1409 星暦559年 赤の月 18日 消火用魔具(11)
「そう言えばさ、職人街とか下町とかでも火事を探知できる安い道具が出来たら大量に町内会とかギルドが買おうと考えるかも?
あそこら辺は火事になったら広範囲に被害が及ぶ可能性があるから、個人よりも集団に売り込む形が正解なんじゃないかな」
盗賊ギルドの長から聞いた話を朝食後のお茶の時に伝えておく。
「ふうん?
薄利多売な形になるからかなり簡単な作りにする必要があるな。
……なんだったら下町のに関しては国に少し補助金を出さないか話を持って行ってみてもいいかもだな」
アレクが少し考えてからにやりと笑って言った。
「そりゃあ、下町で大火事になったら他の地域にまで火が燃え広がる可能性があるからあそこで火事を早く見つける道具は王都全体にとって為になるかもだけど、下町だけに補助金を出すなんてことになったら職人街の住民たちが文句を言わない?」
シャルロが首を傾げながら尋ねる。
「個人への補助ではなく顔役経由で地区への出費になると思うが……そうだとしても、国が金を出していると言わずに顔役の権威増強に使われたらそれはそれで困るか。
まあ、そこら辺は提案された国側が予算を出すか決める前にちゃんと考えるだろう」
アレクが肩を竦めながら応じる。
「一部屋に皆で住んでいて家の壁も薄いような下町は良いが、複数部屋があるけど使用人がいなくて隙間風もないような職人街の家なんかだと、警報が鳴っていても住民が留守だったり気付かない可能性もあるから警報自体を窓の外の道側の外壁にでもつけて近所の人間に知らせる形にしないとダメかもだな」
家の中を回路を伸ばす羽目になるからちょっと設置作業が面倒になりそうだな。
「貴族の屋敷にあるような使用人を呼びだす呼び鈴をもっと煩い感じにしたらいいんじゃない?
あの錫合金が熱で溶けたら抑えておいた呼び鈴の紐が解放されてリンリンというかビービー鳴るようにしたら比較的単純な感じでもいいと思うけど」
シャルロが提案する。
「確かに?
まあ、あの錫合金が引っ張られる力をずっと掛けられていても時間劣化で勝手に切れないことを確認しないとある日突然設置した町中の火事警報のベルがあちこちからひっきりなしに鳴り始めたりしたら大騒ぎで大問題になるな」
割引価格で売り出してシェフィート商会の好感度を上げる筈の試みが、悪評をばら撒く結果になったら俺も恨まれちまう。
「そこら辺の確認は道具が出来上がったらシェフィート商会の方でしっかりチェックして、設置後は10年間ぐらいは毎年確認していく感じで経過観測するしかないだろうな」
アレクが肩を竦めながら言った。
確かに、『〇年たったら壊れ始める』なんて言うのが確実に分かるまで待ってから売り出していたら、他の商会に先取りされちまう。
単純な構造で薄利多売なんだから、最初の売り出しに負けたらあまり美味しくないだろう。
「まあ、錫合金を使った火事探知の方はこれから無駄を削って最終形に作り上げていくとして。
あとは聞いた話だと豪邸とか屋敷の場合、絨毯や床板よりもカーテンが火事を広める一番の原因らしいぜ」
忘れる前にこちらも伝えておく。
「そう考えると、ひらひらしたカバーのついたソファとかも燃えやすそうだが。
確かにカーテンが一番屋敷中に火を広げる原因になりそうだな」
アレクが頷く。
「そうしたら、火事探知の魔具と燃焼防止の冷却の魔具はドアと窓の周りに設置するのを推奨するのが良いかな?
部屋全体の床の周りに設置するよりは数を節約できるかも」
シャルロが提案した。
「まあ、チェルナ子爵の所だったら美術品の周りにも設置した方が良いだろうけどな。
と言うか、美術品用の部屋だったら空気清浄の機能も付けた方が良いだろう。こっちは完璧じゃあないけどある程度は煙による汚れを防げるかもだがつけるかって聞いて追加料金で足す形にした方がいいだろうが」
元々、火事探知の警報が鳴ったら美術品が煙に巻かれる前に消火するのが狙いなのだ。
だから多少煙が出てきた程度だったら空気清浄の魔具でそれなりに効果がある筈だが、ガンガンに部屋で家具や絨毯が燃え始めたら効果も限られるからなぁ。
「そうだな。
取り敢えず、空気清浄の魔術回路を加えた試作品も作って、明日から色々と町外れのダルム商会の積み直し用の土地で実験しまくって効果を確認しよう」
アレクが頷きながら言った。
そんじゃあ、色々と試作品を作りまくるか。
木箱も大量に提供して貰えるらしいから、取り敢えず3つずつ作って実験も繰り返し行って効果を確認しよう。
絨毯も無い方が良さげな気がするけど貴族の屋敷じゃ必須かなぁ〜




