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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後1年目
195/1291

195 星暦552年 桃の月 30日 年末(2)

「飲んでる~~?」

シャルロが笑いながら抱きついてきた。


おいおい、抱きつくならシャンペンのグラスを置いてからにしてくれよ。

「飲んでるよ。お前さんは実家のパーティにも行くんじゃなかったの?あまり飲まない方がいいんじゃないかい?」


「いいのいいの、今晩ここに泊めてもらって実家には明日いくから。フェリスちゃんの睡眠の邪魔にならないように、今年は年末パーティやっていないんだ」

オレファーニ侯爵家の王都屋敷のサイズがあったら別にパーティをしていても赤子が起きるとは思えないけどね。さすが親バカ・姪バカ一族。


「どうしたのお二人ともこんな端っこで~。踊りましょうよ!」

どっかの娘達(アレクの従姉妹かも?)が笑いながら俺達のところへ割り込んできてシャルロと俺の腕を引っ張った。

まぁいつでも話せるシャルロと態々年末パーティで話すよりも若い美女と踊る方がいいよな。

あまり踊るのは得意じゃないんだけどね。学院にいる間に一応教わったけど。

ま、皆酔っ払っているからパートナーの足を踏みさえしなければいいだろ。


「私はラティファ・シェフィート。さっきちらっと紹介されたと思うけど、アレクの従姉妹よ。アレクの友達よね、あなた。何をやっているの?」

くるりと優雅に回りながら娘が尋ねてきた。


「俺はウィル・ダントール、しがない魔術師さ。君は何をやっているの?」


「私?王都南西部のシェフィート店舗のマネージャー。頑張っているのよぉ。

あなたも魔術師なのかぁ。じゃあ、アレクの学校の友達なのね」

学校ねぇ。

まあ、学院と呼ぼうと学校と呼ぼうとあまり変わりは無いんだけどさ。

しっかし、まだ若いのに複数店を任されているとはね。

有能なんだろうが、やはり血縁は重要なんだな。

とは言え、全国レベルの販売網を持つシェフィート商会で中枢の地位を貰うにはそれなりに能力を証明しなければいけないらしいから、現在テスト中というところなのかな?

・・・・・・となると、試験に落第した血縁って結局どうなるんだろ?

適当な店舗を任されて脇に追いやられるのかね。


「だけど、アレクが内輪のパーティに呼ぶほど親しいなんて、あなたもバリバリに賢いの?」

おいおい。

これってどう答えればいいんだ?

普通良家の子女ってそういった答えるのに困るような質問を理由もなしにしないと思っていたんだがな。やはり酔っ払っていると本音が出るのかね。


「別にアレクは頭が良くなきゃ付き合わないような人間じゃないだろ?」


「人付き合いは良いんだけどねぇ。あの子は無駄に聡いから本当に親しい友達ってあまりいなかったのよ。やっぱり頭の回転が遅すぎる相手と付き合いづらいんじゃない?」


あっけらかんとラティファが答えた。

『あの子』ですか。若い美人だが、どうやら俺達よりは少し年上なのかな?

まあ、確かにアレクは誰よりも頭がいいよな。

普通のそこら辺の人間じゃあ言動も全て想像がついて面白くないのかも。

その点シャルロは驚きの連続だし、下町育ちの俺は違う常識に基づいて行動するし。

「あ~俺って少し魔術師として変り種だから。頭がバリバリに良いわけじゃあないが、新鮮な驚きがあるんじゃないか?」


「ふ~ん。新鮮さねぇ。面白いコンセプトかも」

いやいや、会話とかの話だよ?コンセプトだなんて何かビジネスちっくなことにあまり突拍子も無いことを考えない方がいいと思うが。


ちょうどそこで音楽が終わった。

「アレクって子供の頃どんな感じだったの?」

ウエイターからシャンペンを受け取ってラティファに差し出しながら尋ねる。

折角だ。聞いちまおう。


「う~ん・・・・・・本家の息子達は可愛くなかったわねぇ。賢すぎってやつ?ホルザックはまだしも、セビウスとアレクは子供の頃はぐさっと本当のことを言っちゃう子供達だったわ~。ある意味、アレクのほうが悪気なしに真面目に言っているから手に負えないところがあったかも」


「セビウス氏を『可愛くない』って・・・・・・もしかして、長男と同世代?」

女性に年を聞くのはタブーだとは知っているが、どうしても気になる!


ラティファが爆笑した。

「なに言っているの!私はアレクよりも10は上よ~。ホルザックの子守を押し付けられたこともあるのよ」


ゴホッ。

ゲホゲホゲホ!!!

思わず飲もうとしていたシャンペンに咽た。

「・・・・・・同じ年ぐらいかと思ってた」


「あら~嬉しいこと言ってくれるじゃない!!」

バシバシ!

照れ隠し(?)に叩くラティファの手が痛い。

面白い女性かと思ったが、これじゃあ不倫か、結婚していなくても若いツバメだ。

しかし・・・・・・女って化けモンだな。


◆◆◆


泥酔しそうになるとさりげなくレモネードを押し付けていく有能なウエイターのお陰で皆幸せにほろ酔いな状態でパーティは続いた。


その後も色々アレクの子供の頃の話をあちらこちらで聞いてみたが、どうやらあいつはとても早熟な餓鬼だったようだ。

オブラートに包みながらも『鋭すぎて痛い指摘が多かった』というコメントが多数あった。


学院に入る頃には角が取れて丸くなっていたんだなぁ。

折角だから年末にあわせようと思ったのにノンビリしていたら年が明けてしまった・・・。


明けましておめでとうございます!


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