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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後1年目
157/1295

157 星暦552年 青の月 16日 飛ぶ?(6)

「気分転換に街へ行ったはずなのに、結局魔術院で術回路を調べてきたのかい?」

腕一杯に術回路を写した紙を持って帰ってきた俺を見てアレクが呆れたように言った。


「質量軽減だ!骨組みや乗っている人間の質量を軽減させる術回路を使えば、骨組みを無理に軽くする必要が無いだろ?スタルノがバスタードソードタイプの魔剣に使っている術回路を使えば良いんじゃないかって言ってくれて、気がついたんだ」


興奮して術回路図を振り回していた俺から、シャルロが紙を奪い取った。

「そうだね!僕たちの方でも、あまりちゃんと浮力が得られる術回路が見つからなくって悩んでいたんだけど、質量を軽減できれば浮力が小さくてもそれなりの滞空時間を得られそうだ!」


「ふむ。本体の重さは質量軽減で殆どゼロに出来るかもしれないな。問題は、後から乗る人間の方だな」

アレクも何枚かの術回路を手にとって考え始める。


「鉱山とかの貨車で使う術回路には、その上数ハド分の空間の質量を軽減するという機能があるらしい。居心地の方はちょっと試してみなければ分からないが、人間が乗る台を作ってそれにこのタイプの術回路をつければ良いんじゃないか?」

写している時に気がついた術回路の効果のことを思い出しながらアレクに答えた。

しかも、鉱山も魔剣と同じで魔術院の歴史と同じぐらい・・・と言うか、それ以上に古い。そこそこの数の特許切れした古い術回路があったから、そのうちの幾つかは十分に実用に耐えうる効果があるだろう。


「いいね、それ。

元々、空滑機グライダーに乗る人間の体重を支える何かが必要だったんだし。手で捕まって体を支えなきゃいけないなんてことになったら、疲れてケレナが落ちちゃったりしたら大変だと思っていたんだ」

シャルロの台詞に、思わずアレクと俺は目を合わせて苦笑してしまった。

別にケレナじゃなくても、使用者が落ちて大怪我をしてしまうのでは困る。

その点を考えていなかった俺とアレクが馬鹿だった。

・・・けど、気がついた時点で口に出しておいてくれよ~。

俺たちだって、握力だけで自分の体重を長時間支えられるような筋力は無いんだぞ。



◆◆◆



とりあえず、俺の足から肩辺りぐらいまでの長さの鉄板を作り、それに片っぱしから術回路をつけて試してみることにした。

一応体重の違いから効果にも変化が出るかを確認する為に、3人で交互に乗って体重計に記される体重と本来の体重の差を記録していく。ついでにアレクの提案で(『肥満の人は不可と言えるが、普通に大柄な男性でも乗れるぐらいにしないと』)バケツ一杯分の砂と一緒に乗って更に効果も確認。


特許切れした術回路の中で最も効果が高かった術回路2つを選び、今度は小さめの術回路を幾つか繋いで使う方法にして、一番良かった物を選んだ。


「じゃあ、やっと試作品作りだ!!」

実験の確認が終わり、術回路を決めた瞬間にシャルロが嬉しげに叫んだ。


「まずは、夕食です。これ以上冷めてしまっては食べられたものではありませんよ」

工房の入口からパディン夫人が声をかけた。


少し前から俺たちが何度も体重を測っているのを見ていたが、夕食が出来たのを言いに来たのか。

実験中は声をかけても『後で行くから』で忘れられることが多いのを把握して、最近はこんな感じに一区切りつくのを待って声をかけるのが上手くなった。


ま、冷たくなっても俺は食べられるけどさ。

でも、流石に色々あった一日で大分疲れた。いい加減、エネルギー補給しないと。


「これから試作品を作り始めても、疲れているから馬鹿な間違えを犯すのがせいぜいだ。

明日の朝、頭がさえている時に改めて始めよう」

アレクがシャルロを宥めた。


「デザートのカスタードケーキも固まってしまっては台無しですし」

パディン夫人がさりげなく口を挟む。


「そうだね、試作品は明日の方がいいよね」

あっさりシャルロが説得された。


若いとはいえ、あまり甘い物ばかり食べていると太るぞ~。


今みたいに魔力を使いまくっている状況ならどれだけ食べても太らないだろうが、いつの日か魔術を日常的に使わなくなった時に今の食生活を続けていたらヤバいだろうな。


・・・まあ、シャルロだったら食生活を改めるよりは、魔術を使い続けるか。

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