼だけはいいんだよ。ところでそっちのは何しに来たんだ?
こいつの精霊に挨拶に来たんだったらテントの外でやってくれよ」
オマケの精霊の方に声をかける。
外に出るかと思っていたら、その精霊がきゅっと凝縮した感じに具現化した。
「やっぱ、ボクが視えるんだね!お前って面白い!名前はなに?」
うう~ん?
子供だったのか、この精霊。
赤子をあやすのと同じで、上に放り投げたのが気に入ったのか?
「あ~っと・・・・。ウィルだ。今日・明日しかこちらにいないが、まあよろしく」
「清早って言うんだ。お前、何でボクが視えるの?」
子供って言うのはどの種属でも好奇心が強いようだ。
「俺は極めつけに眼がいいんだ。お前だけじゃなくってそこら辺の風に漂ったり木の上で昼寝したりしている普通の精霊も大抵視えているぞ」
「ほう、風に漂う風精も視えるのか?」
突然、蒼流までもが具現化して声をかけてきた。
「視えないのもいるんだろうけど、ここに来る途中でも何体も視えたからそれなりに視えているんじゃないかと思う」
今までこいつと話したことは無かったのだが・・・。
精霊って敬語を使うべき相手なのか?!
シャルロのさっきの言い方では蒼流ってかなりランクが高いのだろう。
確かに視た感じでも普通にそこら辺を漂っているのより存在が深い感じがする。
・・・それを言ったらこの清早もそれなりな気がしないでもないが。
こっちはガキっぽいから別にいいと思うが、蒼流の方は分からん。
第一、精霊って階級とかクラスって気にする存在なのか?
四大元素と呼ばれる精霊に王がいるのは有名だが、その他に関しては授業でも特に話していなかった。
精霊王が精霊を総べているのか、総べているとして人間の王のように他の精霊が傅いているのかなんて人間は知らない。
つうか、『人間』は知っているのかもしれないがこの魔術学院の1年生は知らん!
シャルロみたいに精霊と近しい人間は知っているんだけど語ろうとしないし。
言葉づかいを気にするのか、こいつらは??
人間のことに基本的に無関心なようだからどうせ話すことになんてならないと思ってシャルロに聞かなかったのは失敗だったかもしれない・・・。
蒼流は俺の言葉使いも密かなパニックも気にした様子もなかったが。
「清早はお前のことが気に入ったそうだ。シャルロの友であるお前を滅したくはないからな。卑怯な真似をするなよ」
は?
俺が理解したか気にしないのか、蒼流は俺の反応を待つことなく姿を消していた。
まあ、別に姿を消してもシャルロの傍を離れないから反応が気になるなら見えるんだろうけど。
「一体何の話??」
シャルロに聞くが、彼も知らないらしく目を丸くしていた。
「神殿で遊んでいるのも楽しかったけど、ちょっと外を見て回ろうと思って。ウィルって面白そうだからお前と一緒に行く!」
おい。
俺に選択肢はないのか?
まあ、周りの人間に視えない精霊がまとわりついていても、悪戯をしない限りいいけど。
「はい。これ持っておいてね」
俺の手に小さな翠色の石を乗せて清早が消えた。
なんだ、これ?
・・・精霊版の迷子防止の紐みたいなもんか?
「・・・それって加護の石・・・だね」
シャルロがぼそりとつぶやいた。
・・・加護ってこんなに一方的に与えられるものなの??