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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
242/1295

242 星暦553年 紺の月 27日 幽霊屋敷?(5)

ウィルが考えることがあって相談に行ったので学院長の視点に移ります。

>>>サイド アイシャルヌ・ハートネット


ノックの音と主に、久しぶりに見る顔が現れた。

「学院長、ちょっとご相談したいことが有るのですが、お時間をいただけますか?」


魔術学院に盗賊シーフとして現れたこの少し変わり種な魔術師は、卒業後に魔道具の開発すると友人2人と一緒に独立開業したが、開発だけでなく他にも色々楽しんでいるらしい。

先日も魔道具を積んだ沈没船を見つけたと一緒に開業したアレク・シェフィートが魔術学院の教師に連絡して引き込んでいたし。


「久しぶりだな。

ちょうどお茶を飲もうと思っていたところだ、座りなさい」


ウィルが部屋の中に入ってきた。

「学院長はメルタル師をご存知でしたか?

先日、彼の屋敷に幽霊が出るから何とかしてくれと魔術院経由で依頼を受けたんですよ」


ほう。

師が去年暮れに亡くなったという話は聞いていたが、幽霊騒動は知らなかったな。

「メルタル師は勿論知っていた。お前が世話になった奨学金にもかなりの金額を寄付してくれた方だぞ」


お茶を受け取りながらウィルが座る。

「へぇ、そうなんですか。

ちなみに、魔力がある子供というのはどうやって見つけているのですか?

俺みたいに魔術院に忍び込んで学院長に見つかる子供なんて例外中の例外でしょうし」


「お前みたいなケースはお前以外いないよ。

流石にいくら奨学金を出すとは言っても、魔力を認識できない子供までは面倒見れないからな。

全国の神殿のクラスに年に一度程度声をかけている。

もしも魔力を感じることが出来るならば魔術師になれる可能性が高い。魔術学院に来れば奨学金で教育を受けることが出来るから、魔力が感じられるものは一度顔を出すことを勧める、とな。

地方の支局に顔を出して実際に魔力があった子供には、王都までの移動にかかる費用も援助している。

ついでにちゃんと教育を受けずに魔力を暴走させるとどのくらい自分と周りにとって危険かも話している。後、魔術師になれば平均としてどのくらい収入があるかもな。

それでかなり集まるぞ」


ウィルが首を傾げた。

「自分もちょくちょく神殿のクラスには顔を出していましたが、そんな話は聞いていませんよ?」


「年に一度程度だからな。

たまたま偶然、お前さんが参加しているときに話が無かったのではないか?

魔術院があまり知られていない地方では教師役の人間に休んでいた子供にも話が行くように気をつけてくれと頼むが、王都ではそれなりに周知されているからな。

休んでいた子供に態々その話を聞いたか念押しをしなかったのだろうな」


周知したと思っていたが、孤児だとそういった話は伝わっていないのか。

盗賊シーフ・ギルドでも話を聞いてもよさそうなものだが。

そこまで横の繋がりがないのか?

それとも有望な人間を手放したくなくって意図的に教えなかったのか。


お茶を飲みながらウィルが眉をひそめた。

「俺みたいに魔力がはっきりと見えて、それを仕事に利用していた人間はまだしも、そうでなければ自分が認識しているものが魔力だと分かっていない子供も多いのでは?

裏社会に属する羽目になった子供以外だったら魔力と関係するような働き方はしていないだろうし」


「まあな。

ただ、魔力を暴走させるほどの魔力がある子供ならば大抵自分が何か他の人間と違うものを感知できていると分かっていることが多い。

流石に魔道具を使ったり魔術師を派遣したりして国中の子供をチェックするのには費用も手間もかかりすぎるから、取り敢えず暴走の危険性が高い子供を見つけるだけでも良しとしているというところだ」

実際に魔術師が増やすことが出来れば、そのことから増える収益を使って魔力を持つ子供を見つけ、教育することが出来るだろうが、そのための予算がない。

魔術師が増えれば予算が増えるが、予算を増やすには魔術師を増やす必要がある。


初期投資さえすれば・・・という話だが、どの国にも初期投資さえすれば更に利益が出るという話は数多くある。

それを実現できるだけの資金がないから動きが取れない。

魔術学院の奨学金とて、自分やメルタル師や彼に育てられた魔術師等の有志からの寄付で起動して、やっと近年になって順調に回るようになってきたところだ。

「まあ、奨学金によって魔術師の総数が徐々に増えてきているからな。お前さんが儂の年になる頃にはもっと組織的に才能のある子供を探すだけの資金が出来るかもしれないな」


ウィルは飲み終わったティーカップをサイドテーブルに戻して、背筋を伸ばした。

「メルタル師の屋敷の幽霊騒動は、面白い魔道具と魔術の結果でした。

他にも、映像を記録する魔道具も色々開発していたようです。

ですが調べてみたところ、どれも魔術院に特許申請されていないのですよ。

師の相続人は魔術師ではないようですし、どうせあれだけの屋敷を相続するのですから魔術回路の特許にそれ程執着するとは思えないんですよね。

というか、魔術回路の登録なんてことそのものを知らない可能性も高いですし。

だから魔術回路の特許登録をメルタル師の名前で行い、その収益で魔力のある子供を見つけるために使う基金を設置するというのはどうでしょうかね?」


なるほど。

自分が助けられたからこそ、他にも手を広げたいか。

「で?その相続人を説得するのか?それとも素知らぬ顔をして勝手にやるつもりなのか?」


ウィルが肩をすくめた。

「それは、要相談ですね。

それもあって今日来たんです」



ウィル君は、素知らぬふりして勝手に魔術回路を登録しちゃってもばれないよな~、でもそういうことしちゃ駄目かな~と迷って相談に来たのでした。

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