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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後2年目
241/1298

241 星暦553年 紺の月 27日 幽霊屋敷?(4)

一人でメルタル師の屋敷を歩き回っていると、ふと宙に発散されていた自分の余剰魔力が吸収されていることに気が付いた。


生物というのはどれもある程度の魔力があり、生きていれば余剰分が周りに少しずつ発散されていく。


魔術師の場合、大本の魔力が多いもののコントロールもしっかりしているので発散される分は少ない事が多いが、今回は幽霊を探すと言うことで挑発の意味も込めて少し多めに発散させていたら・・・周りの家具に吸収されている。


いや、家具では無く、家具の固定化の術に紛れ込んでいた術に吸収されているな。


ふむ。

これは昨日は起きていなかった現象だから、屋敷の中に一人だけ人間がいる場合に吸収という条件付けになっているのだろうか。


更に発散する魔力を多めにして待っていたら、突然目の前に若い女性の姿が現れて、俺に声を掛けてきた。

「後でミルクを買ってきてくれない?」


はぁ?


何でミルクが必要なんだ??


更に魔力を発散しながら待ってみたが今度はそれが吸収される様子が無いので、取り敢えずリビングに行って居心地の良さげな安楽椅子に座りながら待つことにした。


「天気が良かったら明日はピクニックに行かない?」

と今度は誘われた。


ううむ。

幽霊とは違う感じだ。

これは吸収した魔力を使って映像を再生しているのか?


だが、この家具の固定化の術に紛れ込んでいる術では映像を記録までは出来ないぞ?


取り敢えず、家中を歩き回って他にどんな映像があるか確認してみるか。


「あまり根を詰めすぎては駄目よ」

「明日の天気はどうなるのかしら?」

「庭のお花に水をやってくれる?」

「ちゃんと野菜も食べなきゃ駄目でしょ。食事は栄養のバランスも考えなきゃ」


20代後半と思われる女性は、様々な言葉を掛けては姿を消す。

どうも、起動は吸収して貯めた余剰魔力を使うが、映像と音声を流すのには追加的に魔力を吸収する必要があるのか、女性の姿が出た瞬間にこちらの発散する魔力を全て抑えたら最初の声が出たか否かぐらいで映像が消えた。


成る程ね。

これが、チラチラ視界の端で何かが動いたり、声が聞こえたような『気がする』という現象の原因か。


メルタル師の甥も不動産屋も魔術師ではないだろうから、時間経過によって蓄積した魔力で起動はするものの、きっちりと映像が見られるほどの魔力が無いから幽霊モドキな現象になったのだろう。


まあ、何が起きているのか解明しようと注意を払っていなかったら俺も変わったタイプの幽霊にでも出会ったのかと思ったかも知れないが。


◆◆◆◆


「・・・書斎かな?」

更にあちこちで魔力を発散して映像を起動しながらその魔力の流れを追ってきたら、大きな仕事用らしき木造の机と壁一面に本が置いてある部屋にたどり着いた。


魔力を発散しながら待っていると、また女性の姿が現れた。

「明日はロールキャベツにしましょうか。貴方のお気に入りだものね」


映像が流れている間、魔力が書斎机の引き出しとリンクしているのが視える。


机の裏に回って引き出しを調べてみたら、それなりに強固な鍵と魔術による封鎖が施されていたが、ちゃちゃっとそれらを解除し、中を開く。


「すげえな」

拳2つ分もありそうな魔石が嵌まった記録用魔道具があった。


この魔石だけで今の俺たちの家ぐらいなら買えるんじゃないか?

特にアクセスを禁じる術は施されていないようだったのでその記録用魔道具に触れて中の映像を確認してみると、次から次へと先程から姿を現している女性の映像が出てきた。


妻が夫に話しかけるような日常的な会話の断片。

奥さんが亡くなって、寂しくなってこんな仕組みを作ったんだろうなぁ。

だが、死んでしまってから映像を作るわけには行かない。

四六時中奥さんを記録するような趣味の持ち主だったのだろうか。


ちょっと愛情としては重いかも知れない・・・。


そんなことを考えながら更に下の引き出しやその他書斎の収納場所を開けていったら、様々な記録用魔道具が出てきた。

大きな固定式の物から、持ち運べなくは無いかもしれないぐらいのサイズのものや、もっと小さく簡単に持ち運べそうな物まで。


そうか、メルタル師は記録用魔道具を開発していたのかな?

で、それら試作品を奥さんを撮影することで試していたから様々な映像があり、その記録を編集してこちらの屋敷の術にリンクした大型記録用魔道具に写したのだろう。


ううむ。

家の中で、ふとした瞬間に妻の声が聞こえるのってある意味嬉しいかも知れないが・・・却ってそれに満足しちゃって再婚しようとか考えなくなるんじゃ無いかなぁ。


まあ、だからこそ魔力のある子供の教育に熱意を傾けてくれて、俺の今へ繋がった可能性が高いから俺から文句を言うことでは無いが、本当にこれがメルタル師にとって最高の幸せだったのか、疑問を感じないでも無い。


もっとも、彼にとっての最高の幸せは奥さんが死なないことだっただろうから、これは次善策なのかも知れないけど。


微妙な気分だが・・・取り敢えず、幽霊騒動の原因は解明だな。


次の更新は25日です。

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