163 星暦552年 萌葱の月 1日 楽しい手伝い(2)
昨日一日で10日ほどの留守の為の諸々の手続きを行い、今朝は朝食の直後に飛び立った。
アルフォンスは一緒に空を飛んでいる。
ラフェーンとアスカは後からノンビリ地上を移動してくるとのこと。
蒼流もどうやってか一緒に移動していた。
精霊ってどういう原理で移動しているんだろう?
地上だったら地下水の中を移動しているのかと漠然と考えていたが、空を一緒に移動しているのを見るところ、どうやら別に自分のエレメントが無くても移動に問題はないようだ。
清早も空を飛んでいる俺たちが面白いのか、時々姿を現すし。
しっかし。
長時間飛んで、幾つか問題点が発覚した。
ずっと一緒に直ぐそばで飛ぶのは難しい。だが、大声を出して聞こえる範囲で無いと意思の疎通が図れないのだ。
最初は1機しかなかったから意思疎通というのはあまり考えていなかったし、一人1機出来た後は忙しくて長時間一緒に飛ぶ暇なんて無かった。
勿論意思疎通が出来ないと言うことは分かっていたが、それがここまで不便だとは思っていなかった。
俺とシャルロはアルフォンスや清早の助けで言葉を伝えられるが、アレクはそう言う訳にもいかない。
別に行き先は分かっているんだし、シャルロの後について行けばいいと事前には話していたのだが・・・。
トイレが必要なのだよ!
空を飛んでいると意外と喉が渇くと言うのは試乗でそれなりに経験していたので水筒を持ってきていたのだが、何刻も移動しているとトイレに行きたくなると言うことは考えていなかった。
馬鹿・・・。
以前マカナタ神殿へ行ったときだって定期的に馬から降りて物陰に行っていたと言うのに。
お陰で俺たちは大声であられも無いことを叫ぶか、精霊にトイレ休みの伝言を頼む羽目になってしまった。
今回の休暇が終わったら、絶対に携帯式の音声通信魔具を作るぞ!
◆◆◆
「まあ、空を飛ぶ道具を作ったってアシャルが言っていたけど、それで王都から来られるなんて、凄いわね。私も今度フェリスに会いに行く時に使ってみようかしら?」
我々を迎えてくれたレディ・トレンティスが俺たちの空滑機を見て感嘆の声を上げた。
若いねぇ。
空を飛びたいですか。
「今度の感謝祭のプレゼントに作りますね、おばあさま。
でも、王都まで飛ぶのはお土産を持っていけないからちょっと不便かも?転移門のところまでの移動に使ったら大分時間が短縮できるとは思いますけど」
シャルロが答える。
ふむ。
土産を持っていけないと言うのは大きいのかもな、こいつの家族だと。
「誰かに馬車で先に行かせて後から飛んでもいいけど・・・確かに最初は家の周りを楽しむのに使った方がいいかもしれないわね。感謝祭を楽しみにしているわ」
にこやかに笑いながらレディ・トレンティスは俺たちを中へ招き、お茶とケーキを出してくれた。
遺跡へは明日から行くことになっている。
研究隊のメンバー達はレディ・トレンティスの家の離れに泊っているそうなのだが、彼らは遺跡に夢中で大抵夜中遅くまで帰ってこないらしい。
半日以上かけての移動で疲れていたので、俺たちはゆっくりお茶を楽しんで軽く夕食を食べたら今日は早く就寝することにした。
空滑機は魔石に蓄積しておいた魔力を使っているのだから移動に疲れるとは思っていなかったのだが、意外と長時間寝転がって周りを見て回るというのも疲れる作業らしい。
これは想定外だった。
ま、それなりに楽しめたし、いいんだけどさ。
さて。
明日は遺跡だ。
何をやらせてもらえるのかな?
少し短いですが、区切りがいいので。
明日の更新は多分出来ると思いますが、かなり遅くなると思います。