230 星暦553年 紫の月 30日 船探し(13)
設定を見たら10日、20日、30日が休養日となっていたので、沈没船の発見そのものを1日前にずらして王都に来る休養日を30日に変えました。
「あ、排水が終わったかな?」
甲板口からにょろにょろ出ていた水のロープが途切れたのを見たシャルロが言った。
「おお!ではちょっと見てくるから君たちは好きにしていたまえ!」
おいおい。
さっさと船に向かってしまったアレクの兄さんを見て俺たちはお互いに苦笑した。
「僕も中を見たかったんだけど。
無駄話なんかしてないで、こっちまで持ってくる間に中を調べれば良かった・・・」
シャルロががっくりしながらつぶやいた。
「ははは。相変わらずちょっとノンビリなようだな、シャルロ」
倉庫の後方にあった事務所スペースみたいなところの扉が開き、声がしてきた。
「アンディ?!
どうしたの、何でこんなところにいるんだ?」
魔術学院で3年の時に寮長をやっていたお祭り男、アンディが現れたのを見て思わず驚きの声が出た。
「ふっふっふ。
今回の魔道具の発見に関して、ニルキーニ氏と共同作業するために魔術院から派遣されたのさ!」
そういえば、アンディは魔術学院を卒業した後、魔術院に就職したんだっけ。
寮長というそれなりに責任のある役割を果たしていたので就職先には困らなかったらしいが、社交的で色々な人とやり取りするのが好きなこいつは魔術院を選んだと聞いた気がする。
「へえ、凄いじゃ無いか、まだ新人なのに抜擢されたのか?」
アレクが尋ねる。
「まあ、お前らと面識があるし、ニルキーニ氏が授業で忙しいときに雑用を言いつけやすいから丁度良いって選ばれたというのが本当のところだけど。
出てきた魔道具が大発見だったりしたらもっと上の人間が派遣されると思うぜ」
なるほど。
昔の沈没船といっても遺跡ほど古くは無いから、復元できれば貴重かも知れないがそれ程未知の物では無い。つまり、魔術院のお偉いさんの興味を引くほどの物では無いのか。
・・・それでも何か想定外に凄い物が出てきた時に一枚噛めるよう、一応新人を出してきたんだな。アンディと俺たちが魔術学院で同期だったというのも都合が良いだろうし。
「取り敢えず、あの二人とこれからどうするのか実務的な話を固めなくちゃならないから、ちょっと連れ出してくるか」
アレクがため息をついて船を見つめた。
「と言うか、俺たちも中を見よう。
ニルキーニ氏に後れを取ったけど、俺だって興味あるんだぜ」
「そうだね、僕だって見たいし!」
アンディの提案にシャルロがのり、さっと船に向かって行った。
船を固定している台へ登り、そこから甲板口へと行きながらシャルロはアンディに色々最近のことを聞いていた。
「ま、まだ昼食にもなっていないんだし、ノンビリ私たちも見ようか。
私たちだって結局それ程じっくりとは見てないからな。
下のフロアを覗いてみないか?」
アレクがため息をつきながら俺の方に振り返って提案した。
「そうだな。
中身はともかく、どの位箱があるか確認しておけば大体の全体量が把握できるだろうし」
前回、アルタルト号を見つけたときは大きな貨物室と一等客室は確認してから王都に持ち込んできたから、アレクの兄さんに引き渡した段階で船の中身は大体把握していた。
今回は今日を逃したら次の休養日は10日後になってしまうので、取り敢えずこちらへ運んでくることを優先した。つまり中身の確認をする暇が無かったのだ。
幾らアレクの兄貴が多分信頼できる人間であろうと、中身を確認せずに任せるのはあまりにもうっかり過ぎる。
・・・時間的制約があるんだから、引き揚げ屋協会で記載されていたカラフォラ号の歴史のこととか、あの時代の魔道具の話なんかに熱中せずに、こちらへ運んでいる間に貨物室をもっと調べておくべきだったな。
ちょっと興奮しすぎていたか。
まあ、まだ半日以上あるんだから。中身をさっと確認してこれからの手順をニルキーニ氏とアレクの兄貴と話し合う時間は十分にあるだろう。
次は23日に更新の予定です。