1405 星暦559年 赤の月 15日 消火用魔具(7)
取り敢えず錫合金については一番適切な物に関して後でスタルノに聞きに行くにした。形としてどういうものが一番確実で簡単に作れるかを何通りか試している間に、シャルロたちの試作品もそれぞれ出来上がった。
「あっちの小屋で適当にあまり乾いていない枝でも燃やそうか」
アレクが立ち上がりながら提案する。
「だね~」
シャルロも楽し気に立ち上がりながら合意した。
「もう一つ小屋を作ってあれと繋げて実際に火をつけた時にどんなふうに熱と煙が入って来るか実験したらいいと思うんだが、ここの庭でやるのって不味いかな?」
俺も付いて行きながら尋ねた。
小屋の中で煙が出る程度だったら、それこそ自家製の燻製でも作っているんだろうと村の住民も気にしないだろう。だが、流石に小屋が燃えてたらそれなりにびっくりするかもしれないと思うだよなぁ。
しかも考えてみたら、あの小屋は俺が立って入れるぐらいの高さがあるのだ。
ごうごうと燃えてたら、かなり炎が高くまで上がって他の家から目に入るだろう。
「もっと小さな小屋を作って実験するか、川辺にでも持っていくか、じゃなきゃそれこそ休息日に魔術学院のグランドでも借りてやるかかなぁ」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。
考えてみたら、蒼流と清早がいるのだ。
どれだけ激しく小屋が燃えようが、変に飛び火して火事になる危険は絶対にないんだよなぁ。
だがそれを村の住人に説明して回るのは面倒そうだ。
それだったら魔術学院でやらせてもらう方が、楽そうだな。
「魔術学院の方が話が簡単で済みそうだが、あそこまで小屋を持っていくのが面倒じゃないか?」
荷馬車でも借りて載せていかなきゃだからな。
「と言うか、大工を雇って小さな2部屋の小屋を向こうで作って貰って燃やすのが一番じゃないか?
ここで作って持っていく必要性もないだろう」
アレクが指摘する。
確かに?
と言うか、何度も小屋を燃やすのも高くつきすぎるし面倒過ぎるからな。色々と試作品を出来る範囲で試した後に、最後に商品化する直前の最終テスト的な感じでやるか。
その段階で問題が見つかったらかなり面倒だが。
「と言うさ。
商業ギルドとかで、火事の探知や消火の魔具を販売していないのかな?
若しくは王宮の研究所でそういうのを作っているとかテストしているとか。
なんか俺たちが一々小屋を作らせてテストするのって面倒な気がするんだが、どこかにそういうのを請け負っている研究所みたいのは無いのか?」
下町の消火に関してはそんな組織は確実になかったが、豪商が住む区画とか、貴族街だったら何かあってもよさそうだが。
「火事に関しては、火が出たら魔術師を呼ぶのが今までの常識だったからな。
魔具で探知して消火と言うのはあまりないんじゃないかな?
もしかしたら王宮内なら火の気を探知する結界とかがあるかもだし、それの信頼性を試すための設備も王宮研究所のどこかにあっても不思議はないが」
アレクが答える。
そうなのか。
まあ、防火用の術って一応魔術学院でも習ったもんな。
固定化の術よりも報酬が高いから頼むのは貴族とか豪商しかいないらしいから、俺は授業で習ったのしかやったことはないが。
防火用の結界をしっかり張っておけば、火の回りが遅いから出火を確認してから通信具で魔術院に連絡して誰かを寄越させても間に合うのかな?
「そう考えると、火事の探知用の魔具とか消火用の魔具ってあまり必要が無いのか?」
まあ、美術品がある部屋で火が出て絵が台無しになったら困るという事実は変わらないだろうが。
美術品がある部屋で火が出るなんて、事故と言うよりは恣意的な原因の可能性が高そうだ。そうなると、いくら火の回りを遅くする防火用の結界があろうと根性があれば着火出来るので、魔具があって損はないか。
「考えてみたらさ。
交易船で使う大きな木箱を幾つかもらって、扉っぽい開口部分を付けて小屋代わりにして実験すればいいんじゃないか?
あれだったらぼろくてそろそろ新しいのに変えようと考えているのを安く複数入手できるだろう」
実際に、港付近の倉庫には捨てる代わりに放置してあるっぽい古い木箱が複数積まれているのを見かけた。
「確かにそうだね。
まあ、取り敢えずまずはうちで初期段階の試作品をテストしよう」
シャルロが頷きながら、実験小屋の扉を開けた。
そうだな。
それなりに完成してからもっと大々的な実験に取り掛かろう。
一辺が1メートル以上ある様な木箱だったら小さな物置と似た様なもんですよね。
小屋がわりに燃やしてもよさそう。




