1401 星暦559年 赤の月 13日 消火用魔具(3)
「あとは、火事の探知かぁ。
煙と熱が出てくるよな。それに反応出来たら良いんだが。
熱はまだしも、煙ってどうやって分かるんだ?」
火事を防ぐ方法は冷やすので良いとして、まずは火事そのものに気付く仕組みが無いと、四六時中冷やす魔術回路を起動させていたら魔力の消費量が馬鹿でかくなる。
「熱は結界の外周で熱探知の仕組みを設置するしかないだろうね。
煙に関しては……取り敢えず、扉の下から入って来ると想定してそこら辺に何らかの探知機が必要かな」
アレクが提案した。
「煙って上から来ることの方が多いと思うよ~?
あと、もしかしたら下の部屋がごうごうと燃えたら、扉や壁沿いではなく下の部屋の天井と言うか守っている部屋の床から先に燃え出すかも?」
シャルロが指摘した。
そういえば、火事の時なんかは床の近くを這って進むと煙に巻かれにくいって聞いたことがある。
そう考えると、煙が下ではなく上から入って来る可能性は高そうだ。
「確かに床も危険かもだな。
部屋の外周と床全部を熱探知の範囲に含めたらどのくらい魔力を消費するかを確認してみよう。
どうしても大きすぎるようだったら外周だけでもいいかもだし。
どこか、火事の際の炎の移動経路を研究している学会でもないかな……?」
アレクが黒板に書いたメモを書き直しながら呟いた。
「まあ、床を熱探知の範囲にするかどうかは後回しで良いとして、どうやって煙を探知する形にする?」
そんな魔具があるとはあまり聞いたことが無いが。
「煙が多いと小屋の中とかが見え難くなるよね。
こう、常に細い光をドア枠からドアの上に照らしていて、それの光量が下がったら警報が鳴るような仕組みにするとか?」
シャルロが提案する。
光、ねぇ。
「魔術回路で生み出した光だったら魔力が籠っているから、それを受け取る量が減ったら魔術回路が反応するような形にするのは可能……か?」
魔術回路なり魔力なりで生み出した光の魔力の量なんて余程光量を大きくしない限り微々たるもんだから、それの変動を感知できるような魔術回路を作れるのかは知らないが。
「ドアがきっちりしまっていないと機能しない探知機能になるが、まあ美術品がある部屋や重要な書類が置いてある部屋だったら常に扉は閉まっているだろう、多分。
扉が開いていれば火事の騒ぎにも早く気付く筈だし」
アレクもちょっと微妙そうな顔をしつつも頷いた。
「問題は、そこまで繊細な魔力感知が出来る魔術回路があるかだね~」
少なくとも、現時点で俺たちが使っている魔術回路はそこまで繊細じゃあないと思う。
一応実験してみて確認しなくちゃだが。
そう言えば。
「考えてみたら、侵入禁止の結界って防御結界じゃなくて探知型のだったら何かが結界に触れたら反応するだろう?
あれって煙でも反応するのかな?」
通常の侵入禁止の結界が煙に反応するとは思わないが、あれは確かどこまで小さなものに反応するかを魔術回路の中で設定していた筈。
滅茶苦茶その反応感度をあげたら、煙にも反応するかも?
「繊細な魔力感知と、侵入禁止結界の魔術回路の特許情報を探してみるか。
後はついでに冷却用の魔術回路も急速冷却が出来るタイプを見かけたらそれもサンプルを購入してみてもいいな」
アレクが頷きながら黒板に書き足した。
「火事探知の魔具が出来たら、消火機能なしでそっちだけで売り出すのもありかも?
ただ、絶対に扉を閉めなきゃダメって限界があると問題かもだけど」
シャルロがちょっと首を傾げながら提案した。
「まあ、確かに部屋全部に対して消火出来る魔具を設置するよりも、火が見えている場所を狙って冷却して消火する形にした方が使う魔力もずっと少なくて済むな。
とは言え、留守の間に火事になった場合に美術品が燃え尽きるのは防げなくなるが」
アレクが応じる。
「魔具を買える美術品があるような金持ちだったら、使用人が常に屋敷にいるだろ。
その使用人たちが美術品のある部屋の消火をしなかったとしたら、それは使用人が悪いんであって俺たちの知ったこっちゃないな」
火事の警報が鳴った時に慌てて外に逃げるんじゃあ美術品は守られない。
とは言え、火事になったのに燃え盛っている方向へ突進して消火に努めろと命じて誰かが焼け死んだらそれはそれで問題だが。
そう考えると、勝手に消火する機能があった方が良いが、屋敷全部にその機能を付けるのは厳しいし、大きな屋敷の中で美術品がある部屋だけ消火してもあまり意味がない可能性が高いからなぁ。
ちょっと微妙だ。
火災警報器って逃げるの重視ですよね。
消火しに行って煙にまかれて意識を失ったりしたらヤバいって事で、消火はそれ程推奨していない気が?




