1404 星暦559年 赤の月 15日 消火用魔具(6)
「じゃあ、その錫の合金で熱探知の魔具の試作品をウィルが作ってよ。
僕たちの方は侵入防止の魔具で煙を探知できるか試す試作品を作るから」
俺が工房の方から水道修理とかに使うのに良い錫合金の素材を持ってきたら、シャルロが提案してきた。
「だな。
まずは冷やすより先に火事を確実に探知するのが重要だろう」
アレクが頷く。
「おう、良いぞ」
敢えて溶ける事を想定した物作りなんて初めてだが、警報を鳴らす魔術回路に空振りになるルートみたいのを錫合金で作って、それが解けて無くなったら警報が鳴る形で良いかな?
若しくはバネみたいのを錫合金で留めて、溶けてバネが解放されたら警報の魔術回路が完了する形でも良いかもだが。これは長期間経ったらバネが固まっちゃって動かないなんて事になりかねないからなぁ。
いや、バネではなく自重で勝手に落ちるのを錫合金で留めておく形にすれば良いか?
錫合金が溶けて下に流れ込んだ時に魔術回路がどうなるのか、確認した方が良いだろうが。
と言う事で、勝手に落ちる形をまず最初に作ってみて、錫合金を溶かしたらどうなるかを確認しようと試作品を作ってみた。
蝋燭に火を灯して、少し離した下から炙ってみる。
「ブ〜〜〜〜!」
問題なく、警報が鳴った。
と言うか、考えてみたら発火しそうな状態の時にちゃんと鳴るかが問題だよな。
暖炉に火をつけ、ちょっと離した位置にくしゃくしゃに丸めた紙を置き、その後ろに錫合金を元に戻した試作品を置いてみた。
「ああ、紙が燃える前に警報が鳴るか確認してるのか」
こちらがやっている事を見ていたアレクが言った。
「取り敢えず、紙で試す。だが火事ってもっと熱くて一気に火が広まる事もあるから、オーブンをガンガン熱くして、木材や布が発火する前に鳴るかの実験もした方がより現実的かもだな」
最終的には二部屋続いた形の小屋の片部屋にこれを設置して、もう一つの部屋に火をつけてどうなるかを観察したい。
小屋の壁を漆喰で塗り固めた上に壁紙っぽい紙やカーテンを固定して、火をつけたら良いかも。ただ村の中でやったら周囲が驚くかも。
どこか人通りのない川辺にでも小屋を持って行こうかな。
色々と実験方法が思い浮かぶ。
燃やすって面白いよな〜。
と言うことで暫く待つ。
なんかこう、紙が熱を遮っているのか、紙が焦げ始めて白っぽい煙が出てきた時点でやっと警報が鳴り始めた。
「これって遅いか?」
振り返って見ていたアレクとシャルロに尋ねる。
警報の魔術回路だけだからこっちの試作品を作る方が圧倒的に早いんだよな。しかも、何かが燃え始める時ってついじっと注視したくなるし。
アレクとシャルロは侵入防止と警報の魔術回路が必要だから、まだまだ時間が掛かるだろう。
「炎は上の方は熱いっていうからな。
石にでも乗せて暖炉の斜め上の方になる場所に板の箱に入れて同じ事をやってみて、どうなるか確認してみてくれ」
アレクが注文した。
「了解」
確かに、火事って横から広がる時は床じゃなくて天井から伝わるらしいよな。
下からジリジリ熱した際の効果はさっきの蝋燭で炙ったのと大して違わないだろうから、確かに横からの火の広がりを確認した方が良いだろう。
丁度良い大きの石(と言うか岩だよな)が見つからなかったので、金属の箱を台所から借りてきて、その上に煉瓦を敷いて木の箱を横向きに置き、中に試作品を置いてみた。
一応、箱の上に切れ目を入れて空気が流れ込みやすくして扉っぽいイメージにしておく。
中々反応しないので、ずいっと更に暖炉の近くへ押す。
さっきの紙を燃やした所と同じぐらいの距離だったんだけどな。
紙は発火が早いようだ。
まあ、暖炉に火をつける時って、魔術師じゃなければ先に紙の屑で着火する事が多いもんな。紙は燃えやすさが抜群なのだろう。
そう考えると、美術品よりも事務作業をやっている執務室での火事の方が紙がきっちり仕舞われていないと火事の広がりが早そうだ。
「ブ〜〜〜!」
そんなことを考えながら魔術回路の起動を邪魔する空振りラインを消す形の試作品を作り始めていたら、警報が鳴り始めた。
急いで暖炉を確認したら、木の箱からも多少は煙が出ている。が、火バサミで掴んで退けたらそのまま煙が出るのも止まった。
「一応、この形でも熱探知の警報器にはなるみたいだな。
もう一個のを試して大して違いがなかったら、もっと低い温度で溶ける合金が無いか少し試行錯誤してみるよ」
と言うか、まずスタルノに話を聞きにいく方が早いかな?
昔は焚き火をするのが楽しかった……
今は規制されてて殆ど出来ないらしいですね〜




