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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後1年目
154/1293

154 星暦552年 青の月 5日 飛ぶ?(3)

「・・・何をやってるの?」

鍛冶場に入ってきたシャルロが首をかしげて尋ねた。


梁の間に乗せた金属の棒からぶら下がっていた俺は、何度か体を振ってから、手を離した。

「強度のテスト。最低でも、俺が勢いよくぶら下がって体を振り回しても曲がらない位の強度が必要だろ?中を空洞にして骨組みを作ろうと思うんだけど、その棒の形を丸にするか、三角にするか、四角にするか試しているところ」


「5角形とか6角形とか7角形は試さないの?」


おい。

自分が造るんじゃないからって言いたい放題言うんじゃないの。


「一応量産を最終的な目標としていることを考えると、あまり作るのが難しすぎる形は不味いだろうが」


「ま~ね~。で、どれの形が一番良さそう?」


「丸だな」

真ん中から曲がってしまった四角と三角の2本の棒を指しながら答えた。


「へぇぇ。

形が違うだけでこんなに強度が違うんだ?」


「まあ、丸い方が鍛えている時に魔力で強度を上げやすかったって言うのもあるかもしれないが。

ただ、魔力で強度を上げなければ駄目だとすると、かなり単価が上がってしまうからな。出来れば素材の方も研究して魔力なしでも十分な強度を持たせたいところだ」


魔力で強度を上げないのだったら三角や四角でも良いのかもしれないが、一般的な手法としても丸の方が作りやすいし、下手に角があると膜として貼る生地が破け易くなるだろう。魔術で無理やり生地と骨組みを接合させるよりは、単に骨組みを中に入れて生地を丈夫に縫う方が経済的だ。そうなると、中に入れる骨組みに角が無い方が、生地の寿命が延びる。


「で、何か用があったのか?それとも気分転換?」


にかっとシャルロが笑った。

「お茶の時間だよ!」


◆◆◆



「で、そっちの方の進展はどう?」

パディン夫人からケーキを受け取りながら、アレクに尋ねる。


すぐさま色々な形状に関する報告が来るかと思ったら、苦笑が返ってきた。

「中々試作品を作るのに手間取ってしまってね。思ったよりも針金に生地をつけるのが難しくって。私もシャルロもそれ程器用ではないのを忘れていた」


成程。

最初に丸と四角と三角とを落とす為に試した時は形が単純だったが、色々な形を試そうと思ったら話はどんどん複雑になってくるのだろう。


「だったらさ、とりあえず銅片を薄く延ばして形を作っちゃえば?魔力で変形させれば布と同じぐらいの薄さに出来るだろ?形も好きなように変えられるし」


学院の2年目の最初のランプ作りの時に苦労した極細銅線作りが思い出される。

あれも手でやろうとして本当に苦労したんだよなぁ・・・。

魔力を込めて変形させたらあっという間に出来て、苦労した時間が本当に切なくなったもんだ。


「・・・確かに。考えてみたら、本体そのものも布でなく、それで出来ないか?」


布ほども薄い金属というのはあまりなじみが無いからなぁ。強度はどうなんだろ?

「とりあえず、形を研究する為の試作品を作るのにはそれでやって、後で同じ重量で布と極薄金属板とどっちが強いか確認しよう。船の帆とかが布を使っていることを考えると、何らかの問題点があるんじゃないかと思うけど」


「重さと強度の関係が金属よりも布の方がいいのかもしれないな。

ま、これは後で確認してみよう。それでウィルの方はどうなんだい?」


ううむ。

ケーキを食べたいんだけど、会話をしていると難しいな。

シャルロ、夢中でケーキを食べてないでお前も会話に参加しろ!俺が食べる時間が無いじゃないか。


「とりあえず、空洞の筒を丸と四角と三角の形で試してみたら、丸が一番強かったな。

ちょっとまだ重すぎるから、強度を上げて軽くするためにこれから研究だ」

3人がともにケーキを食べ始めた為、一瞬沈黙が流れた。


「そう言えばさ、思ったんだけど鳥の翼の形って参考にならないかな?」

3つほどケーキを食べて満足したのか、シャルロが提案する。


良いアイディアじゃないか。

とりあえず、ケーキを食べ終わっていなかった俺は黙って頷いて見せた。


アレクの方ががっついていなかったのか、ケーキを食べる手を止める。

「良いアイディアだな。誰か、近辺で鷹を持っている知り合いはいないか?鷹狩りは商人よりも貴族の趣味だからな。私の知り合いを当たるよりもシャルロの方がいそうだ」


「ケレナが持っているはずだよ。ついでだから、連れて来てもらおうか?アルフォンスがいればある程度話し合いも出来るから、飛ぶことに関して何か参考になることを教えてもらえるかもしれないし」


「考えてみたら、妖精王って飛ぶんだろ?彼に直接聞くんじゃ駄目なのか?絶対に鷹よりも語彙が豊富だぜ」


「妖精や幻獣は魔力を補助に使っているからね。最終的には参考になるかもしれないが、効率的な構造を考える上ではあまり役に立たないよ」

アレクが首を横に振った。


そっか。

確かに、ドラゴンのように重い存在が飛べるのは魔力のお陰だよな。上に乗ったら馬車を潰すぐらいの重量があるドラゴンが飛ぼうと思ったら、体長サイズの翼じゃあ魔力の補助なしでは無理だろう。

鳥系の幻獣もがっちりした体つきのが多いし。火の鳥はスリムだけどありゃあ半精霊のような存在だし。


「とりあえず、ケレナに鷹を連れて来るように伝えておくね」

にこやかにシャルロが言った。


嬉しそうだねぇ。


色々と骨組みの構造について何人もの方から教えていただき、本当にありがとうございました。


考えてみたらうっかり感想へ返事を書いている際に『ありがとうございました』という言葉を書き忘れた人が何人もいたんですが、すいません。感想の返事って書き直しが出来ないんですよねぇ・・・。


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