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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院1年目
24/1289

024 星暦549年 黄の月 16日 神殿到着

誤字・脱字・突っ込みどころ等々、何でも気楽にご一報下さい。

・・・お坊ちゃま達に変に現実的な技能を教えようとしても、一緒にいる一般人にとって迷惑なんだけど。



『遠足』にて問答無用に遠くまで足で歩かされた俺たちは夕方にマカナタ神殿に着いた。

まあ、まだ夕方と言うか午後と言うか微妙な時間帯だが。


俺としては、やっと虫やら小動物やらがガサガサ動き回る森の中の移動を止められるのが嬉しくてしょうがない。


「まず、神殿に入って神殿長どのに挨拶をした後、水をお借りして体を洗うぞ。

それが終わったらテントの組み立てだ!」

ローラン教師が生徒たちに伝えた。


10人も一遍に体を洗える程大きな水場があるのだろうか・・・。

あまり時間を食って、テントの組み立てがうまくいかなくなってそのまま野宿なんてことになったら・・・後でどれほど問題になろうと、俺は神殿に忍び込ませてもらうぞ!


神殿長はある意味予想通りの人物だった。

年寄り。

頭髪は真っ白。

森の神に仕える人間らしく、肥満ではなかったのは良かった。


微妙に意外だったのがこの人物が女性だったこと。

メシャルナ・トーラスは世の中は面白いことで溢れているとでも言いたげな楽しげな表情をした老婆(老女?)だった。


神殿と言うのは性別を問わずに神に仕える場であり、名目上は神に愛されたものが神殿長となる。

大抵『神に愛された者』とは『周りの長老を買収するだけの金もしくは政治力を持った人間』であることが多いのだが、どうやら森の神マカナは自分の神殿の運営に口を出すタイプの神らしい。


ま、金やら世俗のことに捕らわれまくる神殿長なんて神からしたらウザいだけだろう。

そういうのが神殿長をやっている神殿なんて、実は祀っている神からは見捨てられているのかも。


それはともかく。

メシャルナ神殿長は俺たちをにこやかに歓迎したあと、浴場へ追いやった。

「この神殿は神を感じる為に森を歩くことを求める。だが、一度たどり着いたら汗と臭いは流してもらうことにしているの。

夕飯は自炊だと思うけど、失敗してどうしても食べるものが無かったらいらっしゃい。スープぐらいはきっと出せるでしょう」


げ。

食事も自炊だったっけ。

もう疲れたんだけど・・・。


とりあえず、浴場へ。

左側に石の床が広がり、真中に排水溝らしき窪み、そして右側に泉。

??

どうもあの泉は体を入って洗うのに向いた形ではないようだが・・・。


「その泉から魔術で自分まで水を引いて体を洗いなさい。

術が発動しやすいのもちゃんと実感するよう、注意を払うんだぞ」


鬼!

疲れているが・・・取り敢えず他の奴らがどんな事をするのかちょっと様子を見てみるか。


最初に動いたのはおっとりしていながらもマイペース(かつお坊ちゃん)なシャルロだった。

殆ど呪文を唱えず、身振りだけでシャワーを自分に注いでいた。

おい。

幾らすぐ傍に泉が有るからって何もない所から水滴を呼び出してシャワーにするなんて、反則技だぞ。

そう言えば、こいつの過保護な精霊(蒼流だっけ?)は名前からして水の精霊っぽいからな。

ずるいぞ~。


シャルロが終わるのを待たずに次に洗い場に出たのは、アレクだった。

いい加減、汗と汚れにうんざりしていたのだろう。


何の工夫も無く、単に水を泉から瓶へ移してそこから自分を洗い流しただけだった。

魔術で水を瓶まで動かしていたが・・・。特に発動が普段よりも楽そうという訳でもなかった。


その後もクラスメートたちが体を洗っていたが、近くに水があると言うこと以外の違いがあるようにはあまり視えなかった。


うう~む。

授業で『仮説』ではなく『事実』として『精霊の加護の厚いところでは術の効果が高まる。』と教わっているのだから確実に術の発現を高められる方法があるはずなのだが・・・。


取り合えず泉を覗き込んだところ、何人かの精霊が楽し気に遊んでいた。

・・・この精霊たちが面白いと思う様な術にすれば発動し易くなるのかな?


それとも彼らに挨拶でもしてお願いをするのか。


ま、失敗しても構わない。

おれは自然の中で精霊と仲良くするような魔術師になるつもりは無いんだ。


報復はされたくなかったのでにっこりと目があった(と思われる)精霊に向かって笑いかけてから、術で思いっきりそいつごとその周りの水をぶち上げる。

「ラゼ・・・ホルド!」

術で宙に上げられたまま止まった水と一緒に中に浮いた精霊がびっくりしたようにこちらを見てから、楽しげに宙に浮いた水であそびはじめた。

「ドリプ」


上げた水を垂らすようにして体を洗う。

確かに術の発現がちょっと楽だった・・・かな?

思っていたよりも沢山水が上がったし。


だが、気のせいと言われたら納得する程度の違いしかなかったけどねぇ。

この程度で態々こんな遠くまで来る価値があったのか、疑問だ・・・。



テントの組み立ては恐れていたほど難しくは無かった。

ま、考えてみたら魔術学院の生徒の殆どが貴族のご子息たちなんだから、あまり難しいテントなんぞ押し付けてそのまま外に野宿するなんてことになっても困るよな。


自炊の方は・・・。

俺が殆ど全員の分を作る羽目になった。

根菜類を皮も剥かずに術で火を通して煮込み料理にしようなんて、何を考えているんだ、あいつら!

眠い・・・。

週末にはたっぷり昼寝をするぞ~~!

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