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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院1年目
16/1255

016 星暦549年 萌葱の月 5日 深夜~早朝

痕跡と言うものは後から振り返れば簡単に見分けがつくが、手さぐりに探している時は何百もあるような他の痕跡と混ざり合っていて本当に手に負えない。


◆◆◆



下町の夜は早いか遅いか極端に分かれる。職人や普通の店に勤める層が住む住宅街では、1日働いて疲れ果てた住民は翌日へ備える為に日が落ちると共に眠りに就く。


夜の蝶や酒場の人々が働き、住む地域は朝まで人通りが絶えることがない。

その代わり日が上がってからは静かなものだが。



長が案内にとつけてくれた青と一緒に、まず住民が眠りに就いた地域へと足を運んだ。


ちなみに、盗賊シーフギルドの長には何人かの腹心がいる。彼らは個人ではなく長の目や手足であることを示す為に個人名では無く適当な色で呼ばれる。


解放奴隷なのか、長の家族なのか・・・。

前身が何なのかは知らないが、これらの色たちは長に忠実で無私に行動する部下である。


一体どうやってそんな手下を集めるんだろ?

ノウハウを売ったら物凄く儲かりそう。


ま、それはともかく。


最初に見に行った現場の死体は住宅地の角に無造作に捨てられていたらしい。

下町としては広いめな道に面しているから、馬車で死体を運んで来て捨てたのだろう。


「ちょっとあそこまで下がってくれる?」

青の生命エネルギーが邪魔にならないように離れてもらい、瞼を閉じて心眼サイトを凝らす。

個人のエネルギーと言うのは人それぞれに違う。

個性や健康状態などに左右される。また、殺された場合などは生前のオーラを凌駕するようなショックや怒り、憎しみといった色が付くことも多い。


・・・普通の殺人の跡は見たことはあるが禁呪は未経験だからイマイチ何を探せばいいのか分からないのだが。


とりあえず、何かの場合には青が一瞬は守ってくれるだろうと思うことにして全ての外部情報を遮断して死体が見つかったと言う場所とその周りだけに集中する。


日中はそれなりに人通りのある場所だ。

しかも死体が見つかってからもう5日もたっている。

まるで落書きの上に落書きが重ねられて、何が書いてあるのか分からなくなってしまった壁のようだ。


普通の痕跡は無視して、異常なモノが無いか探す。


・・・あれは?

単に昔の殺人の痕跡なのかもしれないが、極々微かに嫌な感じの痕跡があった。

強いて言うなら、血の赤が絶望に褪せて更に邪悪に染まったような・・・。


気のせいかもしれないぐらいに薄っすらとした痕跡。

何とかしてその後を追おうと馬車が通ったであろう道に眼を凝らしたがどうしても見えない。


直近の現場にもっと跡が残っているといいのだが。


「次の場所へ行こう」

青に声をかけて次の現場へ急いだ。


次の現場は最初に死体が遺棄された場所だと言われた。

日数がたっている分痕跡が褪せていたが、人通りが少ない場所だったお陰で薄っすらと先ほどの嫌な痕跡と似たものが残っていた。


こちらは細い路地を少し入ったところだった。

余程の怪力の主でもない限り、道に停めた馬車から死体が見つかった場所まで死体を投げ捨てるのは不可能だろう。

となれば誰か関係者が死体を持って歩いたはず。


そこを歩いた人間の痕跡のうちどれが事件の関係者なのかは知るすべもなかったが、とりあえず同じ時期ぐらいと思われる痕跡の色は全部心に刻み込む。



3番目の現場は井戸脇で、住民が寝静まれば静かな場所だが日中の人通りが多すぎて何も見つけられなかった。


「残り2つの現場は夜の町にある。明日の朝に周ろう」

青が声をかけてきた。


「分かった。学院の方にもちょっと2、3日どうしても出かけなければいけないと連絡をしておく必要があるし。8の鐘にカナパラ神殿の裏で会うということでどうだろう?」


頷いて何も言わずに青が消えた。

あいつも気配消すのがうまいよなぁ・・・。泥棒か暗殺者として成功しそうだけど、どちらか(もしくは両方)を長の為にやっているのだろうか?



青と別れた後に、学院に戻る。

一応学院長にでも言っておくか。

無断欠席で退学になってしまっては困る。


あの学院長ならこのような事件に役に立つようなアドバイスをくれる可能性もあるし・・・最悪の場合はそれなりに社会的地位にある人間がこの禁呪のことを知っておく方がいい。

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